第11話 赤ちゃんできたかも?
《砂月紫陽花―視点》
一週間後、木曜日の夜――。
有間さんの家に行った日から毎日彼とLINEするようになった。
先週の土日は私の期末試験とレポート提出が今週に控えていたから遊びに行けなかった。でも有間さんに少しだけ会いたくて日曜の夜、ミニストップで待ち合わせして近くの公園を散歩した。
夏の夜の公園は蒸し暑くて、なのに手を繋いでいたいと思うのだから彼氏って不思議な存在だよね。
今週はバイトも休みで勉強に専念した。
必修科目試験で赤点を取ると単位を貰えないか、もしくは補習を受ける。先輩曰く、試験をナメてた
有間さんから来るLINEだけが唯一の癒し。
机に置いたスマホが鳴って手を伸ばす。この音は友達の着信音。
スマホを開けると麻莉ちゃんからLINEが来てた。
麻莉【もう無理!死ぬ!しおの家で一緒に勉強してもいい?】
麻莉ちゃんは凄く頭が良くて有名私立大学に通っている。彼女もこの時期は大学のことで何かと忙しいらしい。
明日で試験終わりだし一緒に勉強しても大丈夫かな……。
しお【いいよ。うるさくするとお姉ちゃん怒るからそこだけ気を付けてくれれば】
私には4歳年上の姉がいる。昔は仲良かったけど部屋が別だから最近はあまり話さない。
麻莉【あれ、
しお【わからないけど帰ってきた】
麻莉【そっか、取り敢えず今から行くね】
しお【はーい】
麻莉ちゃんが来たのはそれから10分後。同じマンションに住んでるから早い。
「しおんち来るの久しぶり。あ、電源借りるね。あとWi-Fi教えて」
麻莉ちゃんは私の部屋の小さなちゃぶ台の上に、持参したノートパソコンを置いて電源を入れた。
栗色に染めた髪は綺麗にカールしていて少し垂れ目のおっとりした顔に似合っている。今日はショートパンツとタンクトップで格好はラフだけど、Gカップの巨乳が深い谷間をつくっていてセレブな感じがする。
私はスマホに保存されているWi-Fiのパスワードの写真を開き、麻莉ちゃんに渡した。
「一ヶ月くらい前に来なかったっけ?」
「来たかもしれない……あれ?Wi-Fi変わった?」
「お姉ちゃんがテレワークしてて、Wi-Fiが遅いって文句言うから会社変えたみたい。結局早くなってないみたいなんだけどね」
「ふーん。
「小学生まではね。じゃあ、まだまだやることあるから集中するね」
「あたしもやらないとー。レポート60ページとかもう本だよ本!こっちはお前の授業だけじゃないんだぜ?教授」
「60ページは狂ってるね……まぁでもしょうがないよ。これが終われば夏休み」
「はぁー、やろ」
それから、お互い無言で集中した。
「終わったー!正確には終わってないから終わった」
と麻莉ちゃんは背伸びした。
「意味わからない。私も終わった。……もう2時か」
「はぁーもう明日、電車と学校でやる。あと少しだからイケるっしょ」
「全部終わらせちゃった方がいいんじゃない?」
「もう寝ないと明日起きられないよ。あ、このまましおんちに泊まるから起こしてよぉ」
「無理、私だって……起こしてもらうし」
「あ、まさか彼氏だな?」
「まぁーね」
試験が始まってから夜更かしすることが多くて、有間さんに言ったら朝電話で起こしくれることになった。
目覚まし時計とスマホアラームの最強コンボで起きない私が、有間さんからのモーニングコールだとすぐに起きてしまう。
「てことは連絡先聞けたんだ!よかったね。あれから進展あったの?」
「家行っちゃった」
「へー、ふーん、ほぉー、てことはつまりぃ?」
「感じちゃった。たぶん……、赤ちゃんできたかも?」
私はお腹を擦ってみせた。
「えええええええ!?マジで!な、な××し!?危ないよ!ほんとに出来たらどうするの?」
「嘘だよ。変なことはしてない!一緒にスマホの写真見ただけ」
まぁLINEとかも見せてもらったし、最後ちょっとだけ抱っこされたけどね。
「もぉーやめてよぉー!信じちゃったじゃん!そっか、でもよかったね。好きなの彼氏のこと?」
「……うん」
「そっか、けどね。信じない方がいいよ。浮気されたら立ち直れないよ」
「絶対されないもん!そういう人じゃないから!」
「男なんて見た目じゃわからないんだって、だいたいナンパしてる時点であたし的には黒だわ」
「とにかく、私は有間さんのこと信じてるから!」
スマホだって全部見たんだから、有間さんは絶対そんなことしない。
「ふーん、有間さんって言うんだぁ。じゃぁその有間さんが仮に浮気したら、しおはどうするの?」
「だからしないって」
「もしもの話よ」
有間さんが浮気したら……、他の子とキスしたり……、エッチしたり……。
「自殺する」
「いや、嘘でしょ?」
「…………う、うん」
「ほんとに自殺しそうね。そんなに好きなの?」
「うん」
「依存しすぎると危険だよ」
「いいの!家の合鍵だって貰ったんだから」
私は机に掛けられた、いつも使っているバックの小ポッケトから、この前貰った合鍵を取り出し麻莉ちゃんに見せびらかした。
「いつでも行けるようにここに入れてるし、もうお守り的存在だよ」
「はぁー、……しおがいいならあたしはいいけど。家って近いの?」
「品森さんちの隣のアパート」
「駅の反対の、凄く近くね。じゃあいつでも行けるのか」
「住むもん」
「ぷ、くくく、あはははは、しお、頬っぺた膨れてるよ。くく、笑った」
「もういい!ちょっとトイレ行ってくるね」
「はーい」
私は鍵をバックの小ポケットに戻しトイレにたつ。
《
しおがトイレに行って――、
あたしはしおのバックから彼氏の家の鍵を抜き取りショートパンツのポケットにしまった。
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