第50話 強者の特権

第50話


鏡side


────空気が変わった。


────いや、世界が替わった?


「こ、コレは………」

「な、何をしたんだ、浦島さん!?」

「真っ赤………」

「す、凄いですね。コレはどんな魔法なんです?それとも、全く別の系統の技ですか?」


それぞれ、思い思いの反応を示す私達………


────月ちゃんだけ何かズレている気はするが。


「どうだい、俺の独壇場セカイは?」

「浦島さん、コレは何なのですか?」

「う〜ん、何て言ったら通じるのかな?固有結界?領域展開?どっちも古い扱いされそうだよな………」


そう言えば、前に月ちゃんから聞いた事がある名前ですね………


確か、ある種の世界に相手を閉じ込めたりする力だとか………


「まぁ、世界を塗り替える力って事で納得してくれる?」

「………色々と聞きたい事はありますが、そうします。」


嘘は付いていない………


────だからこそ、質が悪い。


「さて、本格的な特訓を始めようか。」


その時に見せた彼の顔を、私達は生涯忘れる事はないだろう。


あの時の顔は、笑顔は、今まで見てきた物の中で一番………


────恐ろしく、狂気に満ちた物だった。


「時間は一杯あるからね、頑張ろうね♪」


☆☆☆☆☆


進side


「「「「「死ぬかと思った………」」」」

「「「「え?」」」」


特訓が終わった後、俺達は地面に転がり込んでそう呟く。


だが、直ぐに正気を疑う様な目で彼女達から見詰められた。


おいおい、そんなに見詰められたら、照れちゃうじゃないか………


「な、何であんなに私達をシゴいた浦島さんまで死にそうになってるんですか?」

「ああ、アレって俺も一歩間違うと死んじゃうのよね。」

「「「「…………」」」」


ありゃ、絶句しちゃった………


でも、仕方ないでしょ、あの技って元々俺のじゃない上に、俺が決めた訳じゃない面倒な仕様だし………


「浦島さん、コレって何なんですか?」

「────世界に干渉する資格、権能さ。」


一部の強者のみに持つ事を許された裏技って所かな?


便利な物ではないし、押し付けの極みみたいな物だから、使える奴は大体ロクでもない奴等ばかりだし………


「まぁ、基本的に人間は使えねぇよ。俺は異世界でクソみたいな出来事に巻き込まれ続けたせいで使える様になっただけで、コレを使えるの強者なモンスター達のみだからな。」

「そうなんですね………私もちょっと、使ってみたかったなぁ…………」


使えなくて良いと思うぜ、人でなしとろくでなしの証みたいな物だし………


「さて、今日の特訓はコレで終わりだ。しっかり食べて、しっかり休めよ。」

「「「「はい!」」」」

「あ、コレを一週間くらいは続ける予定だから、頑張ってね♪」

「「「「は、はい………」」」」


☆☆☆☆☆


「どうです、父上様?」

「良い子達だったよ、鏡花水月の皆は。」


いやぁ、頑張る女の子達を見るのって、目の保養になるよね………


それに、あの4人は………


「ちょっと思い出してしまったよ、昔の俺達の姿を………」

「そうでしょうね、勇者一行をモチーフとして作ったチームですもの………」


だろうな………


俺達の役割そっくりだもん………


まぁ、文句を付けるとしたのなら………


「なら、もう一人用意しとくべきだったな、ユン………」

「え………」

「俺達の一行にはアリスの前任者が居たからな………」

「────そう言えば、そうでしたね。」


まぁ、死んじまったけどな………


月ちゃんみたいに優しくて良い子だったのになぁ………


彼女もちゃんと、この世界に………


「その懐かしさと、悲壮さでメンタルごっちゃになったせいか、権能使っちゃったしな。いやぁ、やらかしたよ………」

「何やってるんですか、父上様!?」


マジでやらかしたよね、うん………


此方に帰って来てから一度もやってなかったから、ぶっつけ本番だったし………


「大丈夫ですよね?何処が具合が悪い所とかありますか?」

「大丈夫だから安心しろ。」

「なら、良いんですけど………」


何処か悪い所があっても、勝手に治ってるしな………


「それに良い経験だと思うぜ?」

「そうですか?」

「新宿の深層には、権能を使ってくるモンスターが最深部に居るからな………」


第19層の奴よりも10倍くらい強い奴が使ってくるからな、初見で戦うよりはマシだろう。


あのクソムカデめ………


アイツに噛まれたせいで、一ヶ月は毒で苦しめられたってのに………


「これからあの子達はもっと強くなるぜ?少なくとも、例外側にまではなれるかもな。」

「私達にまで届くとは言わないんですね。」

「そりゃそうだろ、俺達は埓外だ。簡単に超えられちゃ立つ瀬が無いよ………」

「例外側も大概だとは思いますけどね。」


死ぬ気で頑張れば、大体の奴等は行けると思うけどな。


まぁ、死ぬ気で頑張るの時点で脱落者が出るんだろうけど………


「ああ、そうだ。ユン、少し調べて欲しい事があるんだが………」

「良いですけど、何を調べるんです?」

「◯◯◯◯について何だが………」

「────了解しました。色んな権力使って探し出しますね♪」

「ほ、程々にな………」


良い笑顔で怖い事言うなよ………


────頼んで大丈夫だったのか、コレ?


続く

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