第53話 入れてみたい
《有間愁斗―視点》
寝支度を終えた俺達は部屋の明かりを消してベットに横になった。俺のベットも先週まで一緒に寝ていた紫陽花のベット同様シングルサイズで、やはり二人並んで寝ると結構狭い。
しかしこの状況……。俺のベットに自分の彼女が寝ている。今まで誰とも付き合ったことがなかったからこんな日が来るとは夢にも思わなかった。ちょっと感動するな。
「抱っこ」
「うん」
紫陽花は小さな背中を俺に向けた。
後ろから抱っこと腕枕されてるのが彼女のお気に入りなのだ。
背後から抱き着くと彼女の小さな体はすっぽり俺の体に包まれた。
俺はサラサラの黒髪に鼻を当てて息をする。甘い香りが鼻孔を抜けて安心すると同時に性欲を刺激する。それから服の上から胸に手を被せ優しく揉む。Tシャツ越しでもボタンの位置がはっきりわかる。
「乳首立ってる……」
「……エッチ、生理近いからちょっと痛いかもです」
「ごめん」
今日はカッチカチだし胸もいつもより張っている。女性の体は良くわからないから痛いなら触らない方がいいだろう。
胸から手を離すと紫陽花は離れた俺の手を捕まえて胸に戻す。
「優しくなら……大丈夫」
「うん……」
俺は優しく触りながら。
「明日は何時に出るの?」
明日、紫陽花はこの前買った指輪を取りに行く。因みにバイトは休みだ。
「お昼に……んっ……出ます」
カチカチのを優しく転がしていると、彼女の体は時折ビクリと反応する。
「痛くない?」
「んん、……大丈夫です。あ、そうだ……ちょっと待ってください」
紫陽花の声色が通常モードに変わり俺は手を止めた。彼女はくるっと反転して俺と対面する。
「明日の夕飯、作ってもいいですか?」
「作ってくれるの?」
「うん、煮物とかほうれん草とか簡単な物ですけど、あっ、里芋は時期じゃないから肉じゃがにしますか……食べられますか?」
「俺、好き嫌い無いし、食に拘りないから何でも食べれるよ」
「じゃあ作りますね。ふふ」
部屋は暗いけど、うちのカーテンは遮光タイプではないから窓の目の前にある街灯の光が入ってきて、息が当たる至近距離の紫陽花の笑顔を見ることができた。
「可愛い」
「いつも言うから……信用できません」
「そんなに言ってるかな?いつも思ってるけど……」
「じゃあどこが可愛いんですか?」
「……興奮すると膨らむ鼻の穴?」
COOL系美少女、紫陽花はゴミを見る目で俺を睨み。
「バカにしてます?今バカにしてましたよね?」
「ごめん冗談です、ははは。全部可愛いから、どこがって無くて。顔は綺麗だし性格も可愛いし」
「本当ですか?」
「本当」
「……」
その流れでお互い引かれ合うようにキスをした。
「ちゅっ……ちゅっ、ぷちゅ…んっ、んんん……」
舌を絡めながら彼女のパンツの中に手を忍ばすと、既に凄いことになっていた。流石は火消しだ。
火消しって言うと怒るから言わないけどね。
「今日も指、入れてみる?」
「指で膜が切れて処女じゃなくなるのちょっと嫌なんです……」
「そっか……」
じゃぁどうすればいいんだ?
「有間さんのおちんちん……入れてみたいです」
俺の有間さんで処女喪失したいってことか……。
えっ?えっ??えええええっ!?
つ、つまり、セックスしたいってことだよな?しかも今から!!
実は例のアプリの件があって紫陽花とセックスするのを躊躇っている。
今まで基本的に命令や頼み事をしないよう気を付けてきた。がしかし問題なのは一番最初でTRLデートに誘った時に催眠が発動した可能性があると俺は考えている。
この前麻莉ちゃんの知人から聞いた情報やサイトで見た情報から考察すると、記憶消失は催眠を起点に起きた事象全て。つまり俺のことを全て忘れてしまう可能性があるのだ。
可能性があると曖昧な表現になってしまうのは、アプリ開発者から話を聞けていないからだ。俺の思い過ごしで実際は少し物忘れする程度で殆ど消えないかもしれない。
まぁ結論を言うと『どうなるかわからない』だ。そんな状況でセックスするのは無責任ではないだろうか?
ただ、紫陽花のセックスの誘いを断ることなんて俺にはできない。
断り方次第では彼女を傷付けてしまうかもしれないし。
「あ、明日、明日やらない?」
俺が選んだのは問題の先送りだった。
しかし、彼女は明日と聞いて嬉しそうにする。
「ふふふ、有間さんも覚えていてくれたんですね。嬉しいです。ケーキ買っちゃいますか?えへへへ」
「う、うん……?」
いや、なんのこと!?全然わからないぞ!?
そう言えば、紫陽花は明日無理して指輪を取りに行くんだよな。8月6日って何かあるのか?ケーキってことは誕生日……?俺は6月、紫陽花は10月だから誰の誕生日だ?大輔さんじゃないよな……。
まぁいいや、明日になれば分かるだろう。今日は紫陽花のマンションに荷物を取りに行ったから、もう1時ぐらいか……。
俺は紫陽花を優しく抱き締める。
「そろそろ寝ようか」
「そうですね」
こうして一緒に眠りについた。
そして俺達の明日がやってくる。
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