第88話 本番

第88話


「はぁはぁ、疲れた………」

「し、死ぬ、死ぬかと、お、思った………」


鏡花水月の皆にやった時の様に、俺の権能でしっかりと鍛えてあげた。


まぁ、そのせいでかなり瀕死ってるが、必要経費だろう。


「相変わらず、マジでエグ過ぎじゃないか、お前の〚世界改変ワールド・エンド〛は………」

「お前に言われたかねぇよ………」


お前の〚世界改変ワールド・エンド〛は質が悪過ぎるんだよ。


心をバキバキに折る為だけに在るとか言われたら、素直に信じるレベルだぞ?


正に、だよ………


「うっ、今回は老化の方か………」

「おお、白髪増えてんな………」

「見た目はな、中身の方がキツい。」


ほんの少しだけ骨だけが軋んでるし、内蔵が悲鳴上げてるし、息がちょっと上がってる。


はぁはぁ、老けた時の疲労度って目茶苦茶凄いんだよなぁ………


老いには勝てないって、マジだと思い知らされるよ、毎回………


まぁ、今は老けた俺よりも………


「どうだ、お前等。使い方はしっかりと覚えられたか?」

「あれだけお膳立てされて、覚えない方が無理ですよ………」

「い、以下、ど、同文…………」

「ははは、道理だな。」


いや、その通りなんだけどさ、そんな恨みがましい顔で見ないでくれよ………


そもそも、強くなるのをのはお前等なんだぜ?



────だから、俺は悪くない。


「────来たな。」

「────みたいだな。どうやら、かなりのセッカチさんみたいだぜ?」

「どういう事です?」

「────影華、敵!!」

『グルルルル!!』


シャドーウルフが吠えた先には何も居なかった。


────いや、居ない様に見えていると言った方が正しいだろう。


『み、み、み、見つ、見つ、見つ、けた、けた、けた!!!』


コイツは突然、姿を現した。


豚の様な人型のモンスターだし、オークの亜種か?


透明化が出来るタイプのモンスターか、でもハイドエレファントの様に綺麗に隠れ過ぎてる奴だな………


「アレはステルスオークだな。」

「やっぱり、オークの亜種か。」

「ああ、強さはエンペラーオークと同じ位の強者なのに、搦手を好む下衆野郎だ。」

「────ブーメランって知ってるか?」


お前も大体そうじゃねぇか………


「俺は搦手特化が努力して強くなったタイプだ、一緒にするな………」

「お前を知ってる奴は全員同類判定すると思うんだが………」


────まぁ、ここら辺にしておくか。


「折角だ、俺以外の敵も相手してみるか?」

「「はい!!」」

『ワオ〜〜〜ン!!』


☆☆☆☆☆


影華side


「陽華、多分私だけコイツが隠れてるの理解わからなかったから、透明になったら場所を教えて!!」

「了解!!」

「影狼は奴を翻弄して隙を作って!!」

『ワン!!』


その言葉に頷く様に吠えた後、影狼はステルスオーク目掛けて駆けていく。


『グルルルル!!』

『うろ、うろ、うろ、ちょろ、ちょろ、ちょろ、するな!!!』

『ヘッヘッヘ♪』


素早い動きでステルスオークの周囲を走り回り、攻撃を躱しまくる影狼。


ちょっと前の私達なら全く軌道が見えなかった筈の攻撃が、今ではスローモーションに見えてしまう。


あの進って人、強過ぎでしょ………


何でEX探索者になってないんだろう?


「豚、貴方の敵は影狼だけ、じゃない。」

『女、女、女ァァァァァァ!!!』


いや、テンションの上がり方が異常でしょ!!


そんなに女が近付いてくる事が嬉しいの!?


「喰らえ、グリフォン・ストラッシュ!!」

『斬、斬、斬、撃、撃、撃!!??』


よし、喰らった!!


これなら、もうアイツは終わりね………


「油断するな、影華ちゃん!!ソイツも馬鹿じゃねぇぞ!!」

「────えっ!?」


進さんがそう叫んだのが瞬間、私は驚くべき光景を見た。


『邪、邪、邪、魔、魔、魔!!』


陽華が飛ばした斬撃で斬られた腕の部分から侵食する様に、ステルスオークの身体は浄化されていた。


このまま行けば、やがてステルスオーク全てを浄化しきるだろう。


その事実を知っていたのか、野生の勘なのだろうか?


奴は何と浄化しきる前に、自分の部位を千切り外した。


『うわぁ、覚悟決まってる………』


そう簡単に肩を握り潰して千切るとか、出来ないでしょ………


オークだから勝手に脳筋だと思ってたけど、普通に頭回るのね………


『許、許、許、さない、さない、さない!!』


そう叫んだ瞬間、奴は姿を消した。


ちっ、姿を消されたら私じゃ全然場所が理解わからないなぁ………


「影華ちゃん、右!」

「了解、〘射撃シュート〙!!」


私の武器から離れた魔力弾は、完璧にステルスオークの身体を貫いた。


姿が見えなかったので、心臓を貫く事は出来なかったが、良い仕事はした筈だ。


多分、きっと、Maybe………


『な、な、な、ぜ、ぜ、ぜ?』


もしかして、影華がお前の場所が理解わかる事?


さぁ、私にもさっぱり!


でも、その陽華のお陰で貴方の場所は全部まるっとお見通しだよ♪


(死ねよ…………)

「ちっ、また煩いのが来た………」

(死ねよ、何で生きてるんだよ?お前なんか唯の偽物だろう?)


はぁ、本当に面倒な幻聴………


しかも、私が作り出した物だから、妙に痛い所を突いてくるのが鬱陶しいわね………


『ワン、ワンワン!!』

『見え、見え、見え、ない、ない、ない!?』


ナイス、目潰しだよ影狼!!


なら、後は────


「「チェックメイトだ、豚野郎!!」」


さっさと、地獄に落ちろ!!


続く

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