第22話 保身と恐れの拘束具

今日の本格的なダール侵攻は、本格的な武力衝突の始まりを意味する。そして今回の侵攻は、第二次ユーラシア大戦の始まりを告げる物であることは確かだ。



ぷるるるるる、ぷるるるるる、ぷるるるるる



深夜の眠気と静寂を破ったのは一件の着信だった。


「神宮、今から来てくれる?」


時間は、丑三つ時人を呼び出すには明らかに遅い時間だ。普段なら流してしまうだろう。しかし、彼女の焦りのような何かを感じた。


「明日じゃダメってことだよね」


「そうよ。良くも悪くも上と関係のないあなただけに話すべきことがあるの」


「良くも悪くも・・・分かった。今から行く」


上と関係が無くてはいけない理由とは何なのか。関係があると何故だめなのか。まったく予想がつかない。しかし、声から感じた焦りともう一つあれは憤りだろうか?


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「来たわね」僕が研究室に入るとジュリアスはそっとつぶやく。


「取り合えずそこに座ってくれる」


言われるがまま椅子に腰かける。


「時間が無いわ。手短にいくわね」


「今しがた連絡が来てね。能力持ちにコレの装着義務が発生したわ」


ジュリアスがカタカタとキーボードを打つ。ホログラムのように空間に映し出された画面にはチョーカーが映っていた。


「これは?」僕の問いかけに


「安全装置よ。このチョーカーには爆薬が仕込まれていてね。装着者が反抗すると首が千切れ飛ぶわ」


爆発?首が飛ぶ?なんだよそれ、僕たちは人を守るために戦う覚悟を決めたのに。


「端的に言うとあなた達は強すぎる。混乱の真っただ中、ぐちゃぐちゃになった社会をひっくり返すことができるほどに。そう判断されたのよ」


「でも、そのことをなんで僕だけに?こんなのみんなに伝えないと!!」


「駄目よ。あくまでも能力研究のための機械ということになっているわ。実際にその機能もあるらしいけどメインでないのは確かね。で、これを話したのは協力者が欲しかったから。そのためにほぼ部外者のあなたが必要だったそういうことよ」


「協力者?僕じゃ何もできないよ。君が今言ったようについこの間まで一般人だったんだから」


そうさ、何の権限もない。何の権利もない。そんな僕にできることなんてたかが知れてる。


そんな思考を遮るように「理由はある」と彼女は言った。


「はっきり言うわ。あなたは異常よ。魔力の保有量はそこまで多くないのに魔臓は今までで類を見ないほど発達している。私は、ここに何かあると思っているわ。つまりデータを見ればあなたは誰よりも強くなる可能性が高い。上層部も首輪を着けた最強の駒があるなら最大限活用するでしょうね」


「強くなってのし上がれってことですか?」


「そうよ。のし上がってモルモットから脱却しなさい!」


確固たる自信を感じさせる返事に僕は、強くうなずいた。


「あ、私には色々研究させてね!あなたは、特異な体質なんだから」


あーーーーもう!台無しだよ!


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