第101話 この世界の神様

第101話


進side


「ふぅ、着いたな………」


やっとの思いで最後の階層へと辿り着く。


モンスター達が出ないダンジョンなど、つまらない洞窟探索でしかない。


「やっと、帰れる………」

「つ、疲れた………」

『ワウ〜ン………』

「まぁまぁ、楽しめたな………」


そうだな、早く此処から出────は?


「陽華ちゃん達、早く遠くへ逃げろ………」

「「えっ?」」

『ワン?』

「良いから逃げろってんだよ!!!」

「「は、はい!!!」」

『キャウン!!』


よし、離れてくれたな………


声を荒げてしまった事は後で謝ろう。


────まぁ、謝れたらの話だが。


「レイナ、遺言とか有るか?」

「そうだな………最後に俺を抱いてくれるか、進?」

「嫌。」

「ちっ、駄目か………」


当たり前だ、バカ魔王………


────そろそろ、来るか。


『やっと、着いた!!お前が我が甥か!!』


────うん、変なのが来た。


甥、今度は甥かぁ………


「おい、見ろよ。あの不審者、お前の叔母を騙ってやがる。頭可笑しいんじゃねぇか?」

「ブーメランって知ってるか、レイナ?」

「さぁ、知らない子だな。投げると返ってくる狩猟やスポーツに使われた武器という事しか知らないねぇよ。」

「うん、十割くらい知ってるな。」


コイツ、事ある毎に棚を上げやがって………


テメェもああいう不審者と同類だからな?


『はじめまして、我が甥よ!!我は夜刀神!!その隣の女は所謂ガールフレンドという奴なのか?隅に置けない奴だなぁ………』

「えへ、義叔母さんったら、照れるじゃないですかぁ………」

「いえ、違うから。コイツは友だ………知り合………唯の他人です。」

「何でどんどんランクダウンさせたんだ!?」


いや、何か口に出すと調子に乗りそうだし、お前………


『ふむ、まぁ色々有るのだろうな。生物の男女の仲は面倒で複雑怪奇と聞くからのう。それはそれとしてだが………』


ジロジロと見てくる叔母を騙る夜刀神。


夜刀神って言ったら、あの蛇神だよな………


印象に残ってるのは5期鬼◯郎の映画ボスなのだが………


今の所、目が爬虫類なだけの普通の女にしか見えない。


────まぁ、ヒシヒシと伝わってくる強さは焼き鳥クソバードに匹敵するが。


『ふむ、格好いいな。流石は我が甥。感じる性質も強く優しい物だ。うむ、どうやらと似る事は無かった様だ。』

「アイツ?」

『ん?朱雀の事に決まってるだろう。』


朱雀………まさか…………!!??


『………もしかして、こう呼んだ方が聞き覚えが有るか?────と。』


そうか、お前────


「〘限界突破重加速オーバーディカプル・ブースト〙!!」 

『む?』

「行け、進!!あのクソアマにぶちかませ!!」

「〘限界突破重火力オーバーディカプル・ファイア〙、不死鳥の一突きフェニックス・スピア・改!!!」


☆☆☆☆☆


『む?』


我が甥が消えた?


いや、この感じは………


「行け、進!!あのクソアマにぶちかませ!!」


ん?何故、急に殺気をぶつけてくるのだ?


しかも、あの女………


よく見ると、あの魂の成り立ち方は………


「〘限界突破重火力オーバーディカプル・ファイア〙、不死鳥の一突きフェニックス・スピア・改!!!」


ふむ、拳が当たったな。


愛しの我が甥の拳だ………


中々に痛い、ちゃんとした強さだ。


に通用する強さを持つ者など、初めて見たな………


勿論、割と居るのだろうが………


『痛たたた、かなり痛い。素晴らしい強さだな、我が甥!!』

「ちっ………」

『そう悔しがる事はない。ちゃんと、お前の拳は我に届いた。』


正直、かなりズキズキしている。


油断していたら、骨を折られていただろう。


朱雀よ、良い息子を持ったな………


『その身体強化魔法も見事な物だった。10重を超え、光速以上の速さで動く事を可能としたのだろう?それは最早、時間停止の域となっているだろう。コレを使われれば、大抵の奴等は勝てないだろうな………』


最も、大分負担が掛かりそうだが、我が甥だから心配は要らないだろう。


それに比べて、他の奴等ときたらのう………


何故、頑張って4重か5重止まりなのだ?


せめて、頑張って7重止まりであって欲しい物だのう………


『それに、其処のガールフレンド。元々は朱雀の世界の住人だろう?最近転移してきている奴等が居るのは知っていたが、お前もその口かのう?』

「………違う、転生してきただけだ。」

『転生?成る程、初めてのケースだのう。それ程までに、何かこの世界に執着でも有ったのか?』


別世界の魂が抜けられる穴など、無かった筈だがのう………


後で確認せねばな………


────何で折角愛しの我が甥に会いに来たというのに、仕事が増えなきゃならんのじゃ。


────やはり、世の中は理不尽に溢れておるのう。


「────お前は何なんだ、夜刀神。」

『ふむ、どういう質問じゃ我が甥よ?』


意図がよく理解わからん………


朱雀の奴も、そう言えばこんな奴じゃったのう………


変な事ばかり言って、我等を困らせておったのう………


────うむ、よくよく考えても理解わからんし、全てを答えるとするか♪


『では、改めて。我は夜刀神、この世界を支える玄武に代わり、実務を担当している神々の一柱じゃ。そして、お前の母親である朱雀の姉でもある。』


これで多分、おそらく、きっと、我が甥の質問に答えられた筈………ん?


「──────────────嘘だろ?」


えっ、何でそんな絶望した顔をしておるのじゃ!?


『えっ、ちょっ、だ、大丈夫か?ちょ、ちょっと休憩するか?だ、誰か、わ、我が甥を誰か助けてくれぬか!!』


続く






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