幕間29 本当は怖い双子勇者と魔王の恋愛Level.1

幕間29


レイナside


「………と、そんな事が有ってあの世界を混沌に陥れたクソバードは滅びたのさ。」


漸く長い長い因縁が終わった祝福されるべき日だ。


まさか、進が呪われた日でも有ったとは思わなかったが…


「私達にそっくりなお祖父ちゃんのお姉さん達にそんな事が有ったなんて…」

「しかも、浦島さんも勇者様だったなんて…」

「ちなみに、その時の魔王が転生した姿が俺だぞ。」

「「や、やっぱり………」」


まぁ、流石に察するよな……


「それで、勇者様達はどうなったんですか!?」

「う、浦島さんも、ど、どうやって、に、人間に、も、戻ったんですか!?」

「どうやって戻ったかって?それこそが、あの双子勇者がこの世界に帰って来れなかった理由さ。」

「えっ………」

「い、一体、な、何を………」


そんなにビクつかないで良いぜ?


簡単に想像できる理由さ………


「自分の命を、魂を犠牲にして進を元の姿に戻したのさ。」


まぁ、どちらかと言うと、強力な封印みたいな物なんだけど………


まぁ、今回は伝わりゃ良いから、コレに関しちゃ黙っとくか………


「それで死んじゃったんですね………」

「───ああ。と言っても、俺が手伝ったから俺が殺した様な物だ。」


其処は基本的に譲らないし、譲るつもりもない。


間違いなく、あの双子勇者達は俺が殺したんだ。


、俺が殺した命なんだ………


「情報量が多過ぎて、感情が追いつかないです………」

「わ、私も………」

「それが当然だろ。それに、話したのは色々と俺が楽になりたかっただけだ。あんまり気にするな………」

「無茶言わないでくださいよ………」

「む、無理難題………」


そうだな………


───まぁ、まだ君達に言ってない事も有るのだが、は別に良いだろう。


一応、君達の身内というか、親戚の名誉の為にも。


流石にドン引きだったな………


★★★★★


進がフェニックスを倒した直後、俺達は動く気力も使い果たして墜ちていった………


派手に墜ちたせいで色々痛かったが、奴を滅ぼせた喜びの方がデカくて気にならなかったのを覚えている………


そんな中、俺を邪魔とばかりにぶっ飛ばして進に近付く奴等が居た。


まぁ、当然あの双子勇者達である………


奴等は泣いていた………


───当然だ、もう進は普通の人間に戻る事が出来ないのだから。


正直、俺はどうでも良かった………


ちょっとだけ、俺と同じ人外になってくれたと嬉しい気持ちも有ったから………


「ねぇ、魔王………」

「お、お願いが、あ、有るの………」


気が付くと、奴等が俺にそんな事を言っていた………


満身創痍の俺に、一体何をしろって………


「「私達の魂を使って、進君を元の人間に戻して!!」

「────────────────は?」


あの時は自分の耳を疑ったよ………


ダメージを喰らい過ぎたせいで、耳が狂っちまったのかとさ………


でも、奴等は正気だった………


正気で狂っていたんだよ、奴等はさ………


「お前等、それが意味する事を理解わかってんのか?」

「うん、当然だよ。」

「し、死ぬって、こ、事でしょ?」


コイツ等が頼んでるのは、自分達の魂をエネルギーソースとして、進のフェニックスの姿を封印する事だろう。


そんな事をすれば死ぬのは当然だ………


────やってる事は、唯の人身御供なのだから。


「仕方ない、手伝ってやる………」


あまり気は進まないが、あの焼き鳥クソバードを倒せたのもコイツ等のお陰だ。


───一応、コイツ等に報いるべきなのだ、俺は。


「しかし、自分の命を使ってまで助けるなんて、流石はお優しい勇者様だな。」


そんな軽口を叩いたのが運命の別れ道だったのだろう。


驚く事に、奴等は────


「ううん、違うよ。」

「わ、私達は、や、優しさで、こ、こんな事をやるんじゃない。」

「じゃあ、何で………ヒッ!!??」


思わず、悲鳴が漏れる………


────それ程までに、奴等の顔は恐ろしかった。


悪霊種である俺が恐怖を覚える程に、奴等は病みに満ちていたのだ………


「進君には元の世界に大切な彼女が居るんだってさ。」

「そ、ソイツを、し、進君から、け、消す事は、で、出来ない………」

「だから、いっぱい急いで考えたの。」

「そ、そして、お、思い付いたの。」

「ソイツと同じ位に、進君の中に私達を刻み込めば良いんだって♪」

「い、一生の傷に、わ、私達がなるの。の、呪いになって、し、進君と、い、一緒になるの♪」


やっと、俺は心の底からコイツ等がやろうとしている事を理解した。


コイツ等は、使という事実で、進を一緒縛り続けるつもりなのだ………


途轍もない呪いを残し、一緒進の心に巣食い続けるつもりなのだ………


────全く、コイツ等を勇者とか言った奴は誰だ?


─────勇者として呼び出した奴は?


──────とんだ化け物じゃないか、下手したらフェニックス以上の。


「カッケェな、お前等………」

「そう?」

「か、可愛らしい、お、乙女心、だ、だと思うけど………」


恐怖も有る、今も心の底から震えが止まらない。


でも、それ以上に格好良いと思ってしまったのだ………


好きな存在に、其処まで入れ込むというその在り方に………


思えば、俺も戦いばかりで、恋とかよく理解わからない概念だった………


俺にとって、そんな風に思えるだろう存在が居るとしたのなら────


「ふっ、そういう事か………」


お前が死ぬ事で自らの恋を貫くというのなら、俺はどんな事をしてでも生きて恋を貫いてみせよう………


ありがとう、双子勇者………


この俺に自覚を与えてくれて………


「さぁ、始めるぞ!!」

「「うん、お願い!!!」」


様々な思惑が絡んだ結果、進は人の姿に戻って今へと至る………


自覚的に、無自覚的に様々な想いと呪いを乗せて………


続く








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