第10話 セックスできない



《有間愁斗―視点》




 スマホを見終えて――。


「私のスマホも見ますか?この前友達に有間さんのこと相談しちゃいましたけど……」


「あーよかったら昔の写真見たいかも」


「べ、別にいいですよ。恥ずかしいですけど……、私も見せてもらったので」



 で、見せてもらった。


「あっ、嫌、恥ずかしい!やだっ!」


「……真っ黒だね」


 高校時代の砂月さんは例えるならドングリ。めっちゃ短いショートヘアで、顔は日焼けでドングリのように茶色い。


「部活、屋外だから凄く焼けちゃって……」


「髪、伸ばしたんだ」


「えっと、高2の冬くらいからです。ずっと短かったので伸ばしてみたくて……、有間さんは長いのと短いのどっちが好きですか?」


「うーん、昔の髪型も可愛いけど、今くらいか、もう少し長くても俺は好きだよ」


「……じゃあ、もう少し、伸ばしてみます」

 と彼女は微笑んだ。


 それから彼女の昔話を聞いた。

 中学から高校までずっと部活に力を入れていたらしく、化粧やお洒落に気を使うようになったのは高3の冬くらいからだそうだ。

 幼馴染が結構遊んでいて影響を受けたらしい。

 

 そうやってスマホを見ていると、メッセージが来た。砂月さんのお母さんからで「何時に帰るの?」と言っている。


「もう1時なんですね」


「ああ、ほんどだ。楽しくて時間忘れたよ」


「私もです……、そろそろ帰りますね」


「うん、遅いから車で送るよ」


「一人で帰れますよ」


「いや、それは流石に心配。あっ連絡先交換しないと」


「あ!そうでしたね!えへへへ」


 砂月さん嬉しそうだ。機嫌が直ったみたいでよかった。

 連絡先を交換しながら。


「また、遊びに来てもいいですか?」


「いつでも来て、あ、そうだ」


 俺は玄関の棚から鍵を取った。それを砂月さんに渡す。


「これって?」


「家の合鍵、仕事遅くなることもあるから、持ってた方が便利だと思う」


「私が悪用するとか、別れたらとか思わないんですか?」


「え?あ、全然思わなかった」


 確かに言われてみればそうだけど、別に盗まれるものなんてないしな。銀行口座もウェブだし。


「でも、砂月さん悪用しないでしょ?」

「しますよ!」

「え、するの?」

「はい」

「例えば?」


 不良っぽいパリピな友達呼んでパーティーでもするのかな?そんな子には見えないけど……。


「有間さんに内緒で、私の着替とか歯ブラシとか日用品を持ち込むかもしれません」


「ぷっ、そんなことか。好きに使っていいから全然大丈夫だよ。あっでも砂月さんの下着とか落ちてたら俺が悪用するかも……」


 パンツとか落ちてたら普通に見ちゃうよね。


「ほんとエロいですね。変態さんです。ちょっと引きました」


「え、ははは、まぁ冗談だけどねぇー」


 あっぶねー。すぐ調子に乗る癖直さないと!


「私も冗談ですよ。それくらいじゃ怒ったりしませんから。でもエッチするのはちょっと恐いかもです」


 エッチという言葉が彼女の口から出て、この子が妙にエロく見えた。こうやって肩をくっ付けてピッタリ横にいると体温が伝わってきて意識してしまう。

 砂月さん痩せてるけど胸はそこそこあるんだよな……。


「そ、そうなの?」


「私初めてなので……、体に異物が入るのが恐いと言うか……自分の体が変わっちゃいそうで……」


 まぁ俺もケツに異物突っ込まれたらホラーだから気持ちは分かる。突っ込まれた経験のない子なら同じ感覚なのかもしれない。


「まぁそう言うのはゆっくりやろう。焦ることないと思う」


「大丈夫ですか?」


「我慢してくれるのかって意味?」


「えっと……あの……、はい」


 煮えきらない返事だな。処女だからヤるの大変だけど一緒に乗り越えてくれますか?って意味だったのか?つまり、ヤってみたいってことだよな……。


「我慢も何も、そう言うの無しで、俺は楽しいから気にすることじゃないよ。まぁでも、付き合ってればいつかヤると思うけど……」


「ですよね……。あ、時間、そろそろ帰らないと」


 あのアプリに関連する話だが、結局アンインストール出来なかった俺はあのアプリにつて色々調べた。

 で結果、暫く俺は砂月さんとセックスできない。だから好都合だ。


 ヤれなくていいと言えば嘘になる。俺はもっと彼女に触れたい、服を脱がしたい、抱き締めたい。


 まぁ少しイチャイチャするくらいなら問題なと思うが……。


「ちょっとだけ」


 衝動に駆られ隣に座る砂月さんの肩に手を回し彼女を抱き寄せた。


「お風呂、入ってないから汚いですよ?」


 そう言いながらも力は抜けていて抵抗する感じはない。

 このまま押し倒し「君が可愛い過ぎるのがいけないんだー」とか言って乱暴ても抵抗しない気がする。そんなことやらないけど。


「連絡先のこと……、不安にさせてごめん」


「……もう、いいですよ」


 そう言うと彼女は俺の胸に顔を埋めた。


「俺も風呂入ってない」


「じゃあ一緒ですね、ふふふ」


 彼女の体は細くて小さくて暖かい。風呂に入ってないくせに髪からいい匂いがする。

 こうしていると凄くドキドキするが、それ以上に安心する。


 で、少し抱き合ってたらお母さんからまたLINEが来て慌てて帰った。










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