第2話 なったものは仕方ないし
呆けている場合ではない。
なぜかわからないが自分の未来は死ぬらしい夢が、ただの夢ではなく事実であることがわかる。
これに関してはもう証明のしようもないが非現実的な話だがわかるものはわかる。
それに、死んだと思ったら気づいた時にはデブの中にいましたとかいう非現実に今絶賛直面中なのだから今更でもある。
つまり、今の自分はこれからどうするかを決めなければならない。
折角生き返った? のだ、わざわざ座して死を待つわけにもいかない。
どうしたものかと顔を上げると、鏡の中の自分と目が合う。
金色の軽くウェーブした髪に丸い顔。
クリームパンのような手とぱっつぱつの胴体とぽよんと出た腹。
むっちむちのハムのような足。
本当にみるも無残な豚。
着ている服だけは無駄に豪華だ。
完全に釣り合っていない。
「これはひどい……」
レオナルド・フォン・プレイステッドは栄えある公爵家の長男である。
貴族の中の貴族であるために全てに祝福されて生まれてきた。
しかし、親に召使に他家の貴族にちやほやされつくされてる間に気づいたら堕落していた。
見た目だけではなくその中身も腐りに腐っていて、家のメイドにセクハラするなんてところから始まり、自分より格の低い貴族や平民へのいじめ。
日々課せられている剣術や魔術や学問をサボり時間を無駄に過ごしてきた。
今では教師や家人からも見放され、社交界ではレオの悪評で持ちきりだ。
まあ、絵にかいたようなクズ人間である。
前の人生では延々親や家にに縛られてゴミのような生き方をしたが、こうも真逆の人間に宿るとは因果なものだ。
極端から極端を経験するのに結局は誰かに殺されるのも癪だ。
それに記憶をさらうと、この世界は戦争やら魔物やら魔術とかいう前世にはなかったものが身近にあるようだ。
以前の私は生き方として暴力を学ぶのを強制されていたのに、世間では暴力なんて否定されるものだった。
「浅見流古流柔術は実戦の武術で、危険を伴ってるために表では使えないし約束稽古しかできないのだ……」
とかいうのが父親の口癖だった。
さも厳かぶった面でふざけたことをぬかしやがると当時も思っていたものだ。
表で出せないような技術になんの価値があるのかさっぱりわからなかったが、この世界なら多少は日の目を見るかもしれない。
倒れていた時に見た記憶では数年後に通うことになる学園でレオ君を殺した奴らに出会うみたいだ。
折角だ。
前世で抑圧されていた欲求を叶えるのと自分が死なないのは上手くつながるようだし好き勝手やってみよう。
さて、ちょっくら人を殺して成り上がってみるか。
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