第27話 第24階層 縊鬼
第27話
「ふぅ、治った!!」
アリスが口移ししてくれたお陰で毒は消えたし、腹に大きく空いた風穴も直ぐに元通りになった。
いやぁ、もう毒は懲り懲りだね。
毒も薬も、苦いくらいが丁度いいわ。
────さて、どうしようか?
「お前、コレ大丈夫なのか?」
「口移しの事?医療行為だから、大丈夫。私を信じて。」
「なら、良いんだが………」
正直、お前の夫に申し訳ない気持ちで一杯なのよ………
大丈夫だよね?
後で殴られたりしないよね?
まぁ、それくらいなら甘んじて受けるし、土下座だって幾らでもしてあげるけどさ………
「………ん?今回は何か開くの遅いな?」
「どうせ変な小細工でも仕掛けてるだけ。」
「それもそうか………」
何か水虎とバシリスク達が例外側っぽいもんな、このダンジョン………
(小細工?いえいえ、貴方達の処刑の準備ですよ。)
なっ────
☆☆☆☆☆
「クソっ、気持ち悪い声を脳内にテレパシーさせた瞬間落としやがって………」
「うん、ビックリした。それに真っ暗、殆ど見えない。」
そのせいで、上手く着地する余地すら無く地面とキスしちまったよ。
人妻の次は地面とか、節操が無いに等しいな俺の唇………
「〘
「うおっ!?い、いきなり、何するんだよ、戦士!?」
アリスの奴が急に俺に向けて弾撃ってきやがったぞ!?
しかも、その本人はというと………
「あっ、ごめん。何となく撃ちたくなっちゃって………」
「何となくって、お前!?」
弾丸はそんな気軽に撃っちゃ駄目な物だよ!?
俺は当たっても治るから良いけどさ………
『ふふ、
はっ、ちんけな不意打ちだな!
そんな鈍い不意打ち、月ちゃんですら避けれるだろうぜ!
「きゃっ!?」
「なっ、大丈夫か戦士!!」
何で奴の攻撃がアリスに当たる?
あんな鈍い攻撃、アイツなら普通に避けれる筈だぞ!?
『ふふ、大丈夫ですよ。彼女は唯、魔が差してしまっただけなのです。これはどんな人間にも普遍的に起こりうる事象ではありませんか。』
「………これがお前の能力か!」
『ええ、勿論。私の能力は至極単純、人に魔を差させてしまう事。たったそれだけのチンケな能力です。』
何がチンケだ、最高に最悪な自滅能力じゃねぇか!
────そういう事をさせてしまう奴等には心当たりがある。
「お前、通り魔だな?」
『はい、その一種である
通りかかる者の心を乱し、自殺や狂乱を誘う魔。
────故に“通り魔”だったか?
「要するに精神攻撃か。」
『有り体に言えば、その通りです。しかし、私は本人が望んだ事を後押ししてるだけに過ぎません。それなのに、私を悪しき様に語る人間の多い事、多い事。私は心の底から泣いてしまいそうですよ。うぇ〜ん、人間が私の事を虐めてくるよぉ!!』
き、気持ちが悪い………
コイツ、本当に本気で泣いてやがる。
心の底からそう思って疑わないタイプとか、ユニコーン共だけで充分なんだよ………
『でも、私は優しい鬼です。なので、私はじっくり、じっくりと彼女に自滅………自殺する様に魔を差させてあげますよ。誰かに殺されるのではなく、自分に殺される。最高に幸せな死に方でしょう?』
「させると思ってるのか、縊鬼!!」
『おお、怖い。彼のお相手、頼みますよ戦士さんとやら?』
「ちっ、クソが!!」
あの野郎、そういう風に誘導しやがった!!
何が自滅、自殺だ!!
こんなのお前が引き起こす他殺でしかねぇだろうが!!!
「ご、ごめんなさい、勇者様。でも、身体の自由が………」
「はは、謝るな。お前のせいじゃねぇよ。」
はぁ、そう言えば、こういう攻撃には昔から弱かったよな、アリス………
聖女様のお陰で大体なんとかなっていたのを思い出したよ………
今からでも会えないかな?
────無理?
だよね………
「あの陰険鬼野郎は何処かに引きこもりやがったな?」
暗闇に紛れて何処かに行きやがったな………
探しに行こうにも、必ずアリスが邪魔をしてくるだろうし………
────なら、仕方がないな!
「おい、アリス!俺を殺るなら派手に殺ってくれるなよ?痛いのは嫌だし、蜂の巣なんてごめんだからな。」
「うん、〘
さぁ、来い!
全てを巻き込む勢いで、俺を殺しに来い!
「〘
☆☆☆☆☆
縊鬼side
『ぐふっ、何て無茶苦茶な火力でしょうか。コレでは、私も死ぬ所でしたよ………』
あの女による乱れ撃ちにはヒヤッとさせられましたが、アレを直撃させられて死なない者は居ないでしょう。
後は、じっくりとあの女を優しい自滅、自殺への道を辿らせてあげないと………
────そうだ!
彼女にぴったりな首吊り縄でもプレゼントしてあげましょう!
ええ、それがきっと良い!
無惨にも死んでしまった彼も喜ぶ事でしょう!
『私は嬉しい。こんなにも彼等にとって幸せな事はあるのだろうか?』
ああ、涙が思わず溢れてしまう。
「全く宝石になりそうにない程の汚い涙だな、縊鬼。」
『なっ!?』
「あれ位なら、死んでも死なねぇよ、俺は。勇者舐めんなよ、クソ鬼!!」
な、何故この男が生きているのですか!?
何故、その様な────
『その様なありとあらゆる所が吹き飛ばされた姿で生きているのですか!!??』
あり得ない、不死性を持つモンスターなら兎も角として、人間にその様な力は………
『まさか、貴方は………!?』
「何に気が付いたかはしらねぇが、全力でぶっ飛ばさせて貰うぞ!!」
ああ、殺られてしまう!!
間違いなく、絶対に………
ああ、そんなの、そんなの────
「〘
────最高じゃないですか!
自滅、ご苦労様です。
続く
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