ジコギセイ-外れ物に愛を。

天邪 弱

???話 愛されなかった"物"

星。それは魔界、天界、世界が一致したことを言う。

魔界と天界は対立しており、常に争いが絶えない。だが、一般的には世界に生まれ、平凡な人生を送る。魔界に産まれたものは世界を滅ぼすため、天界に産まれたものは世界を護るため皆"道具"として扱いを受ける。


俺は、"世界"に生まれたのじゃなかったのか…


2006年、10月8日。俺は生まれたらしい。

だが、望まれた子供ではなかったらしく日々暴力を受けていた。今の時代で言うなら"虐待"という言葉が最も当てはまるだろう。

こんな日々がずっと続くなら死んだ方がマシだと思っていた矢先、ある団体が家に入ってきた。そいつらは"悪魔取締総員"いわゆる、マトリと言ったそうだ。

実は父親が悪魔でいることを隠し、世界で暮らしていたそうな。

それはここの星では違法で、マトリに連れていかれる。そう、つまり父親は連れていかれたのだ。

別に情はなかったから何も思わない。一方母親はと言うと、その場で死んだ。どうやら、父親に依存してたらしい。

つまり、俺は1人になったというわけだ。

そして、悪魔の血筋が強いことから、魔界に送られることになった。

魔界というのはいわゆる"地獄"日々の労働は絶えない。俺は考えるのをやめた__


ただ、悪魔としては不完全なので毎年行われる"継承式"に参加しなければならない。

継承式とは、血筋に恵まれなかった悪魔の子達が悪魔の象徴である百鬼様と妖狼様から直接血を分けてくださる儀式のことをいう。

基本的には5:5で血筋が分けられ、それが正規品として日々労働をさせられる。

もし、どちらかの血筋が偏ってしまえば天界にいる天使たちを抹殺するため魔界を出なければならなかった。

正直どうでもいい。なぜならこの儀式は大抵身体が耐えきれなくて死んでしまうからだ。

どちらにしろ、俺に未来は無いだろう。


そんなことを思いながら継承式に参加した。

そこには6名ほどの俺と同じくらいの子供がいた。みんなそれぞれ違っていて、人見知りな子も入れば明るい子もいる。それなのに俺はなんの個性もなかった。

でも、そんな俺にも話しかけてくれる女の子がいた。名前は流花(ルカ)と言った。とても可愛い女の子だった。そんな流花は俺に花をくれた。ピンクで可愛い花。名前は知らない。流花はコレをお気に入りの花と言って笑顔で俺の髪につけた。よくわからなかった。

「お前ら位置につけ。百鬼様と妖狼様がいらっしゃる。」

...?百鬼様?妖狼様?知らない名前がズラズラ並べられてハッキリわからない。

けど、何かしらの恐怖を感じた。

俺らは順番にならんだ。1番目は自信満々の男の子。2番目は少し怖がっている女の子。

3番目は流花。4番目は大人しい子。5番目は顔が隠れてよく分からない。そして最後の6番目が俺。

「位置に着いたな。これより、継承式を始める。百鬼様、妖狼様、お願いいたします。」

彼がそう言うと、何やら不気味な者の影が現れた。ヒトの形では無い。鬼のような見た目をした百鬼?というものと、狼のような見た目に9つのしっぽが生えている妖狼?というものが立っていた。

「よく来たのぉ。恵まれなかった可哀想な我が子達よ。」

百鬼が喋る。

「...くだらぬ。早く終わらせよう。」

妖狼が喋る。

どうやら妖狼はあまり期待していないよう。

一方百鬼は逆で、何やら楽しんでいるようだった。

「お二人方、早速継承をお願いいたします」

「うむ、では始めようか。」

そう百鬼が口を開き、早速1番目の男の子に血を与える。

それを飲んだ男の子。途端に頭が弾けた。

辺り一面に血が舞い散る。俺は返り血を浴びてしまった。

「残念だったのぅ。」百鬼がそう呟く。

「はぁ...オマエの血が汚いからだ。」妖狼が呆れたように喋る。

「そんな事はなかろう。失敗は無かったはずだ。」

「...はいはい。うるさいうるさい。次に行こう。」

そうして2人目の女の子。その子も呆気なく死んだ。そうして流花の番。3番目。流花はとても楽しそうだった。

だけど、やっぱり死んでしまった。妖狼の血に耐えきれなかったらしい。

ちょっと、悲しかった。

4番目、5番目。どんどん死んだ。

そうしてようやく俺の番。

「...やれやれ。今年もダメかな。」

「うぅむ...楽しみにしていたんじゃがなぁ」

「あの...」それが俺の第一声だったようだ。

「お、俺がまだいます...!!」

驚いたように2人は見つめてきた。

「...ふふ、そうだったね。すまない。」

「ガハハ!!おもしろいヤツだなぁ。気に入ったぞ!!!」

そう2人は馬鹿馬鹿しく笑い始めた。そんなにおかしなことを言っただろうか。

「...まぁいいさ。僕から始めようか。」

そう言って血を与えてくれた。なんだか多い気がするような...

「...残念だったけどね。流石にキツイかな...!」

そこには血を飲み干した俺の姿が妖狼の目にハッキリ映っていた。

「嘘...だろ...やっとか。キミは...とても素晴らしい...気に入ったよ...!!」

何やら喜んでるよう。珍しいのかな、生き残るって。

「おうおうおうおう!!!今宵はいい夜になりそうじゃのう!!」隣で百鬼も喜ぶ。

「それじゃあワシも与えようかのぅ。」

そう言いながら与えられた血を飲んだ。だけど、残りの2割くらいが急に飲めなくなった。身体が受け付けてないというかなんというか。

「...嘘じゃろ?おい妖狼。オマエ、やったな?」

「...あぁ。僕としたことが...申し訳ないね」

「ふざけるんじゃねぇぞ妖狼...貴重な素材を...」

「ま、まぁいいじゃないか。天界に連れてって抹殺すればいいさ。そうすれば有効活用できるだろう?」

「それもそうかのぅ。仕方ないな。」

「...残念だけど、君には天界に行ってもらうよ。いいかい、君の役目は天界を滅ぼすことだ。犠牲は必要最低限に収めること。いいね?」

「はい。」自然と口が出た。


それが、俺の始まり___

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