第20話 仙台ダンジョン 深層第1階層

第20話 


偶然、彼等の競争を見かけてしまったモブ探索者は後にこう語った。


「まるで、ダンジョンの中を流星が駆けている様でしたよ、ええ………」


☆☆☆☆☆


「ふぅ、着いた!俺の勝ちだな、アリス!」

「うん、僅差で負けた。やっぱり、浦島様の身体強化魔法は凄い。」

「まぁ、俺はコレしか使えなかったからな。そのせいで異世界だと最初は落ちこぼれ扱いだったし………」


使えるスキルも硬くなれる【硬化】と斬撃を一方向に飛ばせるだけの【斬撃スラッシュ】だけだったしな………


最初はテンプレ通りに追放されたし、その後も変なモンスターに目を着けられて呪われたり、変なモンスターに丸呑みにされたり、序盤は本当に良い思い出がねぇな、異世界!!


「まぁ、それは此方でもそう。大体の人は闇とか光を除けば全ての属性のバレットが使えるし、身体強化魔法は基本中の基本でしかない。」

「羨ましいなぁ、もう………」

「正直、私も羨ましい。」

「お前が言ったらキレられるぞ。」


というか、昔それでクソアマエルフにキレられてたからな………


コイツは戦士という役割に就いてはいたのだが、細かく分類するなら魔法戦士だ。


魔法を用いた武器を精製し、操り、戦う。


その姿は、異世界にとっても異常な姿で、一部ではそういうゴーレムだと噂されてたのを思い出す。


「まぁ、あながち間違いじゃないなが凄いよな、噂ってのも………」

「何か言いました?」

「いや、何も。さて、そろそろ行くぞ。」

「うん。」


仙台ダンジョンの下層から深層への入口には、ちゃんと階段が作られていた。


新宿ダンジョンとは違って、プテラノドンに狙われながら崖を降りる必要はないらしい。


「何か優しくないか、此処?」

「確かに。新宿だと豆鉄砲の嵐が起きてたのに………」


まぁ、お前にゃそうだろうな………


「そろそろだな。」

「うん。」


俺達は同時に深層へと踏み込んでいく。


昔、珍しく二人で行動していた時は、いつもこうしていた。


「成る程、面倒そうだな………」

「うん、厄介な気配がする。」


降りた先は先程までの上層から下層とあまり変わり映えのしない光景が広がっていた。


それに、先の道が見えない。


まるで、広い密室の様だ。


だが、一つだけ異常に目立つ物が在った。


「ありゃ、カウンターか?」

「多分、そうかも。」


横側の壁に、何かを数えるかの様に数字の装飾が描かれていた。


魔力をそこはかとなく感じるので、間違いなく何かの仕掛けがあるのは理解わかる。


「さて、どうする?折角の深層だ。月ちゃんみたいに配信でもするか?」

「グッドアイデア。確かアイテムボックスに最新製ドローンを入れてたから出すね。」


そう言って彼女は何も無い空間からドローンを出してくる。


懐かしいな、アイテムボックス。


最初は俺も一応召喚された勇者だったのに、渡されなかったのを覚えてる。


何なら、鐚一文すら貰えなかったな………


「これでよし。多分、撮れてる。」

「そうか。なら、始めるか!」


どんな仕掛けが施されてるかは理解わからんが、こういう時はぶっ壊せば良いと古事記にも異世界版古事記にもかいてあるからな。


多少、力を込めて………


『おっと、そちらを壊しても無駄ですよ?』

「へぇ、出迎えか?」

「………どうする、倒す?」

「いや、待て。少し話を聞いてみるぞ、アリス。」


凄い怪しい雰囲気がプンプンだしな………


『賢いですね。私は鬼一口、貴方達への説明係です。』


鬼一口、妖怪系のモンスターか………


『深層持ちダンジョン事にルールがあるのはご存知ですか?』

「ああ。」

『なら、話は早いですね。此方でのルールは簡単。なるべく、事です。』

「はぁ!?」

「どういう意味、それ?」


何を言ってるんだ、コイツ?


そもそも、ダンジョンは俺達人間とモンスター達が殺し合う事で成立している場所だぞ?


こんなルールを考えた奴は何がしたいのだ?


『そして、此方の数字はこの部屋に現れるモンスターの数を表しています。今の数は1と書いてありますね。』

「成る程、お前の事か。」

「なら、話が早い。」


コイツを倒せば次に行けるタイプだな!!


『ええ、このダンジョンはボスラッシュがテーマです!さぁ、百戦錬磨のこの穴を貴方達は攻略できますか?』


コイツは何を俺達に問いているのだろうか?


可哀想な奴だ。


答えなど、既に決まっている。


「【斬撃スラッシュ】!」

「〘銃撃バレル〙!」

『成る程………愚問でしたか…………」


こんな面倒な雑魚、一撃で終わらせるに限るな………


続く

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