第36話 やはり、古巣が一番居心地が良い

第36話


あの後は何もなく就寝でき、皆で揃って起きる事が出来た。


その後、直ぐに帰ろうとしたのだが、朝ごはんを食べていけと言われたので、遠慮なくご同伴に預かった。


「うん、美味い………あの頃と違って料理が上手くなったな、アリス。」

「私、ミリスの為に頑張ったからね。」


アリスが作る料理は本当に酷かった。


正確には、アリスと聖女様だけど………


あの二人が作るとダークマター化するし、下手したらモンスター化していた。


しかも、聖女様の方は最後の最後まで自覚無しだったのが恐ろしい。


なので、料理は俺と賢者の二人の仕事で、賢者の料理は俺達の中で一番美味しかった。


「だそうだ、良かったな?」

「うん。」


しかし、久し振りにマトモな食パンを食べた気がするな………


一応、小麦とか米とかの穀物自体は深層に在るのだ。


何かドダ◯トスのパチモンみたいな姿をしている亀、キングファマータートルの背中に上に茂々と。


あの亀、亀の癖にめっちゃ速いのが厄介なんだよな………


キングファマータートルめ、お前もう亀降りろ。


「さて、そろそろ帰るわ。」

「ええ、もう?」

「ごめんな、ミリスちゃん。あのダンジョンを放置してると、色々面倒なんだ。」


主に第20階層辺りに居る奴等がな………


それに、命知らずのバカが深層へと入ろうとするのも止めなきゃならない。


俺の周りでバカが死ぬのは二度とごめんだ、そういうのは異世界だけで充分なのだ。


「安心しろ、夜には帰ってくるから。」

「どうやって?新宿ダンジョンは此処から地味に遠いよ?」

「それはな………」


ふっふっふっ、俺には秘密道具が有るのだ。


勿論、あの青タヌキと同じレベルのな!


「じゃじゃーん!見ろ、この杖を!」

「唯の杖じゃん………」

「ああ、それが有ったね。それを使えば確かに簡単に行き来が出来る。」

「そうなの、お母さん?」

「うん。アレは私の先輩である賢者様と聖女様との合作魔法杖なの。」

「そうだ、この杖の力は「進様みたいな身体強化魔法しか出来ないポンコツダメ人間でも色んな魔法を使える様にする為の杖なの。」俺の台詞を取らないでくれ………」


この杖は傲慢な杖アラガント・ワンド


アリスと賢者が作ってくれた血吸の暴食ブラッディ・グラトニーと同じ様に、賢者と聖女様が俺の他に作ってくれたピーキー武器である。


「これがあれば何時でもお前達の所に転移できるからな、2回が限度だけど。」


この杖、最早殺す気なレベルで魔力を奪い取ってくるので、1日に2回しか魔法を使えないクソ杖なのだ。


まぁ、正直な所を言うと、普通に戦う方が魔法を使うより強いので、殆ど埃を被ってた様な状態だったのだが………


「そうなんだ………ちゃんと帰ってきてね、お父さん!」

「おう、ちゃんと帰るさ。」

「またね、進様。」

「またな、アリス。夜に戻ってきた時は、夜ご飯の方も食べさせてくれ。」

「うん♪」


はてさて、新宿ダンジョンはどうなってるのやら………


☆☆☆☆☆


『それから一週間経ったけど、子供と母親が居る家と別の女の家を往復する生活はどんな気分だい?』

「嫌味な言い方するなよ、人間ジンカン………」


あの後、深層第1層に戻ると、目茶苦茶に荒れていた。


俺の家を壊すと後が怖いのをちゃんと知っているので、家は無事だったのだが、その周囲はモンスター達が暴れ回った跡のせいで地獄絵図だった。


その原因はというと………


「仕方ないだろ、アリスがヘルボロスを瞬殺したせいで代替わりの決闘が起こってるんだから………」


前任ボスモンスターが死ぬと、こういう感じで第1層の奴等は決めようとする。


正直、その喧嘩の音が煩すぎて、平和な第2階層の人間の部屋に避難するしかなかったのだ。


『毎回凄いよね、今回は一体誰がなるんだろうか?』

「さぁな?案外草食系の奴等がボスになるんじゃねぇか?」

『有りそうだね。』


早くボスを決めて静かにして欲しい物だ。


『そうだ、浦島君。第3と第4の奴等が君を呼んでいたよ?』

「はぁ?何かあったのか?」

『さぁ?急いで来て欲しいとしか言ってなかったよ、あのビッチ共は………』


相変わらず、あの2体には厳しいね………


「はぁ、行ってみるか。」

『お土産頼んだよ、浦島君。』

「おう、なるべく変なのを土産にするよ。」


☆☆☆☆☆


「はぁ、相変わらずの臭気だな………」


新宿ダンジョン深層第3深層、この場所は朽ち果てたバカデカい教会が建ってあるエリアである。


この層に入った瞬間、探索者はとある臭いに襲われる事となる。


どんな臭いかというと………


「酸っぱい臭いをさせ過ぎだろ、サキュバスクイーンめ………」


今回はどれだけ発情してるんだ、アイツ?


『あ、浦島様!お久しぶりです!』

『お待ちしておりました、浦島様。どうぞ、此方へ。女王様の我慢が正直保ちそうにありません。』

「おう、久し振りだなインプにサキュバス。

この臭いで大体は理解わかってたが、確かに色々と限界そうだな。案内頼むぞ!」


放置するとヤバいからな、こいつ等………


「おい、来たぞサキュバスクイーン!」

『来た!来た来た!!来た来た来た!!!やっと、私の所に来てくれたのねシーン!』

「俺の名前は進だ、変に伸ばすな。」

『そんな事はどうでも良いの♪』


いや、良くないが………


『じゃあ、早速いつもの様に貴方の小種を私の膣に果ててちょうだい!』

「お前に会って一度もそんな事をした覚えはねぇよ、捏造するな!」

『覚えてないの?私はいつでも頭の中に思い浮かぶわ♪初めて会った時、激しく求め合った記憶が♡』

「存在しない記憶はやめろ!風評被害が止まらなくなるだろうが!!」


この層の奴等、こんな奴等ばかりで嫌になるわ!!


はぁ、仕方がねぇか………


「わからせの時間だ、サキュバスクイーン。此処から先は、俺の独壇場セカイだ!」

『俺達の逢瀬セカイ!キュン♡』

「だから、捏造やめーや!!」


続く

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