第18話 再会の戦士
第18話
浦島side
「────負けた、か。」
「えっ、
思った以上に早く瞬殺しやがったな………
アイツにはちょっと申し訳ないが………
「久し振りにワクワクしてきた………」
「浦島さん?」
「行こうぜ、月ちゃん?凄いのが撮れると思うから。」
「は、はい!」
家を出て月ちゃんを背負いながら、気配がする方向へ急ぐ。
────漸く近くまで辿り着くと、其処には凄惨な光景が広がっていた。
「こりゃ、また代替わりだな、ヘルボロスの奴………」
この第1階層のボスなヘルボロスは両断された死体になっていた。
「
不死属性持ちなので、死ぬ事はない。
だが、それでも満身創痍に見える程のボロボロ具合だ。
それに、アレは剣の傷というより、まるで蜂の巣みたいになってる様な………
『ふふ、どうやら来たみたいだね。』
「その様ね………」
「────────────────は?」
強い気配がする奴の声を聞いて、俺は思わず固まってしまった。
そして、ソイツの正体を見て、それは更に悪化していく。
────おいおい、マジか。
「月ちゃん、ちょっと此処で降ろすよ。」
「え、は、はい。」
「────ふぅ、〘
彼女を背中から降ろし、身体強化魔法で一気に奴へ目掛けて駆け抜けていく。
早く、早く早く、早く早く早くアイツの所へ行かなきゃ………
俺は絶対に行かなきゃならないんだ!!
「ひ、久し振りだなぁ、アリスちゃ〜ん♪元気にしてたか、このこのぉ〜♪」
「うん♪私も元気にしてたよ、れ………浦島様♪」
勢いよく駆け抜け、彼女の元へダイブして抱き着いていく。
ああ、この柔らかさ、この匂い、絶対に間違いない。
彼女は、彼女こそが俺の………
「よしよし、10年ぶりの再会だ!久し振りに目茶苦茶撫でてやるぞ、戦士♪」
あの異世界にてたった1年だけだったが、最後の激闘を他のメンバーと一緒に駆け抜けた戦士。
────俺と同じ転移者な少女で、一緒に帰ってきた子だ。
「うん、来て勇者様。戦士の私を全力で可愛がってね♡」
おお、歳を取ってより可愛らしくなったな、この子!!
「当たり前だ、アリス。此処から先は、俺の
☆☆☆☆☆
その後、アリスが満足するまで撫でた後、満身創痍な
背中に背負われた人間を見て羨ましそうに見てくるアリスの視線はキツかったな………
月ちゃんも何か変な視線を向けてたけど、どうしたのだろうか?
「あ、あの………浦島さん。」
「何だ、月ちゃん。」
「あの人と知り合いなんですか?」
「そうだけど?」
人間を俺のベットへ適当に転がした後、月ちゃんがそんな事を聞いてきた。
俺がそう肯定すると、月ちゃんは目を見開いて固まってしまった。
ええ、そんなに驚く事か?
「あの………その…………」
「どうした、月ちゃん。」
「うぅ………浦島さんは凄いですね。」
「何が!?」
脈絡が無さ過ぎて、訳が
「だって、そこのアリスさん。日本で5人しか居ない最強クラスのEXランク探索者の1人なんですよ?」
「へ?」
「え?」
「「はい?」」
あの小さくて、一番可愛くて、一番弱かったアリスが?
日本を代表する位の最強クラスの探索者になってると?
────時の流れは凄いなぁ、うん。
「もしかして、知らなかったんですか!?」
「ずっと、籠もってたから………」
「いえ〜い、EXランクのアリスだよ、浦島様♪」
と、ピースしながら、ウインクしてくるアリス。
何これ、可愛すぎる!!
これがカワイイクライシスか!!
「何だろう、色々とチグハグで変な人ですね、浦島さんって………」
「はは、よく言われる………」
「うん、よく言われてた。」
俺達の周囲に何とも言えない空気が流れる。
それに耐えられなくなった俺は、ふとアリスに話しかけた。
「そういや、アリス。お前は何で此処に?」
「あの配信を見て、やっと浦島様を見つけれた。だから、会いたくなった。そして、また一緒に冒険したくなった。」
「成る程、それでか。相変わらず、行動力の塊だな。」
その行動力のせいで、異世界では色々と苦労したな………
駄目な方向に思い切りが良いクソアマエルフ賢者や、王女様の癖にバーサーカーだった聖女と相性が良く、大体俺が尻拭いするハメになってたからなぁ………
今思い返せば、懐かしくも楽しい思い出だ。
クソアマエルフに関しては怒りもかなり浮かんでくるが………
「じゃあ、何処のダンジョンに行くんだ?此処でも、良いぞ?」
「此処は浦島様が楽したいだけでしょ?私は一緒に別の所に行きたい。一緒に1から攻略したい。」
と、ウルウルとした目で見詰めてくるアリス。
くっ、ズルいぞ、それは………
「だよな、冗談言っただけだ。」
相変わらず、おねだりが上手だな………
コレをやられると、俺達は断れなかったんだよなぁ………
「………あの、少し良いですか?」
「ん?何だい、月ちゃん?」
「わ、私も………」
私も?
「私も一緒に連れて行ってくれませんか!!」
続く
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