文化祭

うちは自転車通学。

うちから高校までは西国街道を通って行く。


芥川宿のあたり。

昔の大名行列や旅人の往来で栄えた街。


伊勢姫の伊勢寺もある。


美術部の帰りに、香絵ちゃんと伊勢寺に行く。


ふたりで散策。


行くと、いつも

ピューーーーーッ

て、気持ち良き風、吹いてくる。


木々の葉っぱも

サワサワ

音をたてる。


チュンチュンチュンチューン

て、ちっちゃな鳥も鳴いてる。


ふたりでお寺を歩く。


伊勢姫の和歌も描かれてあった。


あたりの風景を絵に描く。

美術部として文化祭に出品する絵を描いている。

文化祭には、富士山の絵も出すつもり。



ふたりで歩いてたら、花奈ちゃんと会った。


「あ、花奈ちゃん」

声をかけた。


「あ、あやなっちー!」


「花奈ちゃん、何してるん?」


「お散歩やん」


「あ、そうなん?」


「あやなっちはデートか」


「美術部の絵を描いてたんだよー」


「文化祭で出すやつなん?」


「そうやでー」


「いいの描けた?」


「うん、まあね」



文化祭。


美術部の展示教室に、香絵ちゃんと座って待機。


ガラガラ~

ってドアを開けて、花奈ちゃん、入って来る。


「はいっ!あやなっちに、あげる」

花奈ちゃんは、うちに、アクセサリーみたいなんを渡してくれた。


「AYANACHI」

ってローマ字で描かれてある。


「ありがとうー!めっちゃ可愛いー」


それから、花奈ちゃんは、うちら美術部の絵を観てくれてる。


「うわっ!あやなっちの富士山の絵、めっちゃいいやんっ」


「あ、それ、香絵ちゃんの描いたやつ」


「あ、香絵ちゃんのか...めっちゃ迫力あって、美しい」


「そやろ。あやなっちの富士山は、こっちやで~」

香絵ちゃんは、うちの描いた富士山の絵を指差す。


「うわーっ!また、可愛い富士山やなー」


「わざと可愛く描いてみたんだよっ。わからんかなー?芸術を」


「なんで富士山に目とか口あるん?」


「わざとだよっ!新しい表現だよっ!わからんかなー?」


「えー、富士山に目とか口を描くの、小学生やないのー、あ、幼稚園か」

花奈ちゃん、めっちゃ笑ってる。


「幼稚園っぽいのをねらったんだよっ!」


「ほんま?」


「可愛い絵を描くのも、うちの絵のテーマなのっ!」


「あはは...ま、えっか」


「こらー、どうでもいい風に言うなー」


「でも、よく観ると、斬新な富士山で、ええなー」


「そうやろ」


「斬新っていうか、子どもっぽい絵というか」


「どっちやねんな」


「じゃあね、ばいばい」

花奈ちゃんは、教室を出て行った。


「これ何なん?」

うちは、アクセサリーみたいなんを香絵ちゃんに見せながら聞いてみた。


「そういうアクセサリーを作るお店をやってるクラスあったなー」


「そこで作ってくれたんやな。名前入りで」


「あやなち」


「あやなっちだよー。あやなっちって読めるもん」


「あはは...」









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