第11話 ハロウィン祭
大体はグループで歩いているのでお菓子が減るスピードが結構早いが、無くなったらまた取りに帰ればいいだけだ。他の人達は一箇所にとどまっているが俺が校内を歩いているのは来羽を探すためでもある。
昨日の夜に結構はしゃいでいたし、どんな仮装をしてきているのかが純粋に楽しみである。
お菓子がちょうど尽きそうな時に来羽と、その友達の姿が見えた。
「お兄! ねぇねぇ、この衣装どう?」
───来羽ちゃんのあんな笑顔初めて見た。
───めちゃくちゃ嬉しそうだねー
「可愛いよ、さすが俺の唯一の妹。本当に全人類にこの可愛さを知って欲しいくらいだ」
「お兄、そこまで褒めなくても……友達の前で、うぅ恥ずかしい……。でも、嬉しい」
「来羽ちゃんにそんな顔をさせるとは……さすが兄と言うべきか、学校とのイメージが違いすぎるし兄の話なんて……」
「それ以上言わないで!」
来羽の可愛さを改めて認識したところで、学校のイメージとは違うってどんな感じなのだろう。俺からしたら料理ができて人懐っこいイメージがあるけど学校ではどんなイメージでやってるのだろうか。
「まぁそんなことより言わないといけないことがあるでしょ? 2人とも」
「そ、そうだねせーの」
「「トリックオアトリート!」」
その来羽とその友達にあげた分で俺が持っていた箱の中にあったお菓子は全て無くなったので一旦取りに戻るとしよう。小鳥遊の所に女子ばっかり集まっているのは少し気に食わないが、勝てない戦に挑みに行くほど俺は馬鹿では無い、小鳥遊に顔で劣ってることぐらいわかっている。
まぁ俺には来羽が居てくれればそれでいい、そもそも今の俺に彼女を作る余裕なんてないんだけどね。
「小鳥遊、お前は本当にいつも通りだよな。俺にも分けて欲しいくらいだ」
「僕としては女の子ばっかり来て困るんだよね、僕あんまり女の子と接するのが得意なわけじゃないし。逆に隼人は男子とか女子とか気にしないタイプだから羨ましいよ」
確かに小鳥遊と星野で話し方とかの対応を変えたことは無いが、星野の前では色々気をつけてることはある。女子にだって男子にだって触れられたくない話題はあると思うし、俺は地雷を踏まないように気をつけている。
星野の地雷になりそうなことなんて知る由もないし小鳥遊に関しては本人が優しすぎて地雷を踏んでも平然としてそうである、俺は人の思ってることを想像するのは苦手だからちゃんと嫌なら嫌と言って欲しいところだ。
「というか配り終わるの早くない? 僕はまだ半分以上も残ってるんだけど」
「そりゃあ来羽を探して校内歩き回ってたし。まぁ渡した人の顔を全部覚えてるわけじゃないし同じ人に2回渡してる可能性もあるけど」
別に同じ人から何回貰おうが問題は無いのだが、クラスによって持ってるお菓子の種類は違うので一人3個までと設けられてるこの場では同じ人から貰うのは悪手だと言える。ちなみに俺らのクラスが持ってるのはクッキーで星野のクラスがシュークリームだ。
とりあえず調理室に戻って入るだけ箱の中にクッキー袋を入れて、再度廊下に戻る。もうすぐ午前が終わるが今のところ冷蔵庫の中には結構残っている。
まぁ残ったら残ったで俺たちで山分けして配りあいしていくので別にどれだけ余っていようと気にしなくてもいい。何個余っていたとしても俺は多分1、2個しか貰えないだろうけどね。
「さっさとこのクッキーも配り終えるとしますか」
§§§
しばらくして午後になり、中学生たちが帰ったところでクラス内で余ったクッキーが分けられていた。そしてそこから別のクラスの人とクッキーと何かを交換するというわけだ、去年は小鳥遊が別のクラスだったのでお菓子を交換したが今年は同じクラスなので交換せずに終わるかもしれない。
とりあえず廊下を歩くが知り合いと言える知り合いが小鳥遊と星野しかいないので案の定ただ歩いてるだけの時間を過ごしていた。
「探しましたよ、澄風先輩」
後ろから星野の声。
「ん、なにか俺に用でもあるのか?」
「いやいや、今は他のクラスの人とお菓子を交換する時間なんですよね、2回目なのにそんなことも知らないんですか? まぁいいです、ほかのクラスの知り合いが先輩以外にいなかったので」
そう言って星野はシュークリームが入った袋を2つ俺たちの前に差し出してきた、つまり交換がしたいということだろう。まさか星野が俺と交換するとは思ってもいなかった。
「さんきゅ、でも俺と小鳥遊は同じクラスだから貰えるものは同じだぞ?」
「大丈夫です、1個は奏にあげるので」
「そうか。そういえば星野が学校に行ってる間は奏ちゃんはどうしてるんだ? さすがに1人で家に居させる訳にもいかないだろ?」
俺がそう問うと、星野は呆れたような顔をして言った。
「なんのために私が早く帰ってると思ってるんですか。奏は保育園に預けていて、私が迎えに行ってるんです!」
つまりあの日は星野の母親が迎えにいって星野がもう少しで帰ってくるであろう時間に出張に行ったのだろう。でも星野の母親は自分の時間ギリギリまで家にいたはずだ。
「まぁ良く考えればそうか、とりあえず委員会のことは気にしなくていいから奏ちゃんのことをちゃんと見てやれよ。辛ければ俺らを頼ってくれていいからさ」
「余計なお世話です! ───でも、ありがとうございます」
星野が最後なんと言ったが聞き取れなかったが星野がその身を翻して離れていったので確認することは出来なかった。
いつ帰ってもいいと言われてるし、これ以上学校に居ても何も貰えないので俺は星野から貰ったシュークリームを食べながら家に帰った。やっぱり、甘いものは苦手だな。
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