第17話 強者の気配

第17話


「お、お邪魔します!」

『おお、相変わらず綺麗だね、此処。』

「お前と違ってちゃんと掃除してるからな。」


異常発生スタンピードを解決した後、俺は月ちゃんの刺された怪我を治す為に再び俺の家へと連れてきていた。


何かオマケも着いてきたけど………


『まぁ、生前から苦手だったしね、掃除。』

「だろうな。ありゃ、生粋の駄目人間の所業だ。コイツ、掃除しようとして逆に汚すんだぜ?」

「はは、そこまで酷くはないですけど、私も余り人の事言えないのでノーコメントでお願いします。」


そうなの?


そういう風には見えないけどなぁ………


「えっと、確か刺し傷程度を治せるポーションはっと………あった!ほら、月ちゃん。あっちの部屋で飲んできなさい。」

「あ、ありがとうございます!でも、何で別室で?」

『君は柔肌を全国に配信する気なのかい?』

「きゃっ!?あ、ありがとうございます!!」


と、顔から蒸気をあげて、別室に急いでいく月ちゃん。


まぁ、ちょっと服を捲る位で見える場所だとは思うけど、それでも映すのは駄目だろうからな………


それに、そういうのは人間ジンカンの地雷だろうしな………


『────ふふ。』

「楽しそうだな、人間ジンカン。何か良い事でもあったのか?」


あの下衆野郎のせいで、気分は最悪な方だと思ってたんだが………


『月ちゃんのお陰で私達の事が広まった。多少心が折れる子も居るだろうけど、間違いなく強者達が私達の所へと訪れる。』

「お前、そんな事をしてたのか?まぁ、確かに強者達は放っておけないだろうが………」


弱い奴は俺が通さないしな………


弱い奴が大量に来て死んじまったら、後片付けが面倒なんだよなぁ………


「浦島さん!?何ですか、このポーションは!?私の刺し傷が飲んだだけで直ぐに治ったんですけど!!??」

「良いポーションだろう?俺には宝の持ち腐れだが、集めておいて良かった。そのお陰で俺の推しを助けられたんだからな!」

「浦島さん………」

『勿体なくて断捨離が出来なかっただけだろう?』

「何か言ったか、人間ジンカン?」

『いやぁ、何も?』


はっ、嘘付け。


まぁ、今はコイツの事は無視しておこう。


「なぁ、月ちゃん。腹は減ってるか?」

「えっ、あの、その、空いてます。」

『デリカシー………』


煩い、そんな物は昔から非搭載だ。


「じゃあ、ぜひご馳走するとしよう。良い物を作ってあげるよ。」

「えっ、良いんですか!?」

『えっ、良いんですか!?』

「お前には言ってないぞ、人間ジンカン。」


まぁ、作ってやるけども………


「さて、何を作ろ────おいおい。」

『マジかぁ………早すぎじゃないかい?』

「何かあったんですか?」


月ちゃんは何も感じれていない様だ………


いや、コレは差があり過ぎて、気が付けてないパターンか。


「強いのが────化け物が来てやがる、物凄いスピードで此処に………」

『だね。正直、こんな強者が居て何で5階層までと燻ってたのか聞きたくなるよ。』


全くだな、本当………


人間ジンカンが冷や汗を出しながら武者震いで震えてるのなんざ、俺と初めて戦った時以来だぞ?


「迎えに行くか?」

『私が先に行くよ。』

「お前、2階層のボスだろう?」

『初の1階層のバカとコラボしに行くよ。』


ルールを破る奴を屠る奴がそんな無法してどうするんだよ、全く………


「まぁ、気を付けてやれよ?油断したら、直ぐに負けちまうぞ、コレ。」

『だろうね。まっ、行ってくるよ………』


そう言いながら、影に沈んていく彼女。


はぁ、戦闘狂め………


「大丈夫でしょうか………」

「大丈夫じゃねぇよ、絶対に。まぁ、数分持てば良い方なんじゃねぇかな?」

「え?」


☆☆☆☆☆


人間ジンカンside


『何故、来たんだ2階層の!!』

『ちょっと早く戦いたくてね。』

『相変わらず自由だな………』


深層第1階層のボスモンスター、ヘルボロスと並び立ちながら、強者を待つ。


たった数分で上層から深層までやって来る奴など、浦島君以来だ。


『気を引き締めていこうね、じゃないとまた代替わりする事になっちゃうよ?』

『………覚悟の上だ。』

『無粋な意見だったね………』


そろそろ、か………


「そこのライオンみたいなモンスターが、この層のボス?それに配信に映ってた奴も居るんだ………」

『折角の強者の訪問だ。ぜひ、おもてなしがしたくなってね。』

『さっさと相手しないと、此処に居る奴等が蹂躙されかねないからな。』


はは、眼の前で対峙するだけで、脚が震えてくるね………


この感覚は死ぬ前も、死んだ後も久しくなかったな………


「少し聞きたい事がある。」

『………何かな?』

『………何だ?』

「勇者様は何処?」


その言葉がスタートの合図だった。


────少しネタバレする事になるけれど、結果だけ言うとしよう。


「私の勝ち。さぁ、勇者様の場所を教えてくれる?」


────たった数分で、私達は惨敗した。


『ば、化け物め………』


化け物モンスターな私達が言えた義理じゃないんだけどね?


続く

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