第89話 年を取ると、色々と限界が見えてくる

第89話


おお、陽華と影華がステルスオークの頭をぶっ飛ばしたな………


「終わったみたいじゃな、レイナ………」

「みたいだな。というか………」


ん?何じゃ、一体………


「お前、さっきよりもっと老けたな………」

「おや、そうみたいじゃな。どうりで、先程から骨が軋んでおったのか………」

「心なしか爺さん口調になってる。儂もそうなった方が良いかのう、爺さんや。」

「別にしなくても良いじゃろ、婆さんや。」

「「あはははは!!」」


何これ、気持ち悪いのじゃ。


「終わりましたよって、何があったんです!?そんなに笑って………」

「か、仮面さんの方も、な、何か可笑しい。す、少し、いや、かなり、ふ、老けてる?」

「まぁのう。さっきの能力の反動でな、今の儂は100歳位になっちまったのじゃ。」

「草はえるだろ、この姿?」

「自分でもそう思うのう。まぁ、それでも若い者には遅れはとらんよ。骨は痛いし、臓腑共や肺が悲鳴を上げとるが、安心せい。」

「「いや、何処に安心できる要素があるんですか!?」」

「ん?何か言ったかのう?」

「ありゃりゃ、耳が遠くなってやがる。ん?なら、今の内に………俺と進はラブラブおしどり夫婦だぁ!!」

「有り得ない風評被害を流すな、馬鹿者!!」

「それは聞こえるのかよ!?」


全く、年寄りを馬鹿にしよって………


耳が遠くなったからって、何でも言っていいと思ったのか?


考えが甘いわい………


☆☆☆☆☆


「はぁはぁ、疲れるのう………」

「大丈夫ですか、お爺さん………」

「て、手、と、取る?」

「席、譲ってあげようか、爺さん?」


アレから一緒に深層を降りていったが、コレが中々にキツかった。


散々吸ったり飲んだりしたせいで、内側が所々痛い気がする(不死性のせいで病気や障害にはならない筈なのに何故?)し、骨が動く度に軋んでるし、何なら折れてさえいる気もする。


本来の年齢が上がったせいで、反動の老化によるデメリットもかさ増しされたのかのう?


「すまない、苦労をかけるのう。お礼に飴ちゃんをやろう。ゼリー菓子もあるぞ?」

「本格的に田舎の老人になってますよ、浦島さん………」

「か、仮面さん、あ、ありがとうございます。」

「俺、俺には何か無いの!?」

「ははは、忘れていったわ。お主にはお墓をくれてやろう。」

「わ〜い、一緒のお墓に入れてくれるだね♡俺達はちゃんと夫婦、家族だったんだ!!」

「ははは、戯言を。お主の墓はグツグツとマグマが煮えたぎった火口じゃよ。」

「────能力的にそれはお前じゃね?」


急に冷静になるんじゃないぞ、レイナ。


確かに不死鳥は火口で燃え尽きた後に復活するらしいがのう………


────あの焼き鳥クソバードもそんな感じで復活しておらんよな?よな??


「まぁ、茶番は此処までにして、そろそろ休むか。」

「すまんのう、レイナ………」

「気にするな。それに、多分だが外はもう夜だ。」

「夜?こんなに明るいのに………」

「た、太陽は無いのに、ま、真昼の陽気。」


恐らく、不夜なんじゃろうなぁ………


新宿ダンジョンにも、そういう場所があったのう。


例えば、第7階層の砂漠エリアとかがそうじゃ。


「太陽が気になるのか?なら、暗くしてあげよう。」


パチンッ、レイナがそう指を鳴らした瞬間、世界は逆転した────


「えっ、夜になった!?」

「つ、月が在る!?何で!?」


おお、随分様変わりしたのう………


まるで、此処が先程まで洞窟みたいだった場所とは思えんわい………


流石としか言い様がないのう、レイナの能力は………


「コレ、どうなってるんですか!?」

「レイナがそう見せてるだけじゃ、気にせんで良い。それよりも、早く寝支度の準備をしよう。誰が見張りをやる?」

「そうだな。俺と進の交代交代で良いんじゃないか?」

「そうじゃな、そうしようか………」


はて、テントは何処にしまったかのう………


「いや、見せてるってどういう事ですか!?」

「ん?レイナは単純な力も魔法も凄いが、コイツの力の本質は強力な精神汚染と認識汚染(ミーム汚染も含む)じゃ。それに+a権能も加わってエグい事になっとるがな………」

「え、SCP………」


まぁ、間違ってはないのう………


SCP財団に目を付けられたら、コイツは間違いなく世界終焉シナリオを起こしかねないKeterオブジェクトじゃよ。


「正に、魔王って感じの力だろう?さぁ、早く寝る準備をしようぜ………」


続く


☆☆☆☆☆


オマケ

【寝るまでの一時】


「いや、最初にお前が見張りをやってくれるのは良いのじゃが………」

「ん?どうした、進?」

「儂を埋める必要があったかのう!?」


埋めた後にガチガチに硬めたせいで、身動きが取れんのじゃが!?


「いやぁ、だって唯一の男だし、仕方がないだろ?」

「なら、普通に離れた所にテントを建てるだけで良かったじゃろ!?」

「よ、夜這いに来るかもしれないし♡」

「せんわ!!というか、反動のせいでそんな欲求は枯れ果てるしのう!!」

「えっ、勃たないの?」

「おう!というか、儂は色々あったせいで、好きな相手と朝にしか勃たんわい!!」

「えっ!?じゃあ、俺には勃ててくれたって事なの♡」

「お主、一回耳鼻科行って来い!!」


終わり

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