第21話 近づく戦場

ソ連、ヤマロ ネネツ自治管区のサレハルトを含む左側が壊滅、占領された。その事実を聞き、天神さんは焦ったような驚いたような声でまくしたてる。


「その情報は本当かジュリアス!重要拠点ではないとは占領されたとなると別だぞ!」


「「天神さん・・・」」


僕と真希さんの声に少し冷静になったのか口調が落ち着く。


「すまない。報告はあとでじっくり聞く。ああ、分かった」


電話を切った天神さんは電話を切ると口外しないでほしいと釘を刺された。


「でも、少し聞いていいですか。日本は現状、安全なんですか?」


「ああ、今のところは安全だ。なんて言ったって間に中国や韓国もある。それにロシアも黙っていない。高確率で排除できると思うよ」


「そうですか」


「よし、話を戻して反省会だ。少し時間が無くなったから手短に行くよ」


あまりの切り替えの早さに僕たちは面食らってしまった。しかし、時間がないらしい。こちらも切り替えなくてはいけない。


「まず信二君は、魔力の使い過ぎだ。今までは魔力制御を覚える段階だったからよかった。だが君の魔力量のデータを見たが君の魔力量では小分けに、瞬間的に、そして流動的に身体強化を使った方がいい。じゃなきゃ恐らく一時間も経たずにガス欠を起こす」


「分かりました。少し、やってみます」


「次に真希さんは、もう少し魔術を織り交ぜた方がいい。君の魔力量はデータではかなり高い。それを使わないなんて宝の持ち腐れだ。もう少し戦術を練るといい。とりあえずは得意な魔術系統を探すところからだな」


「魔力を使うですか、頑張ります!」


「二人ともその意気だ。じゃあこれから俺も行かなきゃいけないから、また」


「「ありがとうございました」」


2人で天神さんを見送った。


「大変なことになってますね」


「そうだね。ついに都市が占領された。もう完璧な安全なんてないのかもね。いや元から無かったか安全の保障なんて」


「二百年の平和すらダールの気まぐれだったかもしれないっていうのに」


正直、さっきの話が頭の中を駆け巡って仕方がない。色々考えても多分どうにもならないことだけはわかる。などの無駄な思考を巡らせる。


「戦いが激化したら、もう学生だから戦場に駆り出されないことはないかもしれない」


「そんな・・・私たちの年代が戦場に行くなんてこと、日本の歴史上ではユーラシア大陸の全土が戦場になった一次侵攻、ユーラシア大戦の際の『唐津防衛戦』以来ですよ」


唐津防衛戦。200年前、日本本土へのダールの侵攻を許さなかった日本の最前線だったっけ。


「流石に短期間でユーラシア大陸の端っこから日本まで来れないよ。それに、どこにでも転移できるはずのダールがわざわざ拠点を構えたんだ。転移のリスクは高いのかもしれない。だから大丈夫だと思うよ。確証はないけどね」


「そうですよね。まだ、大丈夫ですよね」


そうだ。今は、先に備えて力をつける方が先決だろう。能力の研究を目的とした部隊だとしても研究が終われば戦力としてみられるのは明らかだ。それに優さんみたいに僕はなりたい。




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