第78話 最強へのオファー
第78話
???side
「諸君、我等の世界にはダンジョンが溢れ返り、モンスターが存在する世界になった!」
薄暗い広場の中、燃え盛る火の前に立つ男がそう叫ぶ。
「モンスターは友を、家族を、恋人を殺し、我等から全てを奪い尽くす程に暴れ回る存在だ!」
黒いローブを着ているせいで、どの様な容貌をしているかは分からない。
だが、その言葉に怒りが乗っている事だけははっきりと伝わってきた。
「さぁ、我等の怒りを思い知らせてやれ!そして、全てのモンスターをこの世界から駆逐してやるのだ!!」
そして、その為に………
「迎えに行こう、我等の光の勇者を!」
☆☆☆☆☆
進side
────新宿ダンジョン深層第2階層にて。
「くそっ、俺にも手伝わせろよ………」
「仕方ないさ、君はこのダンジョンに住んではいるけど、基本的にゲストなんだよ。」
皆が頑張ってダンジョンを復興している中、俺は人間とダラダラしていた。
どうやら、コイツは俺のお目付け役らしい。
何で他の奴等が階層の垣根を越えて協力してるのに、俺は手伝っちゃ駄目なんだよ………
「ほら、いじけない。2人でダラダラしていよう?」
「はぁ、しょうがないな………」
大百足を殺してくれたお礼として持ってこられた酒や食べ物を口にしながら、俺達は月ちゃんの過去の配信を見ていた。
他の鏡花水月とメンバーと会って、その子達の配信も見る様になった。
しかし、どれだけ時間をかけても未だに全動画を消化しきれていない。
そして、それ以上に俺が、俺達が悩んでいる事がある。
それは────
「何でスパチャが出来ないんだろうな?」
「違法視聴だからね、ネットに繋がってる訳でもないし。」
「くっ!!」
「くっ、じゃないよ。君、スマホはアリスちゃん達に持たされたんだろう?」
「そうだけどさ、電話とRAINしか使ってないんだよ。」
色々と申し訳なくてさ………
動画見たり、ソシャゲしたり、それ以外の機能を使ったりするの、かなり気が引けるんだよね………
後、最新機器のスマホらしいのに、何か重いんだよね………
本当に何でなんだろう?
「やぁ、元気してるかい?」
そんな中、俺達に声を掛けてくる奴が現れた。
この声は────
「ん?何だ、如月か………」
「傷は癒えたのかい、星熊童子君?」
「勿論。まぁ、ギリギリの所だったらしいけどね。治ったから、親友の進に挨拶しに来たんだよ。」
コイツは第19階層のボスモンスター、星熊童子。
「親しみを込めて、如月君と呼んでくれ」とか吐かすアホ鬼だ。
あの大百足が暴れたせいで四肢が吹っ飛んだと聞いていたが、もう完全に治ってるみたいだ。
鬼種の魔人族もタフだったし、そこら辺は流石である。
「お前も見るかい、配信。」
「ああ、外の人がやっている催しか。俺的には目茶苦茶興味があるが、今回はそんな余裕はないんだ。」
コイツ、何時も以上に真面目だな。
大百足に殺られかけてから、思う所でもあったのだろうか?
「────人間、第20階層のボスモンスターに君を推薦したいんだけど、良いかい?」
☆☆☆☆☆
「断って良かったのか、人間?」
「良いんだよ、別に。」
少しだけ、嫌そうな顔をしながら人間はそう告げる。
そこまで嫌がる事かねぇ………
「お前、条件さえ合えば大百足より強い癖に、何が嫌なんだよ?」
「その条件付きの強さが嫌なんだよ、私は。素の私の強さな訳じゃないじゃないか。」
「充分、お前の強さとは思うがな………」
変な所で真面目だな、お前は………
「条件が合った時の私の強さは、罪人にさえ向けられれば満足だよ、私は。」
「まぁ、お前がそれで良いなら、俺はもうとやかく言わねぇよ。」
「そうしてくれたまえ。」
でも、勿体ないなぁ………
いや、本当に勿体ないなぁ………
コイツ、目茶苦茶強いのになぁ………
「それよりも、仕事の時間みたいだよ、浦島君。」
「仕事?」
「深層の入口に誰か来たみたいだ、この感じは2人かな?いや、もう1匹モンスターが居るみたいだね。しかも、敵対している感じがないな。下層の奴等に人間と仲良くする理性も知性も無い筈だから、コレは………」
成る程、珍しい奴等が来たようだな。
「
「珍しいね、そういうのは………」
「異世界でも珍しい奴だったよ………」
モンスターを従えてるせいで、色々と白い目で見られてる不遇な奴等だったからな………
よし、急いでそいつ等に会いに行くか!
「じゃあ、行ってくる!」
「ああ、行ってらっしゃい。」
はは、待ってろよ、
続く
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