第19話 異常と不自然

私、ジュリアスロットは初めて見る異常なデータに困惑していた。その異常なデータとは新入りの神宮の魔力検査結果だ。


能力者は、魔力生成器官である魔臓 まぞうを持つ。そのため能力者は体内に保有する魔力が多い。しかし、能力者にしては明らかに魔力量が少ない。他の能力者の半分といったところだ。それに薄い。魔力が薄いなんてこと初めてだ。まるで、種火のような。


だが、確実に体内に魔力を保有している。この事から彼も魔臓があるのは間違いないだろうけど確信が持てない。それもこれも、CTスキャンで分かるはず。


そう考えているとスピーカから新入りの「CT準備できましたよ」という声が聞こえこちらも準備に取り掛かりスキャンを開始した。


結果としては、魔臓は存在していた。保有魔力量に見合わない程大きい。このサイズであの程度の魔力量正直信じられない。再度、調べてみたい。この結果は私の知的好奇心を強く刺激した。


「神宮、また今度精密に調べてみたい。今度でいいから来てくれる」


「分かりました。今日はもういいんですよね」


「もういいよ。天神たちと話してきな。初めてから2時間は経っている。何より私は色々やることがあるからね」


そうだ。この結果、どうするかな。


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信二くんが行ってから30分経った頃だろうか私がいつものようにお茶菓子と紅茶を吸い込んでいると望月さんが神妙な面持ちで「いきなりなんだけど」と話を切り出してきた。


「近時か本部に転属することが決まった」


「本部ってことはニューヨークですよね。一度歪みが発生した場所は空間が不安定になっているってのが国連の見解なんじゃないんですか?!これ以上この国で何か起きたらさすがの日本人でも大規模なデモいやテロが起きかねない。それなのに・・・」


どういうこと?いつ奴らが現れるか分からないっていうのに・・・いったい何のつもりなんだろう。ただでさえ各地で戦闘が起きているのに戦力を現状一度も被害が出ていないアメリカに送るなんて信じられない。


「俺も戦力のある程度は、攻撃を受けた国に派遣するのが最善だとは思う。本部招集の理由は、分からないけど俺たちはあくまで軍人だ。上の命令には逆らえない。それに、一人で全人類を助けることはできない。どんなに強い人間だろうとね。だから、俺らは軍人である続ける為に指示に従う」


そんなことわかっている。個人の力には限界がある。どんな伝承に出てくる英雄だって何かしらの組織に属すか率いている。人が人である限り全てに干渉するなんてことはできない。だから、命令には従う。でも今回の件は、明らかに不自然だ。


望月さんは、私の思考を読みったのか場を和ませるようにニコッと笑い「嬉しいお知らせがある」と言った。


「嬉しいお知らせってなんです」


「今回俺転属するだろ?そこで代わりにこの隊の隊長を任せたいと思ってる」


脳の理解が追い付かない。この人は内を言っているんだ?


「私が隊長?隊長なら副隊長の丸子さんの方が適任ですよ。そもそも私、まだ学生で・・・」


私の言葉を遮るように望月さんは言う。


「丸子とも話し合った結果だ。なあ?」


いきなり話を振られた丸子さんは、一瞬戸惑いつつも諭すような口調で問いに答える。


「そうですよ。私は、リーダーには向いていません。あまり能動的に動けないですから。でも不思議と優ちゃんには、人を動かす力がある。自ら動いてみんなを引っ張ることができる人です」


「分かりました。頑張ってみます。でも、今、居なくなられると困るんですけど。信二くんに稽古もつけてもらいたいし・・・」


私のこともそうだが信二くんへの稽古がなくなってしまうと困る。私とは戦い方の根本から違う。近い戦術の望月さんに教えてもらわないといけない。


「大丈夫、11月の終わりまではここにいる。できるだけのサポートはするよ」


「はー!分かった。やれるだけやる」


私は、根負けした。











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