第41話 不死鳥の涙
第41話
「ああ、クソが!ちまちま俺の身体に穴を開けやがって!」
「流石ですね、普通死にますよ?」
「普通じゃねぇからな。というか、普通じゃなかったら、お前の所にカースクロウ達が来てるんだぞ!!」
「成る程、厄災を報せる烏ですね。此処のルールを大体把握しました。」
ちょっとした情報で理解しやがったな、この胸デカハーフエルフ。
本当ならカースクロウどころか、人間の奴がアイツの所へ向かう様な場面だ。
だが、俺が死なないせいで、よっぽどの一線を越えない限りは唯の喧嘩扱いなのだ。
どうやら、彼女の運は良いらしい。
「────なら、場所を変えましょうか。」
「はぁ?」
彼女がそう呟いた瞬間、別の場所へと飛ばされる。
────此処は、何処だ!?
「ふふ、私の専用の地下室です、良い場所でしょう?」
「少なくとも、邪魔はされそうにないな!」
はぁ、最近転移とか移動に良い思い出が無いから、ちゃんと転移されてよかったよ。
天井部分に飛ばされてたら、また地面にキスされる所だった………
しかし、転移にしちゃ範囲が大きいな………
普通なら、術師本人か、それに触れてる存在じゃないと飛ばせない筈だぞ?
「じゃあ、再びやりましょうか!」
「クソっ、また蜂の巣祭りか!!」
最近、落ちるのと同じ位に蜂の巣にされてねぇかな、俺?
治るからって、痛い物は痛いんだぞ!!
「やはり、治り続けますね!」
「それがどうした?」
「可笑しいんですよ!私が知っている物ならば、必ず副作用が出る筈なのに!!」
やっぱり、コイツ………
「────副作用?例えば、治る度に身体の一部が再生不可能なまでに腐り朽ちていく症状が出るとか?」
「成る程、知っているのですね。ならば、その身体は………」
「ああ、俺のこの不死性は不死鳥から齎された物だ。」
「やはり、そうなのですね。」
異世界には、不死性を得る方法がいくつか存在した。
そういうモンスターになったり、そういう薬を作ったりと、ロクでもない事ばかりだったし、その全てに副作用やデメリットがあり、完璧な不死性を得られるのは皆無だ。
不死鳥から与えられる不死性も、その1つだった………
「貴方も
「俺がクソ野郎なのは否定しないがな、欲望のままにアレを望んだ奴等とは一緒にしないでくれよ。」
「はい?」
「俺だって、望んでこんな身体になった訳じゃねぇよ………」
不死性を求めるとか、バカのする事だ。
助かってるのは否定しないが、それでもこのクソみたいな力がなければ………
「ならば、何故そんな力を────」
「それは………」
────は?
「おい、お前がアレを知ってるって事は、この世界にもあるって事か?」
「何、可笑しい事を言っているのですか?存在するから貴方はそんな身体になっているのでしょう?それに、私はそれを使う奴を取り締まるのも仕事の1つです。」
そうか、なら────
「お前の仕事の時間だぞ、ユン。」
どうやら、お前に構っている時間は無いらしい。
「はぁ?先程から、何を言って………」
「じゃあな、ユン。次はゆっくり話し合おうぜ。」
「貴方、その杖は────」
すまんな、この杖を自慢してる時間は無いんだ。
また今度、じっくり話してやるよ。
────この杖の力で転移しながら、そう思った。
☆☆☆☆☆
???side
はぁはぁ、身体が熱い………
早く、誰かを傷付けたい………
なるべく、沢山の人数を殺してやりたい!
「はぁはぁ、此処なら沢山殺れるなぁ!!」
此処は大勢の人が通る大通り。
此処に俺が魔法を放てば、大パニック間違いなしだ!
恐怖に怯える悲鳴の合唱が、心地良い感じで響き渡るのを想像すると、ビンビンになってくるぜ!!
「じゃあ、開幕の狼煙といこうか!はは、喰らえ〘
さぁ、こんがりに焼けてステーキになっちまえ!!
「おいおい、こんな所で魔法を放つとか頭魔人族かよ………」
「なっ────」
誰だ、コイツ!?
いきなり仮面を着けた男が現れて、俺の魔法を素手で弾きやがったぞ!!??
「クソが、どんな事も最初が肝心なんだぞ!!それを邪魔しやがって!!!」
「はっ、こんな所で殺戮を始めようとするバカが居たら、普通に止めるだろ。」
はぁ、正義の味方気取りか、コイツは!?
俺が一番嫌いな奴はな、お前みたいなタイプなんだよ、この偽善者め!!
「そんなくだらない理由で俺を止めたっていうのか、巫山戯るな!!」
「いや、絶対にお前の方が巫山戯た理由でやろうとしてたろ………」
はっ、そんな訳がないだろ?
俺のやりたい事をやろうとする事の、何処が間違いだってんだ?
「その顔を見ると、確定だな………」
「あ゛あ゛?ていうか、お前は一体何なんだよ!!」
「俺か?────通りすがりの勇者さ。」
勇者?勇者だと!?
「厨二病も治ってない上に、変な仮面を着けたゴミ野郎が、邪魔してるんじゃねぇ!!!」
「なっ、変な仮面!?」
くそっ、イライラしてきたなぁ!!
コイツをストレス発散のサンドバッグにでもしてやるかぁ?
「だが、運が良いなお前。今からお前を俺のサンドバッグにしてやるよ。」
「はっ、逆だろ。お前が俺のサンドバッグになるの間違いだ、赤点先生にペケを貰っちまうぜ?」
「はぁ、調子に乗るなよゴミ野郎!もう良いわ、処刑確定だぁ!!」
俺に舐めた口を聞いた事、あの世で後悔させてやるよ!!
「はっ、何だ。俺達、両想いじゃん。」
「あ゛あ゛?」
「俺もお前を殺しに来たんだからな!!」
続く
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