第66話 第■■■層 反撃の狼煙

第66話


『ははは、どうしたシン!』

「喧しい、耳元で騒ぐな!!」

『グハッ!?』

「がはっ!?」


この戦闘狂め………


嬉々として俺と殴り合ってんじゃねぇよ!!


拳がぶつかり合う度に毎回爆発するせいで、目茶苦茶痛いし………


「ちっ、面倒だな!やりたくないがやってやるよ、こんちくしょうが、〘9重加速ノナプル・ブースト〙!!」

『おお、速い!!』


あ、脚が目茶苦茶痛い!!


クソが、地面を踏み込む度に脚の骨が折れやがる!!


俺が直ぐに治る身体じゃなかったら、一歩目で自滅してるぞ、コレ!?


『速いが、相当の負荷。長続きする物じゃないだろう?』

「へぇ、その身体になって駄目な頭も良くなったか、毒虫?」

『さぁな?だが、少なくとも俺の目はちゃんとお前の動きは捉えられてるぞ?』


ちっ、コレでも振り切るのは無理か!


だが、10重は駄目だ!


少なくとも、此処でやる様な魔法じゃない!!


「〘9重火力ノナプル・ファイア〙、不死鳥徹甲弾フェニックス・ディストラクション!!」

『はっ、毒牙重撃弾センチピード・ディストラクション!!』

「くそっ!!」

『グフッ、き、効く………』


蹴りと蹴りがぶつかり合った瞬間、今まで以上の爆発が起きる。


はぁはぁ、この調子で何度も爆発したら、やってられねぇな………


────だが、力は少しだけ俺の方が上だ。


『痛い、痛いな。だが、俺はまだやれるぞ、シン!!』

「そんなの、俺も同じだよ毒虫。」


────それに、お前は忘れてないか?


「もう充分に観察出来ただろ、思いっきりぶちかましてやれ!!」

『お前、一体何を………』

「〘暴食魔窮一閃タイラント・ストライク〙!!」

「〘召喚サモン電磁砲レールガン〙!!」

『なっ!?』


視覚外から飛んでくる攻撃を喰らい、派手に吹っ飛んでいく大百足。


お前の敵は俺だけじゃないの忘れてただろ?


個人に固執し過ぎると、足元すくわれるぜ?


どうやら、まだまだ頭は馬鹿な様だな………


☆☆☆☆☆


ユンside


『クソ!雑魚共が、俺の邪魔をするんじゃねぇよ!!』

「はぁ、全く削れませんね………」

「あの外骨格、硬過ぎじゃない?」


不意討ちの攻撃も、奴には殆ど響いていない。


全く、父上様と初めての共同作業がこんな面倒な奴相手だなんて………


────断然、燃えてきますね!


「アリス様、どうします?」

「私が攻める、後ろから援護お願い。」

「了解しました!」


私達の世界で恐暴竜と謳われたその姿、見せて貰いますよ、義母上様。


「〘転身インストール〙。」

『はっ、身体強化魔法すら使わない小娘が、俺に真っ直ぐ向かってきて何が出来る!!』

「お前をぶっ飛ばす事、〘脚斧レッグアックス〙!!」

『なっ、脚が斧に!?』


アレが義母上様の〘転身インストール〙………


自らの身体をの好きな部位を、自由自在に創り上げた武器へと変化させる〘創造魔法クリエイト〙の極意………


母上様が何年も時間を掛けても、再現が不可能だった固有魔法の1つ………


『くっ、重い!?』

「言っとくけど、単純な力だけなら勇者様が最弱だからね、大百足。」

『はぁ!?』

「何バラしてんの、戦士!?」


そう言えば、昔母上様もそんな事を言ってましたね………


弱いのに無理してて可愛いとか、雑魚なのに努力だけは百人前で格好いいとか、色々と酷い事を………


────あれ、これ惚気では?


『巫山戯るな!なら、その最弱に負けた俺は何だと言うのだ!!』

「弱々雑魚?井の中の蛙?それとも、踏み潰される事しか能がない弱虫?」


わぁお、口悪いなぁ義母上様。


────でも、隙が出来ました。


「〘不死鳥魔窮一閃フェニックス・ストライク〙!!」

『ちっ、当たる訳がなだろ───ガハッ!?』

「────流石ね、ユン。」

「当然です、私外さないので。」


大百足が避けようとした瞬間、私が放った矢はアイツに当たる。


そもそも、私の矢は指定した座標に必ず当たる様に空間魔法で操作している。


その座標を無理矢理にズラさない限り、絶対に当たるのだ。


まるで、それがこの世の摂理の様に………


『お、俺の身体が砕かれた!?』

「当然ですよ。私の母上様が使っていた最強格の魔法達に、ギリギリまで近付こうと頑張って生み出した技なんですから。」


それでも、3割くらいしか再現が出来ませんでしたけど………


『巫山戯るな!俺はシンと戦いに来たんだ、お前等如きに邪魔されてたまるか!!』

「はっ、嗤える。」

「こういう時は草を生やせば良いのでしょうか?」

『あ゛あ゛?』

「「私達如きに勝てない様な奴が、勇者様に勝てると思うなよ?」」


思い上がりも大概にしましょうね、大百足。


『殺す!殺してやるぞ、〘毒牙一閃センチピード・ストラッシュ〙!!』


あ〜あ、頭に血が登っちゃって………


でも、もう終わりですね………


「〘座標転換スウィッチ〙。」


まぁ、最後だけお望みを叶えて差し上げましょう。


さぁ、その身に喰らいなさい………


「〘10重加速ディカプル・フルブースト〙×〘10重火力ディカプル・フルファイア〙。」


────父上様の神槍を!


「────不死鳥の一突きフェニックス・スピア・改!!」


☆☆☆☆☆


進side


『────ま、負けた?』

「────ああ。俺達の勝ちだ、大百足。」


鳥の鉤爪みたいに変化した俺の腕が、大百足の身体の殆どを吹き飛ばす。


紫色の血を垂れ流しながら、奴はそう溢して倒れ伏す。


此処まで使わせるとは、本当に強くなったんだな、大百足………


しかし、良かった………


10年前の様に、アイツにを使わせる前に倒せたからな………


「うぐっ、痛たたたた!?」

「大丈夫ですか、勇者様!?」

「大丈夫、それは10重を使った後の副作用だから。」


────筋肉痛とも言う。


普段ならこんな事にはならないんだけど、負担が強過ぎて再生力すらも凌駕しちゃうんだよね………


『────変。』


なっ────


『────〚世界改変ワールド・エンド〛。』


続く

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