第20話 日常と忍び寄る影
あれから数週間、天神さんの指導の下で真希さんとの修練に励んでいる。
「やあああ!」
逆袈裟斬りからの横一文字。流れるような太刀筋に見惚れてしまいそうになり反応が遅れたがとっさに体を後ろへ反らし避ける。しかし、木剣が前髪を掠める。
「こっちも行くよ!」
僕は、重力に身を任せそのまま後ろへバク転の要領で蹴り上げた。しかし、読まれてすんでの所で避けられる。
「何度も同じ手が通じると思わないでくださいよ!」
そう言い放ち構え、踏み込み、切りかかる。彼女の放った斬撃を右へ短剣で受け流し、体勢が崩れたところへ最大限に身体強化を込めた渾身のタックルをお見舞いする。
「うわ!」と声を上げ彼女は、そのまま場外へと吹き飛んだ。
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「うん。君たち何なの?まだ一か月もたってないよね。何で並みの生徒を軽く超えるような強さしてるのかな?」
心底困惑したような声で天神さんが疑問をぶつけてくる。
「みんなとの違いなんて・・・」
何だろうと考えていると「実戦経験ですかね」と真希さんが答える。
「私たちは死にかけましたからね。ですよね、信二さん」
「いや、でも一日だけだしそんなに変わるとは・・・」
「納得した。君たちの強さの要因。信二君は、一日だけというが実践なんて一つのミスが死に直結する。そんな状態で生き残ったんだ。訓練で得られる経験値とは、比にならない」
「そうですか。よくわかりませんけど」
天神さんは、諭すような口調で話す。
「信二君は、少々自分を過小評価しすぎる節がある。謙虚は美徳というが、戦場では自分の実力を正確に把握できていなければ死ぬぞ。自分も仲間も。君は、強い確実にね」
「そうですよ。だいたい私が生き残れたのは信二さんのお陰なんです。実力はありますって」
普段から褒められ慣れていないから少し気恥ずかしい。でも、悪い気はしないな。嬉しいのかな僕。
「それじゃ、今から反省会するぞ。まずは信二についてだが」
天神さんの声を遮るようにピーっと天神さんの携帯の着信音が鳴り響く。「ちょっとごめんね」と言い電話に出る。
「どうした。え・・・」
みるみると天神さんの顔が青ざめてい無意識にこぼれたのだろう口から洩れた事実はソ連、サレハルトの壊滅。地図から都市が一つ消えた。
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