第40話 現実世界の異種族

第40話


「ふぁ、弱い………」


アリスの家と自宅を行き来する生活にも慣れ始めたある日、俺は久し振りに下層に来ていた。


何故かというと………


「お前、確かに下層を潜るには充分だ。俺は月ちゃんやアリスしか探索者は知らんけど、ちゃんと強いと思うぜ?」

「くっ………」


下層から深層に入ろうとしている奴等を見定める為である。


「少なくとも、深層に入りたいなら俺に身体強化魔法の〘3重トリプル〙くらい使わせろ。」


それさえも使わせない強さなら、お前は深層第1層ですら生き残れないぞ?


「ほら、さっさと帰って鍛え直してこい。少なくとも、下層の奴等が雑魚に感じれる様になる位にはな。」


そうやって、回復ポーションを渡して追い返す。


傷を負ったまま帰して死んじまったら、後味が悪いからな………


さて………


「さっきから、誰かずっと俺の事を見てるだろ。出てきたらどうだ?出ないのなら、俺の方から行くぞ?」

「おやおや、気が付いていらっしゃいましたか………」


俺が雑魚の相手をしている間、ずっと気配と視線を感じていた。


なので、警告してみると、相手はあっさりとその姿を現す。


ん?んん??んんん???


「え、エルフ!?」


身体の中に眠る膨大な魔力、特徴的な長耳、何処からどう見ても、エルフだ。


この世界にもエルフが居たのか!?


「あら、何故驚くのです?エルフなど、この世界にダンジョンが発生してから、珍しい存在じゃ無くなった筈ですよ?」


成る程、この世界にダンジョンが蔓延ると共にこいつ等も発生したのか………


もしくは、ダンジョンと共にやって来たパターンか………


いや、それよりも………


「何で胸が大きいんだ!?」

「────はい?」


めっちゃ巨乳じゃん!


俺の知ってるエルフは永遠の0、呪われし虚乳種族だぞ!?


持たざる者として、ちょくちょく聖女様の胸に怨念ぶちまけてた敗北者だぞ!!??


な、何で、そんな物を………


────ま、まさか!?


「お前、エルフはエルフでも、ハーフエルフだな!!」

「凄いセクハラな判別方法ですね。合ってはいますけど………」


おっと、やらかしてしまった………


こういうのも直さないと、いつか月ちゃんやミリスちゃんに嫌われそうだな………


「おっほん!で、何の用だ?」

「色々と確かめたい事がありまして。」


俺の質問にそう答えると、彼女は懐から弓を取り出す。


こんな狭い所で弓?


大きな相手には有効だろうが………


「そんな物で、俺を射抜けるとでも?」

「────射抜けますよ、簡単に。」

「なら、よく狙ってやってみろ!!」


奴の手から矢が離れる瞬間、俺は弓の射線から外れようとした。


だが………


「痛っ!?う、腕が────」


離れた瞬間に、俺の腕が射抜かれて吹き飛んでしまった。


何だ、コレ!?


そこまで速い射出速度を出せる様にはみえなかったぞ!!??


いや、まさか………


「〘固有魔法〙か!」

「おお、流石ですね。あのアリスちゃんと一緒に戦う事が出来る夫なだけはある。」

「お褒めに預かり光栄だな。それに、まだ夫をやる気はねぇよ。」

「おや、責任を取る気がないのですか?最低ですね………」

「取る気はあるが、色々と事情が複雑なんだよ。というか、家庭の事情に突っ込むと酷い目に合うぜ?」

「合わせるつもりですか?」

「いや?それはお前次第だが、経験則だ。」


異世界では王族や貴族の家庭の事情に、かなり振り回されたからな………


何回殺してやろうと思った事か………


「どんな能力かは理解わからんが、百発百中みたいな物だろ?」

「ふふ、どうでしょう?」

「………だが、残念だな。俺とは相性が最悪だぞ!!」


いくら当たろうが、治るからな!!


「────でしょうね。」


────だが、彼女は笑った。


「では、これならどうですか?」


なっ、ヤバい!!


直感的にそう思ったが、絶対に避けられないのは先程で思い知ったばかりだ。


クソっ、受けるしかないのか………


「ぐあぁぁッ────」


彼女が放った矢は俺の胸を貫いていく。


それ位ならまだ良い、死ぬ程痛いだけなのだから。


だが、この矢は貫いた俺の生命力や魔力まで奪っていった。


くそ、この矢は────


「お前は何でこんな矢を持っている!?これはを殺す為の武器だぞ!!」


異世界には、とある不死身なモンスターが居た。


生死を嘲笑い、生き様を弄び、悪戯に全てを滅ぼす魔王とは別枠の厄災………


────その名は、不死鳥フェニックス


死の国から飛んできた、クソみたいな渡り鳥である。


「私こそ聞きたい事が沢山あります。何故、その不死性を持っているのですか!!何故、無事でいられるのですか!!!」


コイツ、俺の力について知っているな………


「話し合いをする気はあるか?」

「あると思いますか?」

「だよな………」


────なら、仕方がない。


「お前を半殺しにして聞き出すとするか!!」

「それは此方の台詞です!!」

「さぁ、此処から先は俺の独壇場セカイだ!!」 

「なっ、貴方もなのですね………」


ああ、どういう意味だ?


「………私の名はユン。この日本に5人しか居ないEX探索者の1人ですね。」

「ユン、ね………」


そういや、エルフには名字の概念が無かったな。


だから、名前が被らない様にするのが面倒だったとも聞いた覚えがある。


そして、アリスと同じEXか………


なら、気を引き締めなきゃな………


「真似をする訳ではありませんが、訂正しておきましょう。此処から先は、私の独演撃セカイです!!」


いや、真似じゃねぇか!


巫山戯んな、これは俺が起源の決め台詞だからな!!


続く

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