第77話 皆は大体知ってたと思う
第77話
『あっ、えっと、わ、私は戦刃 陽華です!同じ勇者として宜しくお願いします!』
『私は影華、宜しく………』
『………………………………………ああ。』
思えば、こんな出会いだった………
まぁ、その後に俺のステータスやスキルがゴミだと判明し、テンプレ通りに追放され、俺と再会するのはその1年後くらいとなった。
追放された先は怪物しか居ない場所で、身体を硬くする【硬化】や斬撃を放てる【
身体強化魔法の適正しか無かった俺は、なぶり殺されるしかなかった。
しかし、何故か俺は生きていた。
後で知った事だが、俺を追放する前に不死鳥の涙を盛っていたらしい………
で、それで得た不死性で俺は龍種の中で一番弱いグランドドラゴンの胃の中で消化される気分を味わいながら、抗い続けた。
そして────
『よ、良かった!い、生きてた!進君生きてたよ!!!』
『………良かった、死んでなかった。』
『………お前達はあの時の奴等か?』
内側からやっとの思いで殺した時、この双子勇者と再会した。
どうやら、外と中で2重に攻撃されていたらしい。
まぁ、その後直ぐに………
『って、きゃあ!!何で裸なんですか!!』
『ぶへっ!?』
『おお、大きい………』
『影華ちゃん!?そんなマジマジと見ない!!』
『くっ、残当だから怒れねぇ………』
胃液でとうの昔に服は溶けてたので、生まれたままの姿で再会してしまったのだ。
で、赤面した陽華に殴られ、派手に吹き飛ばされた。
めっちゃ痛かったが、胃液で溶かされる痛みよりはマシだった。
『お久しぶりですね、進様。』
『お前は────』
眼の前に俺を異世界に転移させた女が立っていた。
それが俺の仲間である聖女様、スピカ様だった。
最初、俺達の仲は最悪でしかなかった。
俺達の関係は言うとするなら、被害者と加害者。
俺の中で、特に許せない存在だったのだ。
『止めて、進君!!』
『どうして止める!!俺はコイツのせいでこんな世界に!!お前等だってそうだろうが!!!』
『────駄目、少しだけ話を聞いて。』
『はぁ?俺の話を聞かずに追い出したのは、この女達だろうが!!!』
この時、初めて本気で俺は人を殺そうと思った。
全力で彼女達に戦いを挑み………
────完全に敗北した。
☆☆☆☆☆
「はぁ、此処に居ると嫌な思い出が頭の中で湧いてきますね………」
「なら、来なきゃ良かったろ。」
「それでも、彼女達との大切な思い出ですからね。忘れない為にも、私を縛り続ける為にも必要ですよ。」
「難儀な奴………」
「貴方に言われたくありませんよ………」
────さて、そろそろ帰りますか。
「帰るのか?」
「ええ。これからどうします?また飲みますか?」
「そうだな………あ!」
「どうかしました?」
「1つ、この双子勇者に伝えるのを忘れてた事があるんだ。」
ええ、何か嫌な予感がするんですけど?
「いえ〜い、見てるかぁ双子勇者!お前達が望んだ結末を物語は迎えたぞ!!満足したか?してるよな。してないなら、もう一回殺してやるからな!」
「レイナ………」
「俺は魔王として、進は勇者としての責務を果たした。お前達が居なければ確実に訪れない未来だった。だからこそ、心の底から俺はお前達に感謝する。」
レイナは墓に向って、丁寧に頭を下げる。
────初めて見るよ、お前のそんな姿。
「────ありがとう。」
「律儀な人ですね………」
「お前に言われたくない………」
「なら、お互い様ですね♪」
「ふっ、だな!」
☆☆☆☆☆
魔王レイナside
「ん?」
墓場から帰る途中、知っている顔とすれ違った。
確か、此処はダンジョンが初めて発生した時に死んだ人達(推定も含む)用の墓地だったな。
そりゃ、あの男も来るか………
「どうかしました?」
「────いや、何も。」
コイツは気が付いてないのだろうか?
─────気が付いてないんだろうな。
月という娘がどんな娘なのかも気が付いてないのだから………
「鈍感め………」
「はい!?私は敏感ですよ!!女の姿は色々な所が特に!!」
「お前、俺達の下ネタを咎める割には、大好きだよな、そういうの………」
「はい!何なら異世界に染まったせいで、無意識にセクハラしちゃう様になりました!」
「えぇ………」
色々と心配になってくるぞ、コイツ?
そういうのは、異世界でも此方でもあまり変わらないんだな………
「………そう言えば、お前って月って娘と仲が良いんだろ?」
「はい♪出会いは偶然でしたが、仲良くさせてもらってます。もしかして、貴方もファンなのですか?」
「いや、あまり………」
「布教しますよ?」
「宗教上の理由で無理なんで………」
「貴方、無宗教でしたよね!?」
だって、俺が神みたいな物だもん。
────それにしても、偶然か。
必然の間違いだろうに………
「くくっ………」
「えっ、キモッ………」
「言葉のナイフをいきなり刺すなよ!?」
「だって、めっちゃキモかったんですし。」
「そんなにか!?」
「はい!」
「元気よく言わないでくれ、凹む。」
────まぁ、良い。
俺は何と言われようと、その運命に気が付くまでは傍から楽しませて貰おう。
何時になったら、気が付くのだろうか?
お前が月ちゃんと呼ぶその娘が………
────
続く
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