第4話 始まりの日Ⅳ
リビングで救急箱を漁っているときにだった。ドンと大きな音が二階から聞こえた。
焦る。階段を何かが通った気配はしなかった。空を飛べるやつでもいるのだろうか?助けに向かわないと。
もう襲われているかも。もう死んでいるかも。そんな不安を振り払い右手にフライパン左手に包丁を構えながら全力で階段を駆け上がる。シャッと木を切断するような右の部屋から音が聞こえる。おそらくドアが破られたのだろう。なら間に合う!
階段を登り切り部屋へと飛び込む。すると目の前には、異様に体は細く背中から羽が生えて爪は鋭く長いく顔はヤツメウナギのような生き物がその爪を温海に振りかざそうとしていた。
「温海!」
思わず叫ぶ。間に合わない、頭ではなく感覚で理解する。それでも、体が動いた。フライパンを持った右手を左に大きく気く振りかぶりった。
あ、間に合わない。
キーンと甲高い音が鳴ったかと思うと彼女は手に持ったゴルフクラブでヤツメウナギの攻撃をいなした。正直ギョッとしたが攻撃をいなされたヤツメウナギが体勢を少し崩した。瞬間振りかぶったフライパンでヤツの頭をぶん殴る。その勢いを乗せたまま左手に持った包丁で首を切り裂いた。
体液を飛び散らせながらヤツメウナギのような生物はバタバタ体を動かしながら倒れた。
「大丈夫?温海さん」
温海さんに駆け寄り問いかけた。しかし、彼女から帰ってきたのは返答ではなかった。
「神宮さん!後ろ!」
後ろを振り向くとヤツはまだ生きていた。仕留め損ねてしまったようだ。死ぬ?うそだろ?こんないきなり。そんな思考を遮るように声が響く。
「右に避けてください!」
彼女を信じ右へ避ける。すると彼女は両手で握ったゴルフクラブをヤツメウナギの脳天めがけて振りかざした。
ヤツメウナギの頭は完全に陥没しピクリとも動かなくなった。
「勝ったのか?」
「勝ちましたね」
二人とも力が抜け座り込みながら現状の確認をした。どうやら目立った怪我は二人とも無いようだ。一息ついてからある疑問が浮かぶ。彼女は強かった。化け物の攻撃をいなしていた。明らかに強い、強さについて疑問を彼女にぶつけるた。すると彼女は私、両親から剣道を小さいころから習っていてと答えた。それにしても強すぎるだろなどと考えていると
「両親に二度も命を救われました」
ニコッと笑いながら告げた。きっとこの笑顔は、両親に向けたものなのだろう。
落ち着ける時間は少なかった。外から遠吠えのような声が聞こえたのだ。おそらく今の戦いの音でこの家に獲物がいると判断したのだろう。
遠吠えの主を確認するためにヤツメウナギがぶち破った寝室の穴から外を確認する。はっきりと形は見えないものの四足歩行の犬と爬虫類を混ぜたかのような気色悪い生き物が家の周りをぐるっと囲んでいた。取りあえずトカゲ犬とでも言うか。犬トカゲはこちらを逃がしてくれる気はさらさらないようだ。
「逃がさないつもりか」
「そうみたいですね」
奴らにも知能はあるのか玄関や窓などの出入りができそうな場所を入念に固めている。どうしたもんかと思案していると。
「一階は何がありました?」
その質問で、二階の廊下に色々詰めた袋をぶん投げていたことを思い出し拾いに行き中身を見せる。
「包丁に分離させられるタイプのキッチンバサミそれとパンと包帯、消毒液かな」
「あれ?このスプレーみたいなのは何です?」
スプレーとは何かと思い袋に目をやるとそこにはガス缶があった。確かにスプレーに似ているが。
「ガス缶だよ。携帯式のガスコンロで・・・」
その瞬間、この状況の打開策を思いついた。この書斎は、微かに煙草のにおいがする。ならば煙草に火をつけるライターがあるはずだ。そのライターとガス缶を合わせれば。
「この部屋にライターがあるか探してくれる?」
彼女は、分かりましたと簡潔に答えた。おそらく同じ結論に至ったのだろう。しばらく探していると。見つかりました!と言いライターを持ってきてくれた。これで現状を打開できる。
「今から作戦を話す」
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