第5話 始まりの日Ⅴ

「作戦は、至ってシンプルだ。寝室の中心にガス缶を一つ残して全部置く。そしたら奴らを二階に引き寄せて僕たちは壁の穴から飛び降りる。その時、手元の缶に穴をあけライターといっしょに部屋の中心のガス缶目掛けて投げる。」


「そのままドカン、ですか?」


「そうだね」


「分かりました。それでいきましょう」


作戦の了承を得た僕は、護身用に包丁を持ってそそくさと一階へと降り玄関へと向かった。玄関のドアを開けると待ってましたと言わんばかりに四足歩行のトカゲ犬達が飛び込んでくる。そのことを確認した僕は、死に物狂いで二階へと駆け上がる。


しかし想定よりも奴らの足は速く階段の中盤で左腕に何かが刺さるような感覚を感じた。恐らく嚙みつかれたのだろう。噛みつくだけでは飽き足らず犬トカゲは頭をぶんぶん振り肉を裂こうとしてくる。血は流れ肉が裂ける。今までに体験したことのない痛みに襲われ意識が飛ぶ。しかし、こんなところで死ねるかと脳がドバドバとアドレナリンが分泌されたおかげで意識を取り戻しさらにアドレナリンによる極度の興奮状態に陥った。


「もう牙が刺さってるなら!」


そう叫び犬トカゲの頬の筋肉ごと自分の腕を刺した。もう、感覚が麻痺していたのか痛みはない。頬の筋肉を切られ嚙む力を失ったトカゲ犬は下の犬トカゲ達めがけて落ちていった。これで二階に上がる時間ぐらいは稼げそうだ。さらに力を籠めて階段を上がりきる。速攻で左に曲がり寝室に向かった。


「飛ぶよ!温海さん!」


「え!あ!腕から血が!」


「いいから早く穴開けて!」


キッチンバサミを使いガス缶に穴をあけたのを確認して飛び降りる直前に僕は、ポケットから取りだしたライターを温海はガス缶をお互いに思いきり投げ着地する。ドンという爆発音の後ほかのガス缶にも引火し二階部分ごとトカゲ犬は吹き飛んだはずだ。しかし、爆音が鳴ってしまった。恐らくそう時間がたたないうちに奴らがまた集まってくるだろう。


「早くここから離れよう」


「何言ってるんですか!その出血量早く応急処置しないと死にますよ!」


「でも今の爆発音で寄ってきちゃうから移動してからでも」


「先に!治療しますよ!」


「大げさだ・・・よ?」


そんな酷い怪我ではないはずと思いながらも左腕見る。血の気が引いた。いや、実際血がなくなっているのか。左腕ドバドバと見てるだけで眩暈がするほどの血液が流れ真っ赤な鮮血がアスファルトに血だまりを作っている。悲しいかな噛み傷よりも包丁の刺し傷の方が深い。誰だよこんなに深く差した馬鹿は。そんなしょうもないことを考えているとアドレナリンも切れ、痛みが戻ってくる。


あ、やべ


一日に二回も気絶するとかないわー。


電源が落ちるように、意識が途絶えた。













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