第5話 順調にデートする
《有間愁斗―視点》
あれからTRLに着いた俺達はランド内を順調に回っていた。
砂月さんが提案したルートを歩き、彼女お勧めのアトラクションに乗る。俺も目に付いた面白そうなアトラクションに彼女を誘って一緒に乗ったりした。
砂月さんはかなり詳しくて、アトラクションの映画内容や過去に家族や友達と来た時のエピソードなんかを楽しそうに
そんな楽しいにしている彼女を見て俺は安心した。
昨夜、女性攻略マニュアルで予習した、「女子に好感を持たれる話術」を駆使したのが良かったのかもしれない。
内容は、自分の自慢話はしない、とにかく相手に共感する、些細なことを褒める、等など色々書いてあった。つまり自分を捨て相手を気持ちよくする、というものだ。
まぁ元々俺に自慢話なんてないし自分が話すのは苦手だから話を聞く方が楽で、このマニュアルは俺に合っている。
乗り物は子供向けが多いせいか座席は小さく隣と距離が近い。並んで座れば肩が触れそうなアトラクションが多い。そんな距離感に最初はお互い緊張したけど、それも小慣れてきた。
日も傾きかけた頃――。
順番の列に並びながら砂月さんは楽しそうに話す。
「小学生の頃からこのアトラクション好きで、来ると必ず乗るんですよ。何度乗っても飽きないから不思議ですよねぇ。あっ、でも昔はお化けとかお人形とか凄く大きく見えて迫力あった記憶なんですけど、大人になると……、って、まぁまだ大人ってわけじゃないけど、体が成長すると、そういうの小さく見えて、でも、細部までしっかり見るとかなり精巧に造られているって気付いたりして新しい発見があるんですよね。って、私ばっかりベラベラ喋ってますよね……」
「全然、砂月さんの話聞くの好きだし。うん、大人になると気付く事って増えるよねぇ」
小柄で華奢な彼女は細い首を傾げ下から俺を覗き込む。表情はCOOL。
「有間さんはどのアトラクションが良かったですか?」
「ど、どれも良かったけど、一個前に乗ったヤツ、凄く迫力あって感動したかな」
「ああ、あれ!私も好きですよ」
「そう言えば、砂月さんって小柄に見えるけど身長何センチなの?」
「今日はヒールじゃないからですかね。私156センチですよ。もう止まってしまいました。高校生の頃、160は欲しいと思ってたんですけど……」
「部活で有利だから?」
高校時代、彼女はテニス部だったらしい。今は部活やサークルには入っていない。
「はい。やっぱりリーチが長いほうが有利ですから」
「そうだろうね。でも女の子はヒール履くし今は丁度いいんじゃない?」
「そうですかね?有間さんは背高いですよね。何センチなんですか?」
「俺は178だよ」
「サバ読んで180とは言わないんですね?」
「今更自分の身長なんてどうでもいいよ。でも学生時代は俺も180センチ欲しかったな」
「じゃあ一緒ですね」
と彼女は微笑む。笑うとマジで可愛い。
このランドに来て、ずっとお俺達の雰囲気は良くて、だから俺は調子に乗っていたのかもしれない。思わず寒いことを口走ってしまう。
「身長差20センチくらいあるとキスした時に丁度いいとかって何かで見たことあるな。俺と砂月さんがキスしたら丁度いいかも、……なんつって」
「そ、そうなんですか……」
ぷいっとそっぽ向かれてしまった。
変な空気になったな。余計なこと言っちまった。
ヤバい、何かフォローしないと!
「ま、まぁ、も、もしもの話だからさ」
「有間さんって実はエロいんですか?」
ふえ?なんて答えればいいだ?マニュアルにはなかったぞ。
「まぁ男は皆エロいんじゃないかな……」
「ふーん、つまり、有間さんはエロいってこと?」
「まぁそれなりに……、とととところで、今日は何時まで大丈夫なの?遅くなっても平気?」
「えっと、お母さんに友達とTRLに行くって言ってあるので、その……、何時でも大丈夫ですけど……、もしかして、変なことする積りですか?」
変なことって、どんなことですか!?
「いやそう言うんじゃなくて、俺、明日は休みだから何時でも大丈夫だし。じゃあパレードまでいよっか?」
「有間さんが平気なら別にいいですよ」
「一人暮らしだから全然大丈夫。うーんと、終わって急いで帰って、家に着くのは10時くらいかなぁ」
「バイトで遅くなると11時過ぎに帰えることもあるので、もっと遅くても平気ですよ?」
と上目遣いで俺を見詰める砂月さん
何これ?煽ってるの?
そう言えば昨日見たマニュアルには仲良くなるだけでは「いい人」で終わってしまい、付き合うことは出来ないと書いてあった。相手をドキドキさせるイベントが必要なんだ。
一番イージーなのはボディタッチ、こいつは相手次第で諸刃の剣になるが、好感を持たれているなら最も有効な恋のエッセンスになる。
この感じ、いけるよな?
例えば軽く肩や腰に触れたり、手を繋いだり……。何をやっても不自然だけども。
どうせならこんな可愛い子と手を繋いでみたい!
ここは攻めるタイミングでは!?
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