幕間15 かつての記憶 戦乙女達の思惑

幕間15


アリスside


「今日で最後、か………」


私は1人でジュースを飲みながら、そう呟いた。


勇者様や他の皆は、私と分かれて一緒に酒を飲んでいる。


酒を飲むのは早い、タバコは駄目。


そんな理由で仲間ハズレにするのだ。


勿論、勇者様達が正しいのは理解わかってるつもりだ。


だって、私はもう小学5年生………後少しで小学校を卒業するお姉さんなのだから。


それに今回は………


「や、やっと、寝てくれました………」

「全く、最後の最後まで手こずらせてくれるね、このモルモットは………」


────ちゃんと、私も仲間に入れてくれるみたいだから。


☆☆☆☆☆


「皆、聞いてくれ!」

「何ですか、リンさん?」

「どうしたの、リン?」


久しぶりに勇者様と離れて寝る事になったある日、賢者様がいきなり叫んだ。


こういう時の賢者様は、大分変な事を言うのだ。


賢者様がやる面白いけど、後で勇者様に怒られる事が多いから、ちょっと困るのだ………


「僕は勇者君の子供を孕む事にした!!」

「何を言ってるんですか、貴方!?」

「?」


賢者様の言っている意味が理解わからない。


孕むって、どういう意味だろう?


でも、聖女様が驚いてるから、また駄目な事なのかな?


「そもそも、勇者様は後数ヶ月で元の世界に帰るのですよ!?そんな無責任な事を………」

「それがどうした!私は勇者君の子供を孕みたいという欲望のまま動くだけだ!」

「えぇ………」

「それに嫌なんだよ!!」

「嫌?」

「勇者君が別の女と結ばれるなんて嫌だ!別の女を孕ませて子供を産ませるのを想像しただけで吐き気がしてくる!!そこから、仲良く老後まで過ごすとか、全く許せる気がしないんだよ、私は!!!というか、それは君も同じだろう、聖女様………いや、スピカ?」

「そ、それは………」


何か白熱してる………


一体、何を話してるのだろう………


「勇者君は絶対に諦めない男だ!帰ると決めたら、僕達が泣き喚こうと絶対に帰る男だ。

泥棒猫に掻っ攫われる未来が見えているのなら、それに抗わない方がイかれてる筈さ!」

「いや、イかれてるのは貴方ですし、そこら辺は全く擁護できないのですが………」

「黙れ、人を傷付ける事しか出来ない正論なんて聞く意味が無い!!」

「賢者様、意味がよく理解わからないけど、目茶苦茶を言ってるのは理解わかるよ。」


それに、賢者は結局何が言いたいのだろう?


子供って、あの子供?


男の人とキスすると、コウノトリがキャベツ畑から持ってきてくれるって奴?


「僕とスピカはもう二度と勇者君に会えない。同じ世界に帰れる分、個人的にはアリスと結ばれて欲しいけど、勇者君は幼女趣味ロリコンじゃない。僕達3人は絶対に彼と結ばれない運命にあるんだよ、クソッタレな運命にね!」


結ばれない………


それって…………


「私、勇者様の彼女になれないって事?」

「そうさ。彼女、恋人、愛人、妻、その全ての可能性を潰された訳さ!」

「リン!貴方、アリスにはっきり言い過ぎよ!」

「事実さ!それに、その事実にもっとも苦しんでるのは君だろう、スピカ!君には罪悪感もあるだろうからね………」

「そ、それは………」


聖女様は黙ってしまった………


確かに、聖女様は勇者様の知らない所でよく泣いて謝っていた………


私が理由を聞くと、「私は勇者様を勇者様にしてしまいた。その罪は、決して許されるべき物ではないのです。それなのに………」と言っていた。


「だからこそ、このクソみたいな運命をひっくり返す!勇者君は必ず元の世界へ帰るという結末は変わらないとしても!!僕達と彼の間に確かな物が残るという過程を増やしてみせる!!」


賢者様の覚悟がヒシヒシと伝わってきた。


────その姿は、諦めずに死にものぐるいで戦っていた勇者様の様だった。


「この行為は外道そのものだろう。だが、僕は気にしない。どうせ、僕はクソアマエルフなんだからね!だからこそ、君達に僕は問いかけよう………」


その言葉は、正しく………


「────に乗る気はあるかい?」


続く




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