第19話 仙台ダンジョン

第19話 


「ねぇ、断って良かったの、浦島様?」

「月ちゃんの事か?」

「うん。」

「アレで良かったんだよ。正直、まだこのステージは彼女にゃ早過ぎる。」


月ちゃんにお願いされた事は普通に断っておいた。


まだまだ彼女は弱い、足手まといにしかならないだろう。


断られた彼女は少し悲しそうな顔をしていたのだが、ちゃんと納得してくれた。


その後はボロボロになった人間ジンカンに別れを告げてから、ちゃんと中層まで送ってあげた。


そして、俺達は………


「しかし、久し振りだな。車になんざ乗るのなんてな………」

「だろうね。正直、私も一応免許取っただけで、家族サービス以外は運転しない。」


アリスが運転する車に乗りながら、目的の深層持ちのダンジョンへと向かっていた。


正直、自分で走った方が早いが、外でそんな事をする気はない。


それにこの懐かしい感覚にもっと浸っておきたかった。


「というか、家族サービスって?それに、お前も時間のズレの影響とか受けてなかったのか?」

「私ね、子供が居るの。後、時間のズレは10年くらいはあったけど、ダンジョンとかのお陰で上手く誤魔化せた。」

「へぇ、そりゃ良かった。それにお前に子供かぁ、良い子なんだろうな………子供!!??」


え、こ、子供!?


そ、それって、男女が交尾して、産道を通って生まれくる新たしい命の事だよな!?


「ふふ、ドッキリ大成功♪今度会いに来てみる?」

「当たり前だろ。────何かすまんな。」

「何で謝るの?」

「いや、一応俺が異世界ではリーダーだったろ?なのに、ご祝儀とか出産祝いとか全然できてないのが申し訳なくてな………」

「そんなの気にしなくて良い。それよりも、私の子に会ってくれると嬉しい。」

「絶対に行くよ。」


楽しみだな、どんな子だろうか?


これからはお年玉とかも考えなくちゃな、渡せる金とかは全く無いけど………


まぁ、彼女が選んだ男との子だ。


────絶対に良い子なのだろう。


「良い男に出会えたな、アリス………」

「────うん、本当に良い人だよ。私には勿体ない位にね、。」


その顔は俺が異世界でずっと見てきた、見守ってきた顔とは全く違っていた。


完全に大人の女性の顔だ、もう子供扱いは出来ない位に綺麗な顔だった。


「しかし、お前もそんな顔が出来る様になったんだな。」

「不思議?」

「まぁな。初めて会った時はガキだったし、何故かよく一緒に風呂入ってたし、初潮が来て混乱するお前に困らされたりとか、色々と面倒見てきたからな。正直、妹みたいな感じだったよ………」

「むぅ、最後はセクハラ。それに私は妹じゃなくて、1人の女。」

「すまんすまん。それに、それは現在進行形で実感してるよ。」

「なら許す。」


話題が尽きそうにないな、こりゃ………


「そういや、何時EXランクの探索者とやらになったんだ?」

「15歳になってから、直ぐに。その歳から探索者になれるし、お金が必要だったから誘われて即決した。」

「へぇ………流石だな。」


流石は戦士だな、アリス。


異世界だと一番弱かった彼女だけど、この世界では充分最強クラスだったのだろう。


俺自体がそうである様に………


「ドヤ♪正直、浦島様もなってると思ったんだけど………」

「俺は直ぐに現実に絶望して勝手に見切りを付けちまったからな。近くにあった強い気配がする場所に潜ったらダンジョンだったし、それからずっと定住してる。」

「勇者様から犯罪者にレベルダウンしちゃってるよ、浦島様………」

「やっぱり、免許とか必要なの?」

「うん。」

「はぁ、面倒だなぁ………」


まぁ、バレるまで考えるのは止めておこう。


そもそも、俺をしょっ引ける様な奴等はアリスレベルじゃないと居ないのだ。


「もしもの時は私が殲滅するよ?」

「やめろ、お前が言うと洒落にならん。」


コイツ、俺達の駄目な所も一身に学んでしまってるから、本当にやりかねない。


「冗談だよ、浦島様。」

「冗談に聞こえないんだよなぁ………」


☆☆☆☆☆


数時間後、俺達は目的の深層持ちダンジョンへと辿り着く。


「此処か仙台ダンジョンとやらは?」

「うん、大きい。」

「確かに何か大きいな、此処………」


新宿ダンジョンはちょっと広い洞窟って感じだったが、入口からして大きいな。


何か山口県にある秋芳洞みたいだ………


「さて、アリス………」

「何、浦島様?」

「久し振りに競争するか?」

「ふふ、絶対する!!」

「誰が一番早く辿り着くか、勝負だ!」

「うん、負けない♪」


勇者の名に賭けて、絶対に負けるかよ!!


「〘3重加速トリプル・ブースト〙!!」

「〘銃撃走破バレル・ジェット〙!!」


続く

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