幕間19 曾祖母と曾孫

幕間19


月(三日月)side


「はぁはぁ、つ、強い………」


駄目だ、全く手も足も出せなかった………


「強くなりましたね、三日月。私に攻撃を掠らせるとは………」


そんな風に微笑みながら、曾祖母ちゃんは私にそう告げた………


褒めてくれるのは嬉しいけど………


「一回だけじゃん!それ以降は全く当たってくれないし………」

「当然です。私、この日本でですからね。」

「むぅ、またソレだ………」


曾祖母ちゃん、日本のEX探索者の中で最強なのに………


────なのに、いつも2番目だとか言うんだよね。


曾祖母ちゃんに勝てそうな人なんて、日本中を探しても居な………


────浦島さんなら勝てるかも?


いや、どうだろう………


「どうかしましたか?」

「あっ、ううん!何でもないよ!!」

「なら、良いのですが………」


────勢いで誤魔化したけど、実際の所はどうなんだろう?


今度、曾祖母ちゃんに紹介してみようかな?


「────配信、頑張っているみたいですね。」

「えっ?」

「私は見れないけれど、貴方達が頑張っている声は聞いています。全ての動画も視聴済で、何ならよくスパチャもしてますよ。」

「そうなの!?」


初めて知ったよ、曾祖母ちゃん!?


というか、目が見えないのに、配信を見るとか大丈夫なの?


音声だけで楽しめる様にはやってないのに、全部見てくれるなんて………


「────それで、1つ聞きたい事があるのですよ、三日月。」

「何、曾祖母ちゃん?」

「あの浦島という人はいつ、貴方を娶りに来る挨拶をしてくれるのですか?」

「はい!!!!!!??????」


えっ?


………えっ!?


ひ、曾祖母ちゃん、な、何を言ってるの!!??


「あの声、妙に下腹部に響くのよね………」

「えっ、それ大丈夫?何かの病気?見た目は兎も角として、もう歳なんだから………」

「────コレは私の表現が悪かったわね。病気じゃないから、安心して。」

「う、うん………」


でも、心配なんだよなぁ………


曾祖母ちゃん、もう75歳なんだよ?


見た目、20代前半だけどさ………



「それはそれとして、彼は強いんでしょう?」

「うん!もうビックリする位に!!」

「やっぱりね。ふふ、益々良いわね。好きなタイプも曾孫だから似ているのかしら?名前も丁度だし、運命みたいな物なのかもね………」


あっ、ヤバい。


曾祖母ちゃんが、って名前を出すと話が目茶苦茶長くなるんだ!!


「じゃあ、コレから鏡花水月の皆と打ち上げあるから!」

「あっ、まだ冒頭も話せて………」


長文一万文字レベルの冒頭なんて、もう二度と聞きたくないよ!!


☆☆☆☆☆


???side


「はぁ………」


三日月、行ってしまいましたね………


私と彼のLOVE×STORYを聞いて欲しかったのに………


「シー君、貴方は今何処に居るの?」


私はずっと貴方が帰ってくるのを待っているわ。


ずっと、死ぬまで、ずっと………


────だから、姿になったの。


「私、もう曾祖母ちゃんになっちゃいましたよ?」


まさか、避妊が失敗して貴方の息子を孕んでしまって、その子が孫を作って、孫が曾孫の三日月を産んだ。


貴方の血はちゃんと繋がっているのに、肝心な貴方が居ない。


「待っていますからね、シー君………」


早く帰ってきて、貴方の独壇場セカイを私に見せてくださいね。


続く

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