第36話 100万円の指輪買います!
《有間愁斗―視点》
土曜日――。
俺達は午前中から浅草寺周辺をブラブラ歩き観光を楽しんだ後、カフェでお昼を食べて、押上駅まで歩いて移動した。途中にあるジュエリーショップに寄る為だ。
店内に入ると中は広く、この店は一階と二階があるからかなり大きな店だ。扱っている品数も多い。
ガラスショーケースに陳列されたアクセサリーを二人で眺めながらたくさん会話をした。紫陽花も女の子だけあってアクセサリーは好きなようだった。
店に入って一時間、粗方見終わった。
「やっぱりさっきのが一番良かった?」
「うん……、でも値段が……」
今日良さそうなペアリングが見付かれば買おうと思っていた。で、紫陽花が気に入ったのが女性リング6万円、男性リング1万5千円の品だった。彼女は1万円以内で収める積りだったらしく、凄く気に入ったようだが大幅な予算オーバーで悩んでいた。
「俺が出すから気にしなくていいよ」
二つ合わせて7万5千円。高い買い物ではあるが、普段散財せず毎月10万は貯金している俺からしたら大した額ではない。
「なんか有間さんにばっかり出してもらうの、悪いなって思っちゃうんですよね」
「お金のことはほんと気にしなくていいよ。夏のボーナスも全く手を付けていないし、これくら贅沢しないと使い道ないからさ」
「でも結婚指輪じゃないんだし高過ぎじゃないですか?」
「うーん、……先のことはわからないけど、死ぬまで一緒にいるかもしれないだろ?ずっと使うって考えたら寧ろ安いくらいだと思うけど……」
「……じゃあ、100万円の指輪買います!」
「えっ!?」
まぁ買おうと思えば買えるけど……それは流石に……いやでも……紫陽花が望むなら……いっとくか!?
「ぷっふふふ、嘘ですよ」
「えっ!?」
「二度驚く有間さん……可愛い。えへへへへ」
「たく、本気にしちゃったじゃん」
彼女はテヘっとしてから。
「決めました。さっきのにします」
「オーライ!」
俺は親指を立ててグッドサインを出す。
◇
それから店員さんに頼んでお互いの指のサイズを測ったりした。
「指輪の裏にイニシャルやローマ字で名前を入れられますがどうしますか?」
担当の女性店員さんは指輪の裏のカタログを見せながら言った。
「どう?」
「有間さん決めてください」
お互いのイニシャルよりも相手の名前がいいな……。
俺はカタログの写真を指差す。
「これがいいかな……どうだろう?」
「うん……いいですよ」
「では彼氏さんの方はどうしますか?」
「シオカでお願いします」
「こで良いですか?」
店員さんはメモ用紙に『♡SHIOKA♡』と記載した。
「はい!……紫陽花の指輪は『♡ARIMA♡』にする?」
名前で呼んでもらったことないしな。
「むっ、有間さん性格悪いです!」
紫陽花は頬を膨らませてしまった。確かに嫌味に聞こえるな。
「彼女さんの方どうされますか?」
「シュ、シュ、シュ、シュ」
呼吸がおかしな人になってるよっ!
「……シュウト…さんで……」
瞳を潤ませ頬を染めて滅茶苦茶恥ずかしそうに答えた。
「出来上がりは最短で8月6日の火曜日になります。ご自宅にお送りしますか?」
一週間以上かかるのか……。平日は取りに来れない。送ってもらうか。
「送りでも8月6日に到着しますか?」
紫陽花が尋ねた。
「郵送の場合は最短で8月7日になりますね」
「じゃあ私、取りに来ます!」
「え?取りに来るの大変じゃない?」
「でも……8月6日に欲しいんです……」
「ん?どうして?」
「わからないなら……秘密」
その日、何かあったけ?
結局紫陽花が取りに行くことになった。
その後俺達は、東京ソラマチをぶらつき、スカイツリーに上って展望台から景色を眺めたりして夜まで時間を潰した。
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