文化祭
うちは自転車通学。
うちから高校までは西国街道を通って行く。
芥川宿のあたり。
昔の大名行列や旅人の往来で栄えた街。
伊勢姫の伊勢寺もある。
美術部の帰りに、香絵ちゃんと伊勢寺に行く。
ふたりで散策。
行くと、いつも
ピューーーーーッ
て、気持ち良き風、吹いてくる。
木々の葉っぱも
サワサワ
音をたてる。
チュンチュンチュンチューン
て、ちっちゃな鳥も鳴いてる。
ふたりでお寺を歩く。
伊勢姫の和歌も描かれてあった。
あたりの風景を絵に描く。
美術部として文化祭に出品する絵を描いている。
文化祭には、富士山の絵も出すつもり。
☆
ふたりで歩いてたら、花奈ちゃんと会った。
「あ、花奈ちゃん」
声をかけた。
「あ、あやなっちー!」
「花奈ちゃん、何してるん?」
「お散歩やん」
「あ、そうなん?」
「あやなっちはデートか」
「美術部の絵を描いてたんだよー」
「文化祭で出すやつなん?」
「そうやでー」
「いいの描けた?」
「うん、まあね」
☆
文化祭。
美術部の展示教室に、香絵ちゃんと座って待機。
ガラガラ~
ってドアを開けて、花奈ちゃん、入って来る。
「はいっ!あやなっちに、あげる」
花奈ちゃんは、うちに、アクセサリーみたいなんを渡してくれた。
「AYANACHI」
ってローマ字で描かれてある。
「ありがとうー!めっちゃ可愛いー」
それから、花奈ちゃんは、うちら美術部の絵を観てくれてる。
「うわっ!あやなっちの富士山の絵、めっちゃいいやんっ」
「あ、それ、香絵ちゃんの描いたやつ」
「あ、香絵ちゃんのか...めっちゃ迫力あって、美しい」
「そやろ。あやなっちの富士山は、こっちやで~」
香絵ちゃんは、うちの描いた富士山の絵を指差す。
「うわーっ!また、可愛い富士山やなー」
「わざと可愛く描いてみたんだよっ。わからんかなー?芸術を」
「なんで富士山に目とか口あるん?」
「わざとだよっ!新しい表現だよっ!わからんかなー?」
「えー、富士山に目とか口を描くの、小学生やないのー、あ、幼稚園か」
花奈ちゃん、めっちゃ笑ってる。
「幼稚園っぽいのをねらったんだよっ!」
「ほんま?」
「可愛い絵を描くのも、うちの絵のテーマなのっ!」
「あはは...ま、えっか」
「こらー、どうでもいい風に言うなー」
「でも、よく観ると、斬新な富士山で、ええなー」
「そうやろ」
「斬新っていうか、子どもっぽい絵というか」
「どっちやねんな」
「じゃあね、ばいばい」
花奈ちゃんは、教室を出て行った。
「これ何なん?」
うちは、アクセサリーみたいなんを香絵ちゃんに見せながら聞いてみた。
「そういうアクセサリーを作るお店をやってるクラスあったなー」
「そこで作ってくれたんやな。名前入りで」
「あやなち」
「あやなっちだよー。あやなっちって読めるもん」
「あはは...」
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