第32話 今願い事が叶うのならば、俺は今すぐクソアマエルフをブチのめしたい

第32話


「え、どういう事だアリス?」

「も、盛った?皆?何を言ってるの?」

「そ、そんな………そんな訳が…………」


おお、何か混乱して怒りの感情が吹き飛んでるな………


俺とアリスの子はちょっと不安そうになってるのを見ると、少しだけ申し訳無さが湧いてくるが、今が勝負時なので少しだけ我慢して欲しい。


「本当にうちのクソアマエルフが申し訳ありませんでした!!」


俺は今から、異世界で培った土下座を全力で遂行する!!


「本当に、本当に申し訳ない!!」


こういうのは、何度も叩きつけるかの様に頭を下げ続けるのがコツだ。


そうすれば、大体の相手がドン引きしてくれるので、その隙を見て会話へと持ち込めば此方の勝ちなのだ。


「ちょ、や、やめ………」

「い、家が壊れそうですから、やめてください!本当にお願いします!!」

「あっ、はい!俺もまだ知らない情報とかがあるかもしれないので、一杯話し合いましょう!!」

「「ええ………」


ほら、こんな感じで上手くいく。


まぁ、身内からは不評だったけどな………


賢者からは『プライド無さすぎて滑稽。』、聖女様からは『いずれちゃんと矯正させてあげますね。』、戦士からは『私も勇者様みたいになれる様に頑張る!』とか色々言われたよ………


戦士は俺みたいになってなくて良かったよ、うん………


────まぁ、何か別の方向にワープ進化しちゃってたけど。


「さて、アリス!お前、もしかして、この人達に事情説明してないな?」

「うん、賢者様リン様聖女様スピカ様にそう言いつけられたから。」

「………ああ、成る程。まぁ、荒唐無稽な話だし、色々と迷惑がかからない様にしたんだな、アイツ等………」


まぁ、当時のコイツは普通のガキでもあったからな………


俺より短い10年間とはいえ、行方不明になってた子が見つかったら騒がれるのは当然の話ではある。


どんな世界かは俺達の伝聞でしか知らないだろうに、そこまで読むとは流石だな………


でも、その優しさを俺にも向けてくれも良かったよね?


しかも、余計な迷惑も増やしてるよね君達?


俺は迷惑の掃き溜めじゃねぇんだぞ!?


「なぁ、アリス。先程から賢者様とか、聖女様とか、何を言ってるんだ?」

「………進様、大丈夫?」

「もう良いだろ。お前も大人で大体は何とかなるだろうし、親御さん達にちゃんと全てを話してやれ。」

「………うん。」


☆☆☆☆☆


「いや、本当に殴ってすみません………」

「いえいえ、本当にうちのクソアマエルフが甘言でアリスを誑かしてなかったら起きてない案件なので、俺にも責任はあります。なので、別に気に病まなくても大丈夫ですよ。」


アリスがちゃんと全てを話した後、俺達は互いに平謝りしていた。


いや、本当に気にしなくて良いですよ、お父さん。


あんなパンチ、綿毛が頬に触れたくらいのダメージしかなかったですし………


「しかし、大変でしたね。見つかった娘が誰との子かも分からない子を孕んでたのは。」

「はい………年をあまり取っていないのはダンジョンのせいだと結論つけられていたんですけど、赤ちゃんに関しては流石に不明でかなり焦ったし、犯人を恨みましたよ。」

「マジですみません!本当にうちのバカ共がこんな事をやらかして!!」


年齢関係は時間を歪める現象が起きるダンジョンのせいとなっていたらしい。


だが、お腹の中に居る子供に関しては説明が付かず、当時は本当に騒がれたらしい。


DNA鑑定とかは勿論したらしいが、何故か特定できなかったそうだ。


これに関しちゃ、俺にも理解わからないからお手上げ状態だ。


「で、この方は一体?」


アリスの子を庇う様にしながらも俺を睨んでいた男を指差す。


アリスのはどんな関係なのだろうか?


アリスが真実を話してから、ずっと百面相してるし、ちょっと心配だ。


「彼かい?彼はアリスの幼馴染な灰原はいばら しゅうくんだ。」


へぇ、幼馴染なのか………


成る程、俺をアリスを小さい頃に孕ませたクソ野郎として見てたんだな?


だから、俺の事を睨んでいたし、真実を知った後は情緒がグチャグチャになって百面相してる訳か………


「………あれ?」


もしかして、俺………


「なぁ、アリス。秀くんと仲良いのか?」

「うん。歳が10歳くらい離れたのに、仲良くしてくれる。今は私のマネージャー的な事もしてくれてるし。」

「グフッ────」

「えっ、何でダメージ受けてるの進様!?」

「ちょ、ちょっとな………」

「ええ………」


BSSかましてるじゃねぇか!!


俺がこの世で一番嫌いなジャンルだぞ?


昔、これが性癖なバイコーンと一晩中殺し合った位にな!!


見ろよ、お前が大親友って言った時の彼の顔の沈み様を!!


気が付いてないのか、お前!?


気が付いてなさそうだね、うん………


「……………………………………………」

「おお、ど、どうした?えっと………「ミリスだよ、進様。」ミリスちゃん?」


俺が来てからずっと黙ったままのミリスちゃんが俺に近付いてくる。


一体、どうした?


「………お父さん?」

「………ああ、らしいな。正直、唐突過ぎてあまり実感は持てないけどさ。」

「………そう。」


彼女はそう言って、黙りこくる。


しかし、何故か俺の足をベタベタと触り始めた。


「えっ、ど、どうした?」

「ん。」

「ん?」

「ん!」


何かアリスも似た様な事を昔してたな………


「もしかして、足を開けば良いのか?」

「ん♪」


言われた通りに足を開くと、いきなりその上に乗ってくる。


そして、俺の手を引っ張って、自分を抱きしめる様な形にしていき………


「ん………しっくりきた。間違いなく、貴方は私のお父さん。」

「どういう判別方法だよ………」


どうやら、アリスと同じ様にミリスちゃんも大分天然らしい………


続く


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