異世界に召喚され帰還した元勇者、帰還したら50年も経ってて浦島った上に現実世界もファンタジーに侵食されてた件〜しかも、いつの間にかダンジョンの番人扱いまでされてるオマケ付き〜
幕間16 かつての記憶 聖女の懺悔/賢者の我が儘
幕間16 かつての記憶 聖女の懺悔/賢者の我が儘
幕間16
スピカside
「神よ、卑しい私をお許しください………」
聖堂にて、私は神に懺悔した。
「私は、彼に恋をしてしまいました………」
それは、本来は許されない物です。
私は彼等をこの世界へと拉致し、戦闘を強要した悪女に他なりません。
私は加害者で、彼は被害者。
結ばれる訳がない2人で、結ばれるとしたら物語の中でしか有り得ないでしょう。
「だからこそ、私はリンさんの甘言に乗ってしまいました………」
どれだけ罪悪感を抱こうとも、私は所詮卑しい女でしかなかったのです。
どうしようもなく、彼が居たという証拠が欲しくなってしまったのです。
彼が遺した英雄譚でも、詩でも、絵画でもなく、形のある愛が欲しくなってしまったのです。
「陽華に影華、貴方達の言った通りになってしまいましたね………」
どうせなら、彼女達とも同じ様に彼との子を抱きたかったですね………
「────覚悟は決めました。私は悪女、彼を苦しめ続けた毒婦。なら、それを貫き通してみせましょう。」
唯のスピカ・ドラグニスとして、愛され様なんて虫の良い話なのだ。
「民達は私の事を最高最善の聖女様と言いますが、今の私は最低最悪の聖女様なのでしょうね………」
我欲の為に、また彼へ無理難題を強要しようとしている。
────でも、それが何なのでしょうか?
「クソアマ聖女、でしたか?昔はよく貴方にそう言われましたものね………」
一度吐いた言葉を飲み込むのは恥ずべき行為ですよね、勇者様。
貴方が私にそう言ったのだから、私は最後までその通りにしてあげましょう。
「愛しています、勇者様。例え、貴方が私にどんな感情を向けようと愛しています。」
────しかし、少し残念です。
どうせなら、意識を保ったまま、混じり合いたかったですね………
昔見た、あの黒い剛直に────
「きゃっ♡」
☆☆☆☆☆☆
リンside
「嫌だ!嫌だ!!嫌だよ、勇者君!!!!」
「う、煩い………」
煩いって、何だよ勇者君!!
僕が恥を捨てて駄々をこねているのに、君は邪険にするのかい?
「いや、俺は普通に帰るからな。」
「嫌だ!!!!」
「そんな事を言われても………」
「鬼畜!鬼畜勇者め!そうやって、僕を捨てるんだね!要らなくなったら、ポイって紙くずみたいにさ!!」
「人聞きの悪い事を言うなよ………」
「いいや、絶対にそうだ!僕達を穢した癖にポイ捨てする気なんだぁ!!!」
「お前、何かヤッたか?」
「感情を増幅させる魔法使ったんだよ!!そうじゃないと、こんな恥ずかしい事なんか出来ないじゃないか!!」
「お、おう………」
そこまでしたのに、何で帰るんだよう!!
もっと一緒に居ようよ!!
だって、君………君はもう…………
「────何度言っても俺は帰る。待たせてる奴が居るからな。」
「待たせてる人!?初耳、初耳だよ!!か、家族だよね?か、家族の事なら仕方が────」
「家族もそうだが、俺の彼女だよ。大切な幼馴染でもあるんだけどな………」
「────は?」
本当に初耳だよ………
君と愛し合っている存在が居るなんて、知らなかった………
────知りたくなかった。
「────はぁ、もう良い。君が諦めないのは僕達がよく識っている。そして、いつも折れるのは僕達だ。」
「すまんな………」
「別に良いよ、勇者君………」
────プランを書き換えるだけだから。
愛し合っている人が居る………
────だから、どうした?
彼が帰るまでに色々と奪って、それで心の中でマウントを取ってやれば良い。
いや、その上で僕達が彼の世界にに行ってやれば良いのた。
その時、こう言ってやろう………
「貴方と一緒に居ない間、僕達も愛して貰いました」、ってね………
「ふふ………」
「急に笑って気持ち悪いぞ、リン。」
「いやぁ、良い事を思いついてね………」
「お前が思いつく良い事が良かった示しが無いんだが?」
「今回は大丈夫だよ………」
やる事がいっぱいだね………
安定したゲートの開門、時系列の帳尻、別世界での身の振り方………
考えなきゃいけない事がいっぱいで、僕の残りの寿命で足りるか
「皆も誘わないとですね………」
仲間外れは可哀想だからね………
────皆には共犯になってもらわないと。
「さぁ、最高の八つ当たりを始めようか!」
「誰にするつもりだよ、お前………」
「さぁ、誰にだろうね?」
「────程々にな?」
「ふふ、勿論さ………」
────言い付け通りに出来るかは、保証しないけどね♪
続く
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