第70話 勇者と魔王

第70話


────何で貴方が生きてるのでしょうか?


あの時、間違いなく私達は貴方を………


いや、まさか────


「────貴方、転生しました?」

正解セサクタ!一度気が付くと、相変わらず目敏くなるよな、お前。そういう面倒な所も大好きだぜ、俺はよ?」


煩いですね、貴方に好かれても全く嬉しくないですよ。


「はぁ、私がで、貴方がですか。作為めいた物を感じて嫌になりますね。」

「俺は運命を感じて絶頂したけどな!」

「吐きそうになるから止めてくれません?」

「ふふ、ツンデレ乙!」

「────朱雀神槍薊!!」

「ぐっ、不死鳥の一突きフェニックス・スピアか!?」


思いっきり、腹パンしてやりましたわ。


コレで黙ってくれれば嬉しいし、何なら御臨終してくれればもっと嬉しいのですが………


「久しぶりに喰らったが、やはり良い技だな勇者!子宮にちゃんと響いたぜ!!」


────世の中とは中々上手くいかない物なんですよね。


じゃあ、次は………


「いや、此処でイチャつくのは止めそうぜ、勇者!話したい事も沢山あるし、俺の家に来ないか?」

「え、嫌です。」

「其処を何とか!!」

「絶対に嫌です。」

「一生のお願い!!」

「聞き飽きました。」

「何でもするから!!」

「ん?何でもする?なら、今直ぐに死んでください。」

「美味しい酒も有るから!!」

「何をボケっとしているのですか、魔王。早く私を案内してください!」

「ええ………いや、了解!」


全く、酒が有るなら早く言ってくださいよ。


ほら、早く案内しないと、もう一回あの世に送りますよ?


☆☆☆☆☆


「此処、見覚えがあるんだけど…………」

「そりゃ、お前の実家の近くだからな。」

「何で知ってるんです!?」

「何でも知らないさ、知ってるのは勇者の事だけだ!」

「堂々と気持ち悪い宣言をしないでくれますか!?」


ひ、引きますわぁ………


相変わらず、気持ち悪い魔人族ですね………


「貴方、何時から此処に住んでらっしゃるのですか?」

「お前が住み始めた頃からだが?」

「き、キモい………」


────ん、ちょっと待ってください?


それじゃあ、つまり………


「貴方、私が異世界転移する前から近くに居たって事になるんですが!?」

「そうだが?」

「返答が軽いです!!」

「それに、俺が転生したのは、この世界にお前が生まれた日と同じだぞ。つまり、誕生日も同じだね♪」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


じゃあ、小さい頃から私は貴方にストーカーされてた事になるのですけど!?


い、嫌だ………


ず、頭痛がしてきます、は、吐き気もです。


ま、まさか、いつの間にか私は貴方に辱められていたのですね………


「いやぁ、お前は小さい時から愛おしかったなぁ………」

「────もう黙ってください。」

「あの俺達の間に挟まろうとしてくる自称幼馴染のチビ女が邪魔だったが、今はそんな奴は居ないもんなぁ………」

「────貴方、ぶっ殺しますよ?」

「良いよ、それも本望だ。また、俺を殺して愛してくれるんだろ?」

「────はぁ、もう良いです。」


何しても喜びそうですね、この変態………


「────しかし、時系列が複雑過ぎますよね。」

「世界の壁とは本来そういう物だからな!」


まぁ、時系列云々は私達もそうですからね。


だからこそ、ちゃんと時系列を合わせた状態で転移できる技術を作ったリンちゃんは凄いのですが………


「時間の流れが乱れに乱れるからこそ、様々な悲劇を生む異世界からの召喚は禁忌とされていたのだ。まぁ、大体そういう禁忌とされている物を破るのは、クソな人族だったからな!!」

「ふふ、否定できませんね………」

「勇者なのに否定しないのか?」

「私もあの異世界の人族の被害者ですから、共感はできますよ。」

「そうだったな!まぁ、私達魔人族も最後の最後まで翻弄されたから、本当にアイツ等はクソだったよ!!」

「まぁ、長く争いが続いたせいで、罪の所在は両方に有るんですけどね。勿論、私も罪深き存在です。」

「────其処を突かれると痛いなぁ。」


戦争って、どうしようもない程にそういう物ですからね………


「それよりも、大丈夫なのですか?今の貴方の身体は人族ですよ?」

「ふふ、気にしてないさ!それに魂は魔人族としての性質を持ったままだ!コレに関しては前世に感謝だな!!」


確か、貴方は悪霊レイス種の魔人族でしたね………


なら、魂の性質を持ち込めても可笑しくはないのでしょう………


それに、肉体は魂に引っ張られる物。


悪霊種はある程度育つと不老になるので、本来通りに生きれたなら75歳である私と同い年なのに、そんなに若々しい姿なのですね。


「それに、他にも感謝してる事があるんだよ。」

「他に?」

「ああ!まぁ、見て貰えば理解わかるか………」


一体、何をやらかしてるのでしょうか?


今から、不安でなりません………


「ほら、コレだよ。」

「こ、コレは────」


────眼の前には気持ちの悪い光景が広がっていた。


其処には無数の私の写真、人形、肉体が並べてあった。


写真や人形は良い、異世界でもやられてたからだ。


だ、だが、肉体のコレは────


「どうだ、俺特製の複製ホムンクルス勇者達は?いや、この世界風に言うとクローン勇者かな?」


えっ、キモい。


それ以外の感想が思い浮かばないんですけど!?


続く

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