幕間17 かつての記憶 魔王の慟哭
幕間17
魔王レイナside
「かつての魔人族は肌が青いだけの人族に近い種族だった………」
唯、それだけの種族だったのだ………
それなのに………
「それだけで人族は俺達を滅ぼそうとした。モンスターみたいだからという、理不尽な理由でだ。」
酷い話だ、胸糞悪いにも程がある。
「俺達は人族によって、滅ぼされる寸前まで行った。当時の魔人族の男は惨殺、女は肉奴隷、見るも無惨な有り様だった。」
酷い所では、俺達を殺す事を遊戯扱いしていたらしい。
命は玩具じゃないというのに………
「────でも、ある日突然に理不尽は覆された。」
あの時、彼等は喜んだだろうなぁ………
理不尽に抗える力を手に入れたのだから。
それこそが、奴の目的だったのに………
「俺達魔人族は、本当にモンスターの力を手に入れたのさ。最初はスライムだけだったみたいだが、多種多様に増えていった。そうやって、
皮肉な話だよな………
モンスターみたいと迫害されていた種族が、本当にモンスターの力を手に入れた途端、理不尽を何とか出来る様になったのだ………
「まぁ、それは全部焼き鳥クソバードの自作自演だった訳だが………」
何年、こんなくだらない戦争を続けたのだろうか?
何年、掌で踊らされ続けたのだろうか?
人族が迫害する様になったのも焼き鳥クソバードのせい、俺達が抗える力を手に入れたのもそうだ。
だが、戦争がこんなにも続いたのは………
「────誰が悪いんだろうな?」
────よし、独り言終わり!
「済まなかったな、俺達の都合に付き合わせてしまって。」
「────良いよ、別に。勇者として戦うと決めた時点で、俺も当事者だ。」
「はは、そうだな………」
俺は諦めていた………
────もう終わらない物だと、心の底から諦めていた。
でも、それをお前は………
「お前のお陰だ。お前のお陰で不死鳥を地獄に落とせた。凍ったまま、永遠の牢獄に閉じ込められた時間が動き始めた。全て、お前のお陰なんだ………」
これで、どうしようもなく歴史は動く。
────あの日、歯車は壊された。
なら、やるべき事は唯1つ。
「さぁ、このクソみたいな戦いを終わらせようか!」
「ああ、さっさと決着を着けよう!」
「「〚
☆☆☆☆☆
「はは、負けた負けた!もう、どうしようもない位に負けたなぁ!!」
「はぁはぁ、その割には嬉しそうだな。」
「そりゃそうだ、これで全部終わるんだからな!!」
ヤバいなぁ、本当に死ぬぞ、コレ………
でも、嬉しいなぁ………
俺の死をもって、やっとクソみたいな戦いが終わる。
やっと、皆に平和な未来が来る………
「なぁ、最後に1つだけ頼みがあるんだが、良いか?」
「────何だよ、レイナ?俺に出来る事ならやってやるから、言ってみろ。」
「俺を抱いてくれるか?」
「ぶっ!?な、何言ってるんだ、お前!!??」
良いじゃないか、それ位さぁ………
────だって、これから始まる幸福な未来に俺は居られないんだぜ?
「アレか?元の世界か、この世界に恋人が居るから無理ってか?」
「ああ、そうだよ!だから、無理だ!!」
「じゃあ、キス!キスだけ!!」
「いや、それも………」
「お願い、お願いだよ、シン!一生のお願いだから、俺にキスしてくれよ!!俺とお前の仲だろ?」
このままだと、命尽きるまで全力で駄々捏ねてやるからな!
「────ああ、もう!やってやる、やってやるから大人しくしろ、見苦しい!!」
「やったぁ!大好きだぜ、シン!!」
「やめろ、こんな時にメスみたいな顔を見せるな!調子狂うわ!!」
少しずつ、シンが近付いてくる。
そして、私の唇に軽く口吻をし………
「ええ、それだけ?」
「これだけで我慢しとけ。それ以上は絶対にやらんからな!!」
「ちえっ………」
まぁ、これで良いか。
充分、手に入れられたし………
「なぁ、お前の恋人ってどんな奴なんだ?」
「死にそうな時に聞く話か?」
「良いじゃねぇか、恋バナ。ずっと、俺がしたかった事だからな!普通の女の子みたいに在りたかった事だからな………」
「────はぁ、ズルいな。恋人は俺の幼馴染だよ。昔からずっと、一緒に居たんだ。」
「へぇ、それは良い事を聞いた………」
「良い事か、コレ?」
「良い事さ………」
幼馴染か、それも良いね………
勇者と魔王の関係と同じ位に良い。
なら、なってみようかな………
────シンと幼馴染に。
「────そろそろ死にそうだ。」
「────じゃあな、レイナ。」
「おう!またな、シン!!」
☆☆☆☆☆
???side
かつて、魔王が住んでいる城が在りました。
其処は勇者と魔王の戦いにて消滅し、その場には彼女が眠る墓しか残らなかった。
────それは、その墓が月明かりに照らされていたある日の事だった。
「はぁ、良い目醒めだ。我の母と父の出会いもこんな夜だったかな?」
続く
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