第75話 絶望の化身

第75話


魔王レイナside


「はぁはぁ………」


おやおや、もう反論する気力すらないのか?


いや、まだ諦めてないな………


ちゃんと俺に殺意を向けている………


成る程、1割程度とはいえ適応する訳だ。


俺と戦う事をあの3人とは違うのだろう………


なら、俺がやる事は1つだ………


「さぁ、掛かってくるが良い!!あの時の勇者の様に、でな!!」


今のお前の身体なら、それが出来る筈だ!!


「うぉぉぉぉ!!!〘4重加速クアドラプル・ブースト〙!!」

「良い選択だ。その身体なら、身体強化魔法による負荷も、ある程度は無視できる。」


だが、惜しいな………


────それじゃ、勇者の2番煎じだ。


「なっ!?」

「残念でした♪」

「くっ、身体が動かない!?また、あの悪夢とやらか!!」

「いやぁ、唯の【念力サイコキネシス】さ。」

「【念力サイコキネシス】!?アレに此処までの力は無い筈だぞ!!??」

「────普通なら、な。残念だが、俺は魔王だ。普通じゃないし、理不尽の権化だ。」


それに、からな。


力を合わせれば、どんな敵とも戦えるのは常識だろう?


「ほらほら、早く振りほどかないと高い高いされるぞ?で、そこから他界他界に進化しちゃうぞ?」

「くっ、クソが!!」

「おっ、少し諦めかけたな?おいおい、失望させてくれるなよ。勇者なら、そんな状況でも諦めなかったぜ?」


仕方がない、一回殺ろう。


「パンッ!」

「がっ────」


おお、綺麗に爆散したな………


汚い花火にならなくて良かったぜ………


「はぁはぁ────」

「どうだ、ナメ◯ク星でのク◯リンの死に方を味わった気分は?」


────最高に最悪だったろう?


「ふ、巫山戯るな────」


おいおい、ボキャブラリーを増やした方が良いぜ?


さっきから同じ言葉の繰り返しじゃねぇか。


「く、喰らえ、〘水魔砲アクア・ブバレット〙!!」


う〜ん、魔法かぁ………


この程度じゃ、水浴びにしかならないんだよな………


────そうだ、水ならこれで行こう!


「深く深く、より深く。母なる場所への里帰り。」

「何を言って────かぼっ!?」

「ふふ、そのままの意味さ。まぁ、聞こえてないだろうけど。」


おお、溺れてる溺れてる………


夜の海の中って、暗くて怖いよね………


息も出来ないし、一寸先も闇しかないんだからね………


「がぼっ、くぼっ────」

「うんうん、辛いよね。溺死って、中々キツい死に方だって勇者から聞いてるよ。」


死んだ後の死体も酷いらしいからね………


「助けて欲しかったら、柄杓でもくれよ。お前をこの世から救済してあげるからさ。」


いや、もう沈んでるから無意味か!


ごめんごめん、無駄な事を言っちまったな!


「ごぼぼぼぼ────」


あっ、やっと、溺死した………


なら、この遊びも終わりか────


「────はっ!?も、元に戻った!!??」

「どうだった、初めての溺死は?」

「うぅ………」


ちょっと、女子〜〜〜!!


男子泣いちゃったじゃん!!


可哀想だよな、全く………


「おいおい、其処で諦めんなよ!お前ならもっと出来るだろ!!折角死なない身体になったんだろ!!!なら、最後まで抗えよ!!!!生きて、抗い続けろよ!!!!!」


ゴジラだってそうしてたんだぞ!!


なら、お前にだって出来るだろうが!!!


「………………………………許してくれ。」

「聞こえねぇ。」

「うぅ………許してくれ!」

「聞こえねぇなぁ………」

「ゆ、許してくれ!も、もう嫌だ!!」

「勇者、コイツが何を言ってるか理解わかるか?」

「さぁ?私、英語は履修してないので、さっぱりですよ。」

「俺もだ!」

「う、うぅ、許して………許して…………」

「何?もっと頑張る?よく言った!なら、もっと痛め付けても大丈夫だな!」

「い、嫌だ!!も、もう、死にたくない!!」


何を言ってるんだ、コイツ?


もう遅いし、その身体になった時点で幾らでも死ねる身体だろう?


「お前は俺に勝つ事をけど、生きる事をだろう?なら、まだ大丈夫だ。お前はまだまだ沢山死ねる。」


────お前、知らないのか?


その不死性は、生きる事を諦めない限りは何度でも生を謳歌できる力なんだぜ?


「『諦めたら其処で試合終了』って言うだろう?その力は絶対にそれをさせない力だ、どんな雑魚でも敵を殺せる最高の力だ。それなのに、諦めるとか馬鹿のする事だろう?」


勇者が異世界に転移した頃、ヤプールも『諦めない事を、強さと呼んで』って詠ってたしたな!


実際に諦めない事は強さだ、それを俺は身をもって知っている。


俺、勇者にそれで殺られてるからね………


「ほら、立てよ。まだ生きたいんだろう?なら頑張って抗えよ。頑張って死に続けろよ。最後に自分が勝つ、その時までな。」


泣いてる暇が在るのなら、剣や拳を振るった方が有意義だぜ?


「うぅ、お前は一体何者なんだ!?」

「通りすがりの魔王………世界を絶望に染め上げ、全ての生の存在を死の底へと引きずり降ろし、諦めを強要する怪物さ。」


世界を希望で染め上げ、全ての生の存在が持つ死を振り払い、諦めない事を強要する勇者の対極として、ぴったりな怪物だろう?


「さぁ、頑張ろう!お前が諦めるまで、俺はお前に死をプレゼントし続けちゃうぜ♪」


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る