第5話 兄と妹
土曜日は来羽よりも俺が先に起きる、まぁ今日は予定があるからというのもあるが予定がなくとも土曜日だけは俺の方が先に起きていた。その予定も昼からだしもうちょっと寝ていても問題はないのだがらより先に起きたし、俺が朝ごはんを作るとしよう。
いつものご飯と同じぐらいに作れるかといったら怪しいが別にそこまで料理音痴じゃないしちゃんと口にできるものは作れる。久しぶりに料理をするがちゃんと一般人並の物はできた。
ベーコンと卵、そしてパンを焼いただけだが朝ごはんとしては十分だろう。そろそろ来羽も起きてくるだろうしリビングで待っておくとしよう。
しばらくして来羽が「おはよぉ……お兄」と眠たそうにリビングにやってきた。
「ご飯は作っておいたから早く顔を洗っておいで、後で寝癖も直してあげるから」
「ありがとお兄ー」
顔を洗ってきた来羽と一緒に朝ごはんを食べてから、俺は来羽の寝癖も直す。
「お兄も2人で生活することになった頃より色々上達したね、私の寝癖も直すのもそうだし料理も格段と上手くなってる」
「来羽にそう言って貰えて嬉しいよ、正直2人で生活することが決まった時は俺も不安だったからさ。ちゃんと来羽の面倒を見てあげられるか、とかさ」
俺だって来羽の兄としてしっかりと見守ってやれるか不安だった。4歳差というのは結構大きくて、自分の考えている通りにいかないこともあるのかと思っていたけど、そこは来羽の物分りがよかった。
俺が中2、来羽が小4の時に両親が仕事でいなくなった。それまでは俺が料理をしたりしていたが高校になって忙しくなったから来羽が料理をするようになった。
「大丈夫、お兄はちゃんと私の兄として居れてるよ。面倒もちゃんと見てくれたし、今はその労い」
「ありがとう。それでなんだけど、今日後輩の家に行くんだけど来羽も来る?」
「んー、小鳥遊さんなら行ってたんだけど後輩さんなんでしょ? なら私は行かないかな、2人で楽しんできなよ」
まぁそれが普通の後輩なら楽しめたんだろうけど、相手は俺のことが嫌いな後輩。来羽を連れて行って普段の毒舌を緩和しようとしていたが失敗した、いつも通り嫌われ続けるとしよう。
星野からは時間を伝えられてから何の連絡もないが、前の1件で家の場所はわかっているしわざわざ俺に言うことは何も無いか。
「お兄、遊びに行くのは別にいいけど前みたいに帰ってくるのが遅くならないでね。次遅くなったらどうなるかわかるよね?」
これは来羽がご飯を作ってるからできることなのだが、俺の嫌いな食べ物が朝昼晩全てで出てくる。
「さすがに勘弁して欲しいから遅くならないように気をつけるよ。前も言ったけど俺は何か理由がないと遅れることは無いって、女の子が迷子だったりさ」
「んー、人を助けるお兄は褒められるべきだとは思うよ? でもね私もご飯を作って待ってるんだからさ、遅れるなら連絡くれないかな?」
「あ、すいませんでした」
そういえばあの時は連絡してなかったような気も……。あぁ、助けて遅れたとか言い訳する以前に連絡してない俺が10割悪いことになんで気づかなかったのだろう?
「じゃあ私は朝風呂に行ってくるけど、その後髪を乾かすの任せてもいい?」
「もちろんいいよ、来羽には普段からお世話になってるしそれくらいやってあげるよ」
来羽の髪は長いし自分でやるとなると結構難しいのだろう。男子である俺はそんな入念に乾かすなんてことはしないがやっぱり他人にやって貰った方がいいのだと思う。
俺はちゃんと洗いはするもののタオルで拭くだけでドライヤーを使ったことは無い。たまに来羽に乾かして貰うこともあるが、来羽の時とかかる時間が段違いである。
「お兄はさ、大学生になったらどうするつもりでいる?」
「俺か……。まぁみんなが許してくれるのならバイトをしながら一人暮らしかな、その方が来羽の負担も減るし」
「私は別に負担を減らして欲しいわけじゃない、お兄と一緒に過ごしているのが楽しいしご飯だって作るのが楽しいからやってるだけ。お兄が勝手に私に負担をかけてると思い込まないで」
でも、実際両親にも相談していないし結局は俺の考えってだけだ。来羽が望むなら一人暮らしはせずにこの家にいる、バイトは辞めないけど。
そもそもどこの大学行くかも決まってないしまだ少し先の話だ。
「まぁ先の話だから、それは俺が3年になった時にでもしよう。少なくとも今、来羽の傍から居なくなることはないからさ」
「うん、ありがとうお兄」
改めて守って、面倒を見ていかないと思った、俺の唯一の妹である来羽を。そして久しぶりに来羽の頭を撫でた。
そして部屋に戻って星野の家に行く準備をする。何かお菓子とか持っていきたいのだが向こう2人の好みが分からない以上は下手に嫌いなものを持って行く可能性もある。
まぁ返信される可能性は低いかもしれないけどひとまず聞いてみることにした。
『星野、好きなお菓子とか妹が好きなお菓子とかあるか? 買ってから行こうと思ってるのだが』
返信が来ないと思っていたのだが案外すぐに帰ってきた、珍しい。
『そうですね、駅前のシュークリームだと妹も私も好きなのでお願いしてもいいですか? ちゃんと代金は後で払いますので』
『俺が招かれてる側だからそっちがお金を払う必要は無いよ、買ってくるから2人で仲良く食べてね』
『澄風先輩ってそういうとこだけ律儀ですよね、まぁありがとうございます……』
そういうとこだけって言うのが気になるがまぁいいだろう。スマホを机に置いて財布などを鞄に詰めて準備完了だ。
まだ昼まで時間が結構あるがそれまで勉強して昼を食べたらシュークリームを買いに行くとしよう。
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