第28話 第25階層 メガキマイラ

第28話


「あの野郎………」


────俺の拳は間違いなく縊鬼を葬った。


だが、嫌な予感が止まらない。


アイツ、俺に殺される瞬間、嗤っていた。


────まるで、そうする事が不正解である様に。


「ごめんなさい、勇者様………」

「気にするな、誰にも得手不得手、相性があるからな。そんな事を言い出したら、俺は弱点だらけだ。」

「でも………」

「生きてるんだから、次頑張りゃ良いだけの話だろ?それに、今回は能力に対処できない二人組だって所に問題が合ったろうしな。」


はぁ、本当に聖女様の奴が恋しいぜ。


バーサーカーではあったけど、初めてあの異世界で会った優しい人だったからな………


あの人だったから、俺もあんなクソみたいな魔王退治をやる気になったしな………


「うぅ………」

「おいおい………泣きそうになってんじゃねぇよ、お前。もう大人だろ?」

「勇者様の前では子供だもん!」

「はいはい、便利な設定だことで………」


はは、昔もやらかしたコイツを慰める為に皆で翻弄してたな………


「………そろそろ、か。」

「ぐすっ、うん。多分、コレで終わり。」


何となくだが、次の階層で終わりと勘が告げている。


そして、今まで以上に警戒しろとも伝えてきていた。


あの縊鬼の最後の件もある………


「はてさて、鬼が出るか蛇が出るか………」


まぁ、既に縊鬼バシリスクも両方共が既に出てるんだけどね………


☆☆☆☆☆


「何か広いな………」

「うん。まるで、派手に暴れられる様に作られてるみたい………」


まぁ、十中八九それだろうな………


という事は今回の相手はデカブツか?


『おや、おやおや、おやおやおや、遂に辿り着いてしまいましたか。』

「お前が最後のボスか………?」

『ええ、よくお理解わかりになりましたね。』


あれ?何か小さいな………


というか、普通に人型だな………


『貴方達は無駄に罰から抗い、罪から目を背け続けてきました。此等は全て嘆かわしい事です。』

「これ、話聞かないタイプだな。」

「うん。多分、何かしないとずっと喋り続けるタイプ。」

「面倒だなぁ………」


まぁ、少しだけコイツの戯言に付き合ってやるとしますかね………


『そして、貴方達は次々と罪を重ねていきました。貴方達は此処に来るまで、尊き命を24体も奪ってきたという事実を、ちゃんと認識していらっしゃいますか?』


24?


俺は23体としか戦ってないぞ?


何か変なかさ増ししやがって………


『命を奪うな、と我等は事前にルールを説明しました。それなのに、いとも簡単にルールを破るとは、救いようのない愚か者です。』

「やっぱり、理不尽だよな、コレ………」

「俺がルール的な奴って、こんなのばっかりで嫌になる………」


うんうん、俺もそう思う。


上位陣になると、空間にすらもそれを適用してくるからな………


『ですが、安心してください!貴方達の悪の快進撃は此処で終わり、最後の審判が行われれます。それによって、貴方達は死をもって罪の浄化と救済が齎されるでしょう!』

「要するに、死ねとしか言ってねぇだろ。」

「まだ私の娘の方が簡潔に喋れる。」


短く3行位にまとめろよ、お前。


『さぁ、この最後に相応しいラスボスの登場です!』

「────なっ、避けるぞ!」

「うん!」


奴が宣言した瞬間、様々なタイプの攻撃が飛んできた。


おいおい、多種多様だな………


多様性でも謳ってるのか?


『どうですか、この姿は?美しき身体、素晴らしき強さ!貴方達の罪を裁くにはピッタリの姿でしょう?』


右手にはバジリスクらしき顔、左手には水虎らしき顔、胴の真ん中には縊鬼らしき顔、頭部はユニコーンらしき頭に置き換わり、ペガサスの様な羽を生やしていた。


「「キッモッ!!」」

『おお、この美しさが理解わからないとは何て嘆かわしい事なのでしょう。ですが、我等は赦しましょう。この美しさを持って、これから貴方達は裁かれて救済されるのですから!』


汚いクライマックスフォームかよ………


ゴチャゴチャしてたてんこ盛りフォームは沢山あったけど、こんな醜い奴は無かったぞ!?


しかも、見えてる部分だけじゃないな………


「この深層に居た奴等と全合体してるのか、コイツ………」

『正解です、我等はメガキマイラ!我等を殺す理不尽に怒り、それを為す事しかできない愚者に救済を与える神なのです!』


何か、余計な情報まで着いてきたな………


『さぁ、鎮魂曲を奏でよう!浄化の光よ、全てを蹴散らせ、失楽園パラダイス・ロスト!』

「ちっ、デタラメしやがって………」

「〘召喚サモンシールド〙!」


奴が変な禍々しい球体を吐き出したと思った瞬間、その球体から邪悪に染まった今までの奴等の攻撃が雨の様に降り注ぐ。


何が光だ!!何が浄化だ!!!


こんなの唯の殺戮の言い訳でしかねぇじゃねぇか!!!!


『………やはり、耐えますか。流石、救いようのない程に罪を重ねる愚か者達ですね。』

「お前の攻撃がショボいからな。」

「今まで戦ってきた奴等の方が、攻撃自体は強かった。」


だが、あの弾幕は脅威だな………


さて、どうした物か………


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る