第9話 噂は何処まで?

翌日も、その翌日もその噂のことについて聞かれて普通に疲れてきた、何回ただの友達と言えばいいのか……。理想としては今すぐにでも噂がなくなって欲しいところだが、そのためにはこちらが動かないといけない。


まぁ動いたら動いたで少し面倒なことになると思うので動けないというのが現状だ。別に星野が俺の元にわざわざ来ることなんてないし、周りにもわかるくらいには嫌いオーラを振りまいてるんだから75日どころか1週間もしたら消えるか。


噂がどこまで拡がっているかによるが今のところ1年にしか拡がってないと思う、2年のやつでこのことを聞いてきたやつは一人もいなかったし。1年にしか拡がってないと言っても1年だけで約300人はいる。


普通に考えて噂を無くすためにその300人全員に説明しに行くのは現実的ではない。


これがだ。



§§§



「なんでこうなった……」


普段は誰も来ないはずの図書室が人では溢れかえっていた、主にあの噂関連を聞きに来た2年達で。家の都合で委員会に来てないからよかったが、普通に来ていたら恐らく星野は1年達の対応に追われる羽目になっていただろう。


「あのさぁ、あんな噂を信じて俺のところまで真偽を確かめに来る人がこんなにいるとは思ってなかったんだけど? 小鳥遊も手伝ってくれない?」


「じゃあ向こうでこの噂は完全なデマですと言い続けておくよ。まぁ───」


言葉を途中で区切って小鳥遊が立ち上がって移動するがその方に向かう人は誰一人いなかった。


「僕のところには誰も来ないんだけどね、噂はやっぱり本人に確かめに行かないと。僕はここで隼人が対応に困ってることを眺めておくことにするよ」


初めて小鳥遊の性格が悪いと思った。というか後ろにいる人も俺が言ってること聞こえてるだろ、なんで聞きに来るんだよ! 捌いても捌いても人はやってくるし一体どこまで噂が広がってるんだ……?


「おいおいおい、もうすぐ委員会の時間終わるって! 何処までこの噂が広がってるんだよ」


「少なくとも2年と1年には拡がってるだろうね〜。多分3年は勉強で忙しいから来てないだけで普通に噂自体は知ってるんじゃないかな?」


じゃあこうやって対応してても終わりは来ないのでは……? 噂が自然消滅するまでとりあえず待とう。ちょうど下校時間が来たのでこの質問者の群れを押しのけて外に出た。


明日も聞かれるような気もするがもう面倒くさいなぁ……。まぁ星野にああ言ったし、俺が逃げる訳にはいかないか。


後ろを時々確認しながらようやく家に帰れたが過去1疲れたかもしれない。


「お帰りお兄、なんだか珍しく疲れてるね。学校で何かあったの?」


「この前後輩の家に行ったじゃん? その時の光景を見てた人がいてさ、それでその後輩が初めて男の人を家に入れたらしいんだよ。それで俺がその人の彼氏なんじゃっていう噂が流れてる」


「それはまた面倒くさいことになってるね……。お兄ってそういうことに巻き込まれること多いよね、去年のコンビニの時だって、ね?」


コンビニの件に関しては巻き込まれたというか自ら関わりに行ったというのが正しいと思う。俺に関わるメリットなんて何も無かったし普通に危なすぎることだったのだがあの時の俺はそんなことを考えていなかった。


結果論だがあの子は無事だったし、俺も手から血を流した程度だったので何も問題は無いだろう。帰ってきた時に来羽に無茶苦茶怒られたが、まぁ普通に考えて怪我するかもしれないところに自ら関わりに行ったんだから怒るよね。


「いや、本当に反省してるんでご飯抜きだけは勘弁してください。気力を奪われたら学校行けません」


「あの時から怪我をすることには関わってないからいいんだけどさ、兄が帰ってきて怪我した時に気持ちも考えてね。本当に……心配したんだから」


妹を心配させるなんて兄失格だな……。でもあの時はなんで助けたんだろうな、怪我するなんてことは分かりきっていたし、あの場には警察もいた。任せてればいい物を俺は動いた、今なら絶対に関わらない。


「あの子はあの後どうなったの?」


「話したけど名前も何も聞いてないし、嫌いって言われたし多分男性恐怖症なんじゃないかな? だから俺はそれ以上話さずに帰ったよ?」


「じゃあ行方を知らないのかぁ……知ってたら話をしようと思ってたんだけどなぁ」


顔が怖いですよ来羽さん? あの子にあって何を話すかは兄だからわかる。助けてもらったのにお礼をしなかったことの説教だろう。


そういえばあの子は星野に似てるよな、顔はよく見てないから分からないけど嫌いって言ってくるところがそっくりだ。


「彼女……お兄の隣は誰にも譲らないから」


「だから単なる噂だって、できることは無いと思うけど俺に彼女が出来ても来羽は俺の妹だからさ。別に俺の隣は2箇所あるんだ、もう既に片方は来羽で埋まってるよ」


「私の隣もお兄で埋まってる、だからこれからも支え合っていこうね」


俺は来羽の頭を少し乱雑に撫でて自分の部屋に戻った。


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