第42話 紛い物の木偶人形

第42話


進side


「巫山戯てんじゃねぇよ!!」

「はっ、児戯だな。もう少し狙って攻撃したらどうだ?」


うん………弱いな、コイツ。


しかし、言動がどんどん三下臭く………じゃなくて、ヤバくなってるな。


精神汚染が進んでるって事か………


なら、やはり………


「【斬撃スラッシュ】!」

「スキルによる攻撃なんぞで、俺を傷付けられる訳がないだろ!!」

「はぁ、油断大敵だぞ………」

「だから、巫山戯てんじ────」


俺のスキルは深層の第5階層くらいまでなら普通に効くんだぞ?


お前みたいな雑魚が油断してると、直ぐに真っ二つだ。


────今のお前みたいにな。


「「きゃあああ!!!!」」

「何だ、アレ!?」

「人が斬られてるぞ!!」


あ、ヤベ。


此処がダンジョンの外なの忘れた。


仕方ねぇなぁ、もう………


「おい、お前ら!巻き込まれて傷付きたくなければ、さっさと離れろ!!」


そう言いながら軽く殺意を飛ばすと、野次馬はワッと逃げていく。


人を退かすにはやっぱり殺意をぶつけるのが一番だな、うん。


「痛い、痛えじゃねぇか!よくもやってくれたな、ゴミ野郎が!!」

「やっぱり、治るか………」


だが、時間が遅いな。


それに………


「じゃあ、次の確認に行くか。」

「さっきから、訳の理解わからねぇ事を言ってんじゃね「不死鳥の一突きフェニックス・スピア。」なっ────」


よし、頭を潰したな。


これで、数分待ってみて………


「不意打ちとか卑怯な事をしてんじゃねぇ!!絶対にぶっ殺してやるぞ、変な仮面野郎!!」

「なっ、変な仮面!?何処がだよ!!」

「何処からどう見ても変な仮面だろうが!!」


酷い言い草しやがって………


しかし、やっぱり即死的な攻撃をしても治ったし、俺と同じ様だな………


────でも、やはり遅いな。


「じゃあ、次は首の骨を折ってみるか。」

「そんな事、させ────」

「よし、折れたな。」


首の骨が折れる音はちゃんと聞こえたし、少しずつ命が途絶える光景も見れた。


だが、ちょっとずつ治ってるな。


俺と比べたら、亀と兎くらいには差があるのだが、ちゃんと治ってる。


「く、クソが!!テメェ、何がし────」

「心臓を潰したらどうなるかなっと………」


まぁ、流石に即死するわな………


────でも、治る。


「はぁはぁ、流石に死ぬかと思った。だが、コレでお前が何をし────は?」


成る程、やっぱりか────


「な、何で立てないんだ!?」


また威勢だけの攻撃を繰り返そうとした奴だが、いきなり膝から崩れ落ちる。


何度も立とうとするが、右足が立ち上がらないらしい。


まぁ、だろうな………


「靴脱いで足をよく見てみろよ。」

「な、何だ、コレは!!??」

「見た通り、腐れ朽ちてるだけだぞ?」


奴の足はグチャグチャに腐り果て、今にも崩れ落ちそうになっている。


あんな状態じゃ立つ所か、力を入れる事すら無理だろうな。


というか、もう神経すら通ってないか………


「どうして、俺の足がこんな事に!?」

「そりゃ、お前さんが粗悪品を掴まされたからだろ、不死鳥の涙フェニックス・ティアーの。」

「な、何でそれを………」

「そりゃ簡単だ。俺も────」


優しい俺は奴にちゃんと説明する為に、自らの腕を斬り落とす。


そして、腕が治るのを見せつけて、コイツに事実を思い知らせる。


「俺もお前と同じだ。正確に言うと、かなり違うけどな。」

「な、何でそんなに早く治るんだ!?」

「そりゃ、お前と違って俺は本物使われたからな。」

「どういう事だよ!?」


やっぱり、利用されてる感じだな………


まぁ、モルモットって所だろうか?


「お前が使ったのはな、カルピスや酒に水を大量に混ぜて過剰に薄くした物だ。ソイツにも一応不死性を与える効果はあるが、完全じゃない。まぁ、それは今お前が一番実感してるだろうが………」


異世界でも目先の利益に飛びついて、この効果に苦しむバカを何人か見てきた。


全く、バカバカしい………


お前等がそんなんだから、アイツはずっと俺達を嘲笑ってたんだろうが………


「治るのが遅いのとか、何度も再生を繰り返していくと一部が少しずつ腐って朽ち続け、最終的には死に至るとか、完璧とは言い難い物なんだよ、お前が使ったのはな。後、精神が汚染されて頭がパーになったりとかもあるぜ。だから、処理するのとかは楽だったんだけどな。」


色々あって、そんな奴等を殺すのも俺の仕事になってたな………


異世界の俺、働き過ぎだな………


労基に訴えても、ホワイト扱いされそうなのも酷い。


「まぁ、そういう事だ。確認したい事も確認出来たし、後はお前が死ぬのみだ。」

「────い、嫌だ!止めてくれ!!」

「えっ、普通に嫌だけど?」


急に泣き叫び始めた男に、血吸の暴食ブラッディ・グラトニーを心臓の辺りに突き刺す。


「ああああああ!!!!!!ち、力が、魔力が、全部抜けていくぅぅぅ!!!何をしやがったんだ、テメェ────」

「お前が感じてる通りの事だよ。」


今の所、これが一番早くお前を殺せる。


生命力と魔力を奪うこの聖魔剣は、中途半端な不死性持ちの天敵だ。


「や、止め────」

「おお、どんどん朽ちていくな。刺すだけで死んでくれるとか、楽で良い。」


腐敗が少しずつ奴を侵食していき、後は頭を残すだけになっていく。


だが、それでもギリギリ生きている。


全く、業の深い力だよ………


こんな状態になっても、生かされ続けるなんてさ………


「────」

「もう喋る気力すら無いか………」


じゃあな、名前も知らない愚か者。


「次はこんな呪物みたいな物に引っかかるんじゃねぇぞ?」


続く

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