第57話 第5階層 絶海の射手 アヤカシ=イクチ

第57話


鏡side


『サァ、マトアテゴッコノハジマリダ!』

「あれが、この第5階層のボスモンスターですか………」


海の中から、途轍もない巨体が姿を現す。


その姿はまるで、フクロウナギの様に大きな口、ドジョウの様なヌルヌルを纏った細長い身体だった。


正直、気持ち悪いですね、この魚………


「でも、美味しそうなのがムカつきます。」

「蒲焼とかどう?」

「うな丼一択でしょ。」

「鰻なら私が捌けるよ♪」

「「「でかした、月ちゃん!!!」」」

『おや、これはまた凄いお嬢ちゃん方が来た物だな!』

『ボク、オイシクナイヨ!?ドクアルヨ!!??』


:皆涎がちょっとだけ垂れてて草

:美味いもんね、鰻………

:ボスモンスター、引いてて草

:毒持ちアピールしてるって事は、やっぱり鰻なんだな………


「火を通せば大丈夫ですよ♪」

『ソレ、ウナギヤアナゴ!ボク、アヤカシ!イクチトヨバレルサカナダヨ!!』


アヤカシ?イクチ?


そういえば、魚の日本妖怪にそんなのが居ましたね………


確か、日本版シーサーペントみたいな感じの奴だった気がします。


『モウオコッタ!クラエ!!』

「おっと、また水の息吹かな?だが、無駄だよ、鰻ちゃん!〘無窮一閃パワー・ストライク〙!!」

『────ヘェ、ヤルネ。』

「そっちこそね!」


奴が放った水の息吹と、花ちゃんが放った矢とがぶつかり合い、派手に消滅する。


防ぐ必要はありませんでしたね………


:おお、凄い光景だな………

:見ろよ、消滅した跡に虹が出来てるぜ!

:綺麗だな………

:でも、どっちの攻撃も微笑ましい様な威力じゃないんだろうなぁ………


いい絵も撮れましたし、此処は………


「頼みますよ、花ちゃん。」

「うん、任せて!」

『マトアテゴッコ、ウマイヤツガイタ!ボクトキミノドッチガツヨイカ、ショウブ!!」

「望む所よ!!」


☆☆☆☆☆


花side


『キレイ♪デモ、メンドウ!!』

「それは此方の台詞よ!!」


コイツ、命中精度が良すぎる!!


威力はそこそこだけど、数も多く撃てるせいで、攻撃が全く通らない。


全部撃ち落とせてるから、私もノーダメだけど、このままじゃジリ貧ね………


「ねぇ、そこのケルピー!」

『何かね、お嬢ちゃん?』

「力、貸してくれる?」

『ふふ、良いとも!強き君に敬意を表して我が背に乗せてあげよう!』

「ありがとう!」


これでわざわざ撃ち落とす必要も無くなりそうね!


『ズルイ!ナラ、モットフヤス!!』

『ふふ、無駄でござるよ、イクチ殿!』

「おお、凄い早いねケルピー!!」


この駄馬、目茶苦茶早い。


まるで、高速船に乗ってる気分だ。


「さぁ、視聴者の皆見てるか!ダンジョン内で前代未聞の流鏑馬を披露してみせるよ!!」

『ほう、古風だな!!』


こういうノリ、好きだからね♪


まさか、本物の馬でやる前にケルピーで体験するとは思わなかったけど………


『ホンキモードノブレスナラ、キミハサケラレナイヨ!!』

『イクチ殿の空間を捻じ曲げる息吹が来るぞ、お嬢ちゃん!我でも避けきれるか怪しいが、覚悟は出来てるか?』

「最初から出来てる!!」

『その粋良し!!流石は我が同胞の弟子だ!!』


先程と違って、四方八方から息吹が飛んでくる。


射出口がはっきり分かってた分、目茶苦茶避け難い!!


「何これ!?私の髪にちょっと掠ったんだけど、あの息吹!!??」

『数と変異さの暴力だからな、コレは!正直、我もさっきから掠って痛いんだ!!』


なら、早く決着を着けないとね………


『モウニガサナイ!』

『『『『『それは我々の台詞だ!!』』』』』

「はぁ!?」

『何じゃ、また無事じゃったのか………』


イクチがデカいのを放とうとした瞬間、海中から現れたロボみたいなのが奴を羽交い締めにする。


えっ、何が起こってるの?


『『『『『魚神合体!DXキングシャークフカワニオージャ、爆誕!!!』』』』』

『ウ、ウゴケナイ!』

『『『『『今だ、我々ごとイクチを撃ち抜くんだ!!!』』』』』


ええ、何これ………


でも、一応チャンスではあるし………


「何が何だかよく理解わからないけど、助かったわフカヒレ戦隊!〘炎魔窮一閃フレイム・ストライク〙!!」


これで蒲焼になりなさい、イクチ!!


『『『『『ぐっ、生まれ変わったらツナになりたいぜ………』』』』』

『ヤラレタ、ツギハタノンダヨ………』


私の矢によって炎上したロボは沈んでいき、蒲焼になったイクチは海へ浮かぶ。


勝ったけど、何だか釈然としないなぁ………


『勝ちは勝ちでこざるよ、お嬢ちゃん。噛み締めて前へと進むのだ。』

「………うん。ありがとうね、ケルピー♪」

『どういたしましてだ、お嬢ちゃん。』


☆☆☆☆☆


進&モンスターズside


『良い腕だね、狙った獲物に全部当ててるじゃないか。』

「だな。アイツの攻撃に全部当てるのは至難の技だぞ?」


避ける事自体はちゃんとケルピーを頼ってるのも良いな。


此処はそういう攻略方が大正解だしな………


『シーン、私の水着見て!』

『僕の王子様、この綺麗なビーチで僕と戦わないかい?勿論、私達に生えているバベルの塔を使っての勝負さ!』


変態共はガン無視で行こう、うん………


というか、もうバイコーンを犯し終わったのかよ、インキュバスキング………


「さて、次は第6階層だが………」


皆、めっちゃ驚くだろうな………


ふふ、今からその姿が楽しみだ。


続く

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