第13話 オッサンたち、パーティー名を決める
『
ケンジが提案したパーティー名だ。
その名には二度目の人生を楽しく生きようという意味が籠められてらしい。
「TOとTWO、二度目の人生を楽しく生きようって意味と、仲間とか共同体って意味の
どうよ! なかなかカッコ良いだろ?」
「ダサすぎて言葉も出えへんわ……」
「色々かけてる割には地味だしね」
「そもそも二度目の人生って言うならトゥーやなくてセカンドやないんか?」
「ケンジ、英語の成績悪かったから……」
「そういや
「反対語は
「え。アホすぎん?」
「う、うるせーな! 英語は苦手なんだよ! 二度目の人生を異世界で過ごすことになった喜びが籠もった、良いパーティー名だろうが!」
「果たしてわざわざ宣言する必要はあったんやろか?」
「パーティー名に付ける必要は特にないよね」
「しかも聞きました奥さん? このパーティー名って冒険者登録のときにフィーっちに記入させた正式なパーティー名らしいですわ」
「奴隷という立場で断ることのできないフィーちゃんに書かせたのも外道だけど、仲間への相談も無しに決めてるって最低のクズですわね、奥さん」
「パーティー名を変更するのには時間と手間が掛かるらしいですわよ奥さん」
「なんて余計なことをしてくれちゃったんでしょうね、このクズ野郎さん。いやですわぁ」
「あーもう! 悪かった! 悪かったって! みんな喜んでくれるって、そのときは思ってたんだよ!」
「好意があったとしてもやったらアカンことはやったらアカンねん。それをやるってのは脳味噌が老化して善し悪しの判断基準が緩んでる証拠やで」
「おっさんって、つい余計なことしがちだよねー。僕も自戒しないとなぁ」
「ううっ……散々な言われ様だ」
「仲間に相談せずに勝手なことをしたんやから当たり前やん」
「ごもっともです。これからはちゃんと相談します」
「なら許したる」
「お互いにいい歳なんだから、おっさん的行動には気をつけていこうね」
「はい……」
二人の説教に項垂れるケンジ。
その横からフィーが励ましの言葉をかけた。
「でも私はすっごく良いパーティー名だなって思いますよ! 二度目の人生が過ごせるなんて幸せなことですから!」
「ありがとうな、フィー……!」
「そういやそろそろフィーっちにオレらのことを詳しく話さんとアカンな」
「その前に仮拠点を作っちゃいたいね」
「なら街で物資を買い込んでさっさと森に戻ろうぜ」
「必要そうな物資はリストアップしとるから手分けして買い出ししよか。買ったもんはパーティー共有のインベントリに入れといてや」
「分かった。んじゃ俺はフィーと二人で食材を調達しに行く」
「オレはホーセイと生活物資の買い出しやら情報収集しとくわ」
「何かあったらパーティーチャットで情報共有しようね」
「分かった。んじゃ二時間後ぐらいに合流しようぜ」
「それでエエよ。ほなまたあとで」
「フィーちゃん、絶対にケンジから離れないように。何かあったらケンジを
「に、逃げませんよぅ! でも心配してくださってありがとうございます。ホーセイ様、リュー様もお気を付けて行ってきてくださいね」
「ありがとう」
「いくでホーセイ!」
「うん」
買い出しのために商店街に向かったリューたちを見送り、ケンジたちは市場が建ち並ぶ中央広場へ足を向けた。
広場の大きな噴水の周りには青果物や香辛料、調味料を並べた露店が所狭しと並んでいる。
「へぇ……街の大きさの割には色んな露店があるんだな」
「たくさんありますよね。私、こんな光景を初めて見ました……!」
フィーは露店に並べられた商品をキラキラと目を輝かせて眺めていた。
「あまり時間も掛けられないからさっさと買い物するぞ。俺から離れるなよ」
「はい!」
二人は露店に並ぶ商店を見て回った。
タマネギ、にんじん、じゃがいも――青果物は現実世界とほとんど同じため、料理が趣味のケンジは迷うことなく青果を爆買いしていく。
それなりの量を調達できたあとは香辛料や調味料の店先を覗く。
塩や酢などの調味料の他にもオリーブオイルやラード、それにバターがあった。
香辛料は更に多彩で、生姜やニンニクなどの一般的なものの他にもナツメグやシナモンなどが店頭に並んでいる。
少し高価ではあるが砂糖や蜂蜜、それに黒胡椒なども売っており、ケンジは懐と相談しながら調味料を買い集めた。
最後は肉類だ。
店先に並んだ肉を眺め、良さそうなものを塊で購入していった。
「うっし、これで一通りのものは調達できたかな」
「すごくたくさん買いましたね」
「おう。四人が一ヶ月暮らせるぐらいには買ったぞ。それなりの出費にはなったけどフィーに美味い飯を食わせたくて張り切っちまった」
「わ、私に、ですかっ!?」
「冒険者になったんだし、フィーはもっとしっかり食って体力を付けないといけないだろ?」
「そうですね……あの、ご主人様の作って下さる料理、楽しみです!」
「おうおう。楽しみにしとけ! 美味いもの、たくさん食べさせてやるからな!」
「はい!」
食材を買い終えた頃、ケンジの視界に半透明のメッセージウィンドウが浮かび上がった。
「おっ。チャットが飛んできた」
「ちゃっと、ってなんですか?」
「リューたちからの連絡だよ」
「連絡、ですか。えっと……」
ケンジの答えにフィーは首を傾げながらキョロキョロと周囲を見渡す。
「リュー様たち、いらっしゃいませんよ?」
「そろそろ来るってさ。ああ、言ってる傍から見えた」
「あ、本当ですね。お帰りなさいませ、リュー様! ホーセイ様!」
「ただいま。……んー、お帰りって言って貰えるのは嬉しいもんやなぁ」
「今までずーっと一人暮らしのアパートに帰ってたもんね僕ら」
「それそれ。誰かに出迎えの挨拶してもらえるとなんかほっこりするわ」
「分かるなー」
「まったりするのは後にしろって。それより買い出しの成果は?」
「ま、それなりにってところかな」
「質は良くないけど鉄のインゴットに【加工】する用の安物の鉄剣を仕入れたり、
他にも使えそうな木材やら布やらの資材はそれなりに集められたと思うわ。
あとは生活してみて足りんところを補充していく感じやな」
「でもしばらくは森の中で暮らせると思うよ」
「うっし。なら何の問題もないな! だったら行こうぜ!」
「おう、新天地にレッツゴーや!」
「ゴ、ゴー! です!」
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