第21話 ダイジェスト気味な第1から第5階層

第21話


「やっぱり、こんな物か………」

「うん、やっぱり弱い。」


何か強そうな雰囲気出しといて、俺のスキルとアリスの初期も初期な魔法でやられてしまったな、コイツ。


まぁ、大口叩いていたコイツが、その中を貫かれた上に真っ二つになったのは、変に笑えたが………


こういうの、草はえるって言うんだっけ?


「しかし、相変わらずカッコいい固有魔法だな、それ。」


コイツの魔法は、一点特化な固有魔法。


それぞれの個性が出る故に、強いが灰汁が出る面倒な魔法だ。


で、コイツの魔法はありとあらゆる武器を創造し、召喚する〘創造魔法クリエイト〙。


先程のは一つだけ銃を召喚し、鬼一口を貫いたのだ。


「そう?私は正直、魔法少女みたいな事がしたかった。」

「────そういうのは俺にも被弾するからやめようか。」

「─────うん。」


自らの力が自分が望んだ物とは限らない。


俺ももう少し勇者っぽい力が欲しかった。


力も無ければ知恵も無い、なんなら運すら無かった俺には、勇気しか味方が居なかったからな………


『ふふ、私を倒してしまいましたね………』

「何だ、しぶといな。タフさだけなら10階層レベルだな。」

「追い打ちする?」

「やめとけ、辞世の句しか吐けないだろうから。」

『ええ、そうですね。今の私はルールを破ってしまった愚か者を嗤う事しかできませんので。』


死にかけながら、俺達を嘲笑う鬼一口。


モンスターを倒す事で発動するギミックでもあるのか?


それとも………


『さぁ、此処から先は地獄ですよ。精々、足掻いてみせてくださいね?』


そう言い残し、奴は消え去った。


その瞬間、俺達が立っている床さえも消え去っていく。


「なっ、そういうタイプか!?」

「移動が楽で助かる。」

「お前は飛べるもんな!!」


俺も跳べるけど、お前みたいに飛べないんだよ!!


「だから、私が支える。」

「助かるよ、アリス。」


脇をアリスに掴まれながら、ゆっくりと降りていく。


これ、クリアする度に続くのか?


☆☆☆☆☆


「ふぅ、何と言うか、まぁ………」

「拍子抜け、何か弱い。」


あの後、一気に第2階層から5階層までクリアしてしまった。


次は6階層かぁ、早いなぁ………


「下手したら、新宿の所のあの二人の方が強かった。」

人間ジンカンは喜ぶだろうな、それ。」


しかし、本当に弱かったな、コイツ等………


確か、新宿が一番浅いんだっけ?


「もしかして、力配分が新宿より細かくなってるのか?」

「だから弱いんだね。という事は、次の層からマシになる?」

「だと良いなぁ………」


何かこのダンジョンは性格悪そうな奴等が多そうだし、最後ら辺で強さが5倍、10倍とかになりそうな気がする………


そうやって、油断してた奴等を弄んで殺すみたいな感じで………


「………あれ?何か遅くないか?」

「………うん、確かに遅い。何故か、下への穴が開かない。」


さっき迄は、倒した数秒後に直ぐ穴が開いて俺達を落としてたのに………


何か嫌な予感がするなぁ………


(あ〜い〜う〜え〜お〜、聞こえてるかな、愚かなルール違反共!)


声が聞こえてきたな………


いや、コレは………


「テレパシーだな………」

「この頭に響く感じは嫌い。」


俺もだよ、未だに慣れない。


(君達は最初に忠告したのに、ルール違反を5回も犯しました。なので、罰を受けてください。)


罰?一体、どんな罰を受けさせるつもりだ?


(さぁ、君達は生き残れるかな?)


そう告げてきた瞬間、穴が開く。


先程迄と同じ様に降りようとするが………


「何か深くないか?」

「うん、底が見えにくい。」


────もしかして、コイツ!?


(君達は罪人。理不尽を罪無き者達に振りかざしてきた極悪人だ。ならば、私達も君達に理不尽を送ろるとしよう。)


や、やりやがったな、コイツ!!


俺の予想が正しければ、コイツがやろうとしているのは!!!


(この穴は第20階層への直通便です。直ぐに第20階層のボスと戦えますよ?)


はっ、それだけじゃないんだろう?


(しかし、それだけでは味気がありませんよね?)


そう奴が告げた瞬間、下の方から物凄い気配が飛んでくる。


「成る程、そういう事か。クソが………」

「厭らしいね、このダンジョン………」


下の方の気配が、少しずつ増えていく。


増える度に、此方へと向けられる魔力と殺意も高まっている様だ。


コレはおそらく………


(第6階層から第20階層迄の異常発生スタンピード、ぜひお苦しみください♪)


はっ、声色が楽しそうだぞ?


そういう理不尽な目に合う人間を嘲笑うのが愉しいだけな癖に………


「舐めやがって………」

「うん、久々にキレそう。」

「よし、なら見せてやろうぜ?」

「勿論。勇者様と戦士な私が組んで攻略に来ているという意味を、嫌な位教えてあげないとね。」


理不尽に抗うなんて、異世界では何度もしてきたんだ………


「「さぁ、此処から先は………」」

「俺の独壇場セカイだ!!」

「私の蹂躙劇セカイだ!!」


続く

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