第39話 たまには悪役が勝つ事もある

第39話


『『『『『早速だが、喰らえ!!』』』』』


奴等はそう叫ぶと、自分達の尾びれを重ね合わせ、その中心にボール状のエネルギ体を創り始める。


おいおい、早過ぎるだろ………


ウル◯ラマンが初手からスペシウム光線を撃つレベルの暴挙だぞ、それ?


『『『『『フカワニハリケーン!!』』』』』


鮫鮫ハリケーンって、お前等………


「はぁ、ケルピー。少し離れてろ………」

『了解した!』


こいつ等が放ったのは奴等が持つ未知のエネルギー、鮫エネルギー(わかんねぇだろ?俺もわかんない)を使った球状型爆弾だ。


それを初手でぶつけてきた訳だが、こいつ等は選択ミスをした。


それは………


「普通に弾き返せるんだよな、これ………」

『『『『『何!?』』』』』


個性は濃いが、こいつ等は第5階層の雑魚的な存在だ。


なので、爆発する前にお返しする位なら、普通に出来る。


というか、お前等が驚いてどうするんだよ、毎回このパターンでバイバイキンしてるんだぞ、お前等?


いい加減、学習しろよ……


『『『『『怯むな!我々には初登場のとっておきの切り札があるのだ!!!!!』』』』』』


奴等がそう叫んだ瞬間、鮫エネルギーによる爆発が発生する。


────はぁ、今回は自滅してねぇみたいだな。


そして、爆煙に紛れて何かしてやがるな、アイツ等………


『『『『『魚神合体!DXキングシャークフカワニオージャー!!』』』』』』


煙が完全に晴れた先には、巨大なロボが立っていた。


お前等、その領域に達してたのか!?


ていうか、何でDXが付いてるんだよ!?


お前等は夢を作る企業、財団Bの回し者か何かなのか!!??


『『『『『さぁ、来い人間よ!多々買わなければ生き残れない!!』』』』』

「仮面ラ◯ダーじゃねぇか!!」


しかも、何か絶対に色々とニュアンスが変わってるだろ、それ!!


ああ、もう面倒だ!


「〘3重火力トリプル・ファイア〙………不死鳥の一突きフェニックス・スピア!!」

『『『『『ヒデブッ────』』』』』


向かい来るロボに目掛けて拳を放つと、簡単に吹き飛んでいってしまった。


おいおい、マジかよ………


「見掛け倒しにも程があるだろ、アレ。見た目とかよりも前に、内面とかをちゃんとしてから来いや………」

『全くだ。正直、アレに頼らない方が長く戦えた気がするぞ?』


────同感だ。


結果は変わらなくとも、過程のバトルは大分マシな物になっていただろうに………


「………はぁ、気を取り直して目当ての場所に行くか。」

『了解だ。』


待ってろよ、アヤカシ!


☆☆☆☆☆


『ミツカッタ!ニンゲン、ヒサシブリ!』

「おう、久し振りだなアヤカシ。」


ケルピーに連れて行って貰った場所は、この海のエリアの底にある唯一の海底洞窟。


その中でも、唯一息が出来る場所にアヤカシは待ち構えていた。


「ケルピー、此処まで連れてきてくれてありがとうな。」

『ふふ、礼なぞ要らん。我と我が同士の仲ではないか!』

「………だな。ケルピー、事が終わるまで此処から離れててくれ。」

『委細承知!!』


────さぁ、始めようぜ?


『アソボウ!アソボウ!!ココカラハ、ボクタチノセカイ!!』

「おう、俺達の独壇場セカイだ!」


そう宣言した瞬間、四方八方から息吹が飛んでくる。


こんな狭い所で撃たれると、直ぐに蜂の巣にされそうだな………


「なら、避けて避けて避けて、避けまくってやるよ、アヤカシ!!」

『デキルノ?』

「出来るさ、〘4重加速クアドラプル・ブースト〙!」

『オオ、ハヤイ!』


高速で駆け抜けば、お前の息吹は当たらねぇぞ?


当たらなければどうという事もないって奴だな。


『ナラ、コレ!』

「ちっ、やりやがったブッ!?」


息吹が当たらないと判断した瞬間、コイツは自らの身体に纏っていた乾燥対策用の粘液を振りまきやがった。


で、その粘液に足を取られた俺は派手に転んでしまった訳だ。


くそ、頭蓋骨に罅が入ったじゃねぇか………


治るから良いけど、殆どの奴は致命傷になるぞ、コレ?


『トマッタ!ツギハ、トッシン!』

「はぁ、お前の巨体でそれは────」


有無を言う前に、見事にペチャンコになりました、はい。


瞬間的に【硬化】を使ったから良かったが、普通だったら全身骨折か、ミンチ肉だ………


だが………


「捕まえたぞ、アヤカシ。」

『アッ!?』

「このエリアの奴等は、全員詰めが甘いみたいだな………喰らえ、風車!!」


捕まえたアヤカシを全力でぶん回す。


どうだ、目が回るだろう?


『アハハ!タノシイ♪タノシイ♪』


何か喜んでる気もするな………


まぁ、やる事はちゃんとやろう。


「さぁ、吹っ飛べ!!」

『ヒャッホウ!トンジャウ!!』


回した勢いのままに、奴を放り投げる。


すると、綺麗に真っ直ぐ壁へとぶつかり、アヤカシは胴と尾びれだけが見える状態になってしまう。


何か、ちょっと前に見た気がするな、こんな壁尻………


『ウウ、アタマイタイ………』

「どうだ?頭が冷えたか?」

『………ウン。』


どうやら、大人しくなったらしい。


しかし、コイツは何でこんな事をしたのだろうか?


コイツは悪戯好きなガキだが、わざわざ無理に引き込む様な奴じゃ………


『………ニンゲン。』

「何だ、アヤカシ?」

『………ドコニモイカナイ?』

「ああ、成る程………」


────何となく察した。


コイツがこういう事をしたのは………


「行かねぇよ。もう、俺の家は、俺の帰る場所はこのダンジョンだ。俺が死ぬ迄は、此処にずっと居座ってやるよ。」

『ホントウ!?ヤッタ♪』


まぁ、俺の帰る場所など、とうの昔に消えてしまったしな………


最近、やっとそれに近い場所が出来たけど、申し訳ないが少し足りない。


「それ程に染まった訳なのかな?」


やる事がないと、身体が闘争を求めてしまうのだ。


無益な戦い程、嫌いな物は無いというのに、どうしようもなく欲してしまう。


「よし、アヤカシ。まだ遊ぶか?」

『ウン♪』

「じゃあ、行くぞ!!」


もう少し、この我儘なガキに付き合ってやるか!!


続く

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