第22話 性格の悪いダンジョン

第22話


「ん、着いた。」

「おう、ありがとう。」


長い間アリスに脇を捕まれながら落ちたせいで、何か痺れてるな………


まぁ、直ぐに治るか。


そんな事よりも………


「何だ?雁首揃えてお出迎えか?そんなに早く殺して欲しいのか?」

「そうだね、浦島様。お前ら、どんな死に方が良い?リクエスト通りに私がサクッと殺ってあげるよ?」


見渡す限り、俺達を殺そうとしている沢山のモンスターが待ち構えている。


沢山と言っても、15匹くらいだが………


「まぁ、ボスモンスターが勢揃いして待ち構えてたら、充分に異常発生スタンピードか。」

「でも、楽で良い。自分達から一気に倒されに来てくれた。」

「ふっ、だな。ありがとうと礼を言いたい気分だよ。」

「「ありがとうございます、俺(私)達にわざわざ殺されに来てくれて。」」


ん?おいおい、せっかちだな………


『調子に乗るなよ、人間が!!』

「まだ挑発の途中だぞ?待つことすら出来ずに殴り込むとは、お里が知れるな!」

『汚い口を閉じろ、小娘。』

「じゃあ止めて見せたら?男も知らずに汚い臭いを撒き散らしてそうなオバサン。」


こいつ等、まだ話してるのに突っ込んで来るとはな………


────俺の相手は【硬化】無しで受け止められる辺り、コイツが一番弱いな。


アリスの相手はちょっと強そうだし、10層辺りの奴かな?


────ちっ!


「【硬化】!」

「〘召喚サモンシールド〙!」


反撃に出ようとした瞬間、別の奴からの攻撃が飛んでくる。


まぁ、当然の話か………


呑気に別の奴が殺られるのを待ってる訳がない。


「いつつ、流石に強い奴の攻撃は【硬化】で受けても響くな。」

「私も盾ごとふっ飛ばされたら効く。」

「────さて、どうする戦士?腐ってもボスモンスターだ、こんなに数が多いと烏合の衆でも苦労するぜ?」

「簡単。弱い奴から狩っていく、だよね勇者様?」

「正解。」


まぁ、そう簡単に殺らせて貰えるのかは理解わからないけどな?


『作戦タイムは終わったか?』

『さっさと、死ね小娘!』


────まず、あのふっ飛ばされる切欠を作った奴等を黙らせるか。


「〘3重加速トリプル・ブースト×〘3重火力トリプル・ファイア〙。」

「〘召喚サモン長槍スピア。」

「「不死鳥の一突きフェニックス・スピア!!」」


同時に放たれた不死鳥の鉤爪は、確実に奴等の命を抉り取る。


────筈だった。


『くく、無駄だ。』

『貴様らの攻撃など無意味だ。』


当たる前に、これ位の攻撃なら防げる奴の邪魔が入った。


成る程、弱い奴で気を引いて、攻撃や防御は強い奴と分担してるのか………


「面倒だなぁ、もう………」

「同感、さっさと死んで欲しい。」


はてさて、どうした物か………


☆☆☆☆☆


「がはっ、う、腕が………」

「はぁはぁ、本当に面倒………!!」


と、まぁ、あんなに啖呵を切った物の、普通に攻めあぐねていた。


弱い奴を倒そうにも、必ず第15から20階層辺りの奴等の邪魔が入るんだよなぁ………


そのせいで、俺の腕はふっ飛ぶし、アリスの柔肌には傷が入ってるじゃねぇか。


後で治るとは言え、アリスに傷を付けるとか極刑物だぞ?


「相変わらず、脆いね勇者様。」

「【硬化】を使ってすらも、お前等より脆いからな、俺………」


だから、異世界でもしょっちゅう色んな所が無くなってたしな………


「まぁ、何もしてなくても治るから気にしてないんだが。」


────嘘である。


正直、ポンポンふっ飛ぶし、痛いし、硬くて頑丈な事に越した事はないのだ。


『ほう、治るのか?まるで、不死性があるモンスターみたいだ。どちらが化け物か区別がつかぬなぁw』


コイツ、痛い所を突いてくるな………


実際、異世界だと畏怖の目で見られる事も少なくなった訳だし………


『そろそろ終わらせようか。罪を犯した罪人共に、罰を与えてやらなければな!!』

「そういうロールプレイはもう良いよ。」


────もう、心底飽きた。


それに、お前等の動きは充分見れた。


だから、此処からは………


「反撃と行こうか。ほら、お返しだ!」

『なっ────』

「どうした、そんな驚いた顔をして。がそんなに可笑しいか?」


俺にトドメを刺そうと痛い事を言っていたモンスターの腕が、完全に奴の身体から離れ離れになっていた。


────当然だ、俺が斬ったのだから。


しかし、相変わらず良い斬れ味の剣だな、コレ。


「その剣、使ってくれるんだ?嬉しい♡」

「まぁな。やり口も理解わかったし、出し惜しみ無しでやるぞ、戦士!」

「うん♪でも、一つだけ言わせて貰う。」

「な、何だ?」

「相変わらず、剣使うの下手くそ。」

「今、それ言う必要あったかな!?」


俺に剣の才能が無いのは理解してるわ!!


だって、腕を斬り落としたのも、本当は真ん中を一刀両断するつもりだったのが、狙い外れただけだし!!


言い訳にすらなってねぇな、コレ………


「さぁ、死にたい奴等からかかってきな。俺達は今から本気モードだ!!」

「誤魔化した………」


煩いぞ、アリス!!


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る