第99話 魔王と勇者は紙一重
第99話
魔王レイナside
『────まだだ。』
「へぇ………」
良いね、その目………
その目は、進と………陽華達の目だ。
死を自覚しながらも、生を諦めてない勇者の目だ。
成る程、コイツも案外ちゃんとこの世界に伝わる天使をしているらしい………
『────まだ、私は負けていない!!』
「グッド!!最高だ、そうでなきゃなぁ!!」
そうだ、抗え!!
無駄だとしても、抗い続けろ!!
その先には、必ずナニカが産まれる!!
諦めて、諦め続けて、全てを無為にしてしまった俺も、最後の最後で諦めなかったから、運命と出会えた!!
────
『行きますよ、間女!!』
「何時まで死に耐えれるかな、間女!!!」
☆☆☆☆☆
進side
「出てきませんね………」
「だ、大丈夫、な、なんでしょうか、れ、レイナ様?」
『ワンワ………』
心配そうな顔をする陽華ちゃん達。
まぁ、一度とはいえ俺の権能を見てるから、それをモンスターが使ってきたとなると、心配は普通にするか…………
俺が心配してないのは、レイナが必ず勝つと確信してるだけだからな………
「大丈夫だろ、レイナなら。そもそも、どんな権能で創られた世界でも、余程の事が無い限りはアイツに通用しないだろうし………」
「じゃあ、余程の事があったら!?」
「ま、負ける………?」
『ワンワン!!』
「いや、負けねぇよ。その場合は………」
ん?この感じは………
おお、丁度いいタイミングだな………
「見ろ、世界がまた塗り替わった。」
「何かゴム風船みたいに割れてる………」
「か、かと思ったら、ま、また変なのに覆われてる………」
『キャウン………』
ああ、影狼は
あの権能がヤバいって事を本能で感じ取れるのは良い事だと思うぞ?
権能持ちって、大体初見殺しが酷いからな。
「アレがレイナの権能だな。俺が知ってる権能の中で理不尽さNo.1のクソ世界だ。」
「えぇ、そうなんですか!?」
「う、浦島さんのよりも?」
「いや、それはその………」
『ワウン?」
「何というか、結果というか根っこは一緒なんだよ。過程が違うだけで………」
う〜ん、何て説明したら良いのだろうか?
ちょっと面倒なんだよな、アイツの権能を説明するの………
「まぁ、簡単に言うか。奴の世界には死が満ちている。」
「「死?」」
『キャウン!?』
「おお、流石は影狼。その凶悪さが
良い頭してるな、お前………
お前がモンスターじゃなければ、良い大学とかに行けたかもな!
「つまり、あの世界に閉じ込められた=死なんだよ。」
「ひぇっ────」
「り、理不尽────」
『キャウウン────』
ビビるよな、俺も最初はビビったもん………
まぁ、どんな権能にも攻略法はあるものだ。
例えば、相手の権能で塗り替えられた世界を、自分の権能で塗り潰すとかも攻略法の1つだ。
まぁ、そんな事よりも簡単な方法がある。
それは────
「アイツの世界は居続ける限り、死が永遠に襲ってくる。だが、諦めない限りは同時に永遠に生かされるんだよ。」
「生き地獄ですか?」
「そ、そんなのやられたら、こ、心折れちゃいます………」
『キュウ…………』
そうか?
少し死に続けるだけだぞ?
「つまり、諦めなければずっと勝てる可能性も消えないんだよ、アイツの世界。そこら辺は俺の世界と同じだな。」
最も、俺の世界が押し付けるルールは『諦めない事』で、アイツが押し付けるルールは『諦める事』なんだけどな………
「無茶言わないでください………」
「む、無理です………」
『ワウン?』
「『そんな方法で勝った奴が居るのか?』だって?影狼、お前の眼の前に居るだろ。」
『わ、ワウン………』
「化け物!?ひ、酷い言われようだな………」
「「ざ、残当かと………」」
まぁ、権能を使える時点で化け物か。
うん、何の弁論の余地もねぇや………
「くくっ。なら、お前達にもっと怖い話をしてやろうか?」
「「えぇ………」」
『ワウン?』
「俺の知ってる奴の中で、アイツの権能が最初から効かなかった奴が1人居てな。ソイツは俺の権能すらも効かなかった。お互いの権能を重ね合わせるっていう無茶をしないと、戦いの土俵にすら立たせてくれなかったんだよ、ソイツ………」
いやぁ、本当にクソゲーだったよな………
俺とレイナの権能を犠牲にして奴の権能を持って行かなきゃ、俺達の所まで堕ちてくれなかったからな………
それでも、奴との差は広くて………そのせいで、おま………彼女達は死んじまったし。
「インフレが凄い………」
「ば、バトル物?」
『ワンワン!!』
「ははは、奴にとっちゃそんな感じだったのかもな………」
まっ、そんな驕りのせいで、奴は負けたんだけど………
─────ん?
「どうやら、終わったみたいだぞ。」
前を向くと、塗り替えられた世界が元の形へと戻っていく。
其処には、沈黙した駄馬天使の死体と、何処が満足そうなレイナが立っていた………
「楽しかったか、レイナ?」
「おう!最後はめっちゃ楽しかった♪」
「ふっ、良かったな………」
続く
オマケ
①駄馬天使(ユニコーン・エンジェル)の権能
〚
彼女の権能によって顕現する彼女の愛に満ちた世界
この世界のルールは3つ………
①愛しあう者達以外の存在が起こす行動の無効化
②男がこの世界に立ち入った場合は発情化&精力強化が強制的に付与される
③自らによる解除か、ロミジュリる、相思相愛にならない限り、この世界が消滅する事はない(一部例外あり)
という物である
天使化したモンスター達が辿り着く共通なピンク一色の世界。
この世界に閉じ込められたら、間女は死刑、男は結婚の運命を確定させられる。
この力を用いて、かつて異世界に召喚されて猛威を振るった完璧で究極、最強で無敵の竿役な種付けおじさんを人生の墓場へと突き落としたという。
『まぁ、相思相愛なんだから幸せでしょ』という傲慢な考え方、男を全く省みない性質から産まれた物なので、この世界に閉じ込められた時点で地獄に行く覚悟をしておいた方が良いだろう。
────但し、君が愛を欲してやまないのなら、この世界はきっと天使様が導いてくれた天国の様な世界に映るだろう。
②魔王レイナの権能
〚
彼女の権能によって顕現する死に溢れ、誰よりも差別なき平等な終わりを与えられる世界
この世界のルールは3つ………
①この世界に存在する限り、全ての命・その命が生み出す現象は
②この世界に存在する生命体のみにおいて、永続の死を与える為に条件付きな不死性の付与
③諦めない限り、不死性と死のどちらも永続する
という物である
この世界は全てに平等な死という終焉を、生への諦めを押し付ける魔王の在り方が全面的に出ている物で、所々に性格の悪さが出ている
そして、『諦めない事を押し付ける』勇者との権能の相性は最悪で、同時に顕現でもしよう物なら、どちらも消滅する上に致命傷を喰らってしまう
何より、彼女は世界を顕現させなくても権能をある程度行使する事が可能であり、出力こそ落ちてしまうが、自由度は世界を顕現させるよりも高いとの事(トンチンカン達に見せた幻覚や発狂にはコレの後押しが関わっている)
────諦めに満ちた世界でも、諦めなかった男が居た
────どれだけ死に犯されようとも、折れなかった男が居た
────終わりしか道は無かったのに、別の道を切り開いた男が居た
────全てを諦めた女に、全てを諦めずに勝った男が居た
進とレイナ、勇者と魔王の性質が似通ってしまうのは必然であり、運命としか言い様がない。
────例え、それが神による賽の目で産まれた茶番だとしても。
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