第32話 波乱
外に出ようとした俺は先生の手によって止められる。まぁ普通に考えたら危険に向かおうとしてる生徒は絶対止めるよな。
︎︎でも、俺には絶対に行かないといけない理由があるんだよ、今この瞬間にあの不審者が侵入してきたことは俺が原因だ。
「澄風、外に何をしに行くつもりだ? さっきの放送……いやここから見えるあいつのことが見えないか?」
「いえ、ちゃんと見えてます。姿も、誰なのかも、そしてその右手に何を持っているのすら」
あいつは霧立、ショッピングモールで俺達に突っかかってきたやつだが……。1回お世話になって落ち着いて欲しかったが、前より悪化してるじゃないか。
︎︎前はカッターナイフだったのに、今はちゃんとしたナイフだ。
それにあいつ、体がでかいから先生も成人した不審者だと思ってる。でも実際は中3、大人が数人掛かりであれば案外簡単に抑制はできるだろう。
「先生、今侵入してきたのは中3です。
恐らく相手の目的は自分なのでちょっと行ってきていいですか? 先生は他の先生を呼んで抑制する準備をしておいて下さい」
「守るべき生徒に俺たちがそんなことをさせると思うか? せめて、一緒について行かせてもらうぞ」
「ありがとうこざいます。ただ、話してる間は少し離れておいてくださいね」
先生と外に向かい、俺は霧立の前までやってきた。今までと違って今回はすぐそばに助けてくれる人がいる、相手がナイフを持っていても怖がらずに行こう。
「噂には入ってきてたけど、やっぱりお前だったか。反省したと思っていたが、全然そんなことないみたいだな? 霧立」
「……黙れ」
以前はもっと会話出来てたんだけどなぁ、まぁこんなやつと会話する気は無いし俺がやることは先生が呼んでいるはずの警察が来るまでここで持ちこたえることだ。それまで俺は霧立にパンチも何も食らわせる気は無い、ただ霧立の前に立ってこの場に留めておくだけでいい。
「いい加減諦めるってことを覚えろよ、お前は。来羽に対してどんな気持ちがあるのか知らないけどさ、そんなことして何になる? そんなお前を来羽がどう思う?」
「……お前だけが邪魔だ」
会話をして欲しいな、俺が邪魔とか言ってるけど来羽と付き合ってるわけじゃないしただの兄なんだからまともなやつだったら別に止めないんだけどな……。そもそも最終的に決めるのは来羽だし、常識を持っている普通の人間なら俺は何も言わないのに。
「澄風、一応聞いておくがこいつに何をした?」
「妹と出かけてた時に、妹がこいつに付き合ってくれと執拗に絡まれてたので追い払っただけです。その時から結構おかしいことを言ってましたよ」
「そうか、とりあえず他の先生が呼んだ警察が来るまでここで話を続けるぞ」
俺もそうしたいけど、残念ながら向こうが限界みたいだ。
「先生、話はもう無理みたいですよ、どうします? 恐らく自分に襲いかかってくると思いますけど、2人で抑え込みます?」
「そうするのが1番だろうな」
霧立は先生のことが見えていないのか、ナイフを構えて俺の元へ突っ込んできた。そして先生に後ろから押されて前のめりになったところを抑えられる。
「警察が来るまでこのままこいつを押えておくか。澄風、こいつはお前を狙ってたが他にもそういうやつはいるのか?」
「今のところこの人以外には知らないです。ただ、今まで色んなことに関わって来たのでもしかしたら他にもいるのかもしれませんね」
「そうか、自分が危険だと思ったら直ぐに逃げるんだぞ。俺はお前の腕の傷を見たことがあるからな」
サイレンが聞こえてきたのでそちらの方向を先生が向いてしまった、目を離したということは霧立が何をしようとしているか見えない。俺は先生に切りかかろうとしている霧立の手首を思いっきり掴んだ。
︎︎そのせいで霧立がブンブン腕を振りましたので少し切り傷ができてしまった。
ひとまず霧立はやってきた警察の人によってまた連行されて行った。危険は過ぎ去ったわけだけど、本部の方は体育祭を続けるのかそれでも中止するのか。
︎︎続けるとしたらこの学校で波乱の体育祭と語り継がれそうだ。
しばらく本部が相談して出した結果は続行。幸いにも早く事は終わったし誰かが重症を負うなどの被害は出なかったので続けるという判断もいいと思う。
「これで終わりか、俺が今までやってきたことはこれで辞めだ。次からは見知らぬ人ではなく、友達や家族のために」
そして体育祭は本部の指示の元、準決勝の途中からドッチボールトーナメントは再開した。1年はどうなってるか分からないが外から歓声が聞こえてくるのでちゃんと再開出来たのだろう。
︎︎さっきあんなことがあったのに何事も無かったかのように盛り上がれているというのはすごいな。
「澄風先輩、また自分の身を犠牲にしようとしたんですか?」
「まぁな。でもあいつは俺が目的でここに来た、それで他の人も巻き込んでしまったなら俺が向かうのは当たり前だろ? 別に先生も隣に居てくれたんだ、以前に比べたら危険なことはしていない」
「血を流しておいて、ですか?」
星野が俺の腕を見る。まぁ一般人の感覚で言ったら切られてるし危険なことだろう、でも俺の感覚は一般人のそれじゃない。
「まぁ、そこまで心配しなくていい。俺はもう、知らない人を助けるのは辞めるつもりだからな」
「そうですか、嫌いでも知ってる人が怪我をするのは見たくありませんから良かったです」
「そうか、でも星野や小鳥遊のことは今まで通り助けるつもりだからな」
「……ありがとうこざいます」
やっぱり星野はツンデレだと思うのだが俺の勘違いだろうか。
とりあえず、決勝だし下に降りるとしよう。
︎︎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます