第15話 知らなかったのか?人間からは逃げられない

第15話


浦島side


「うわぁ、虐めてんなぁ………」

「す、凄い。赤子みたいにあしらい続けてるよ、人間ジンカンさん………」


まぁ、月ちゃんレベルなら凄く映るか。


アイツ、ちょっと遊んでるだけなんだろうけどな………


「しかし、よく無事だったな。アイツ、狡い装備しかしてなかったろう?」

「………はい。顔は認識できないし、姿も消せるしで大変でした。浦島さん達が来なければどうなってたか………」

「アイツのネックレスは蛟真珠だな。顔や身体、声とかの認識をずらすアイテムだが、基本的には役に立たん。」

「そうなんですか?」

「ブレたりずらされるだけで、身体の軸が無くなってる訳じゃないしな。面倒なら広範囲にブッパすれば良い。それに格上には全く効かないからな。」

「へぇ〜勉強になります………」


ちなみに、蛟真珠とは深層第5階層にて雑魚すぎて絶滅寸前な蜃という蛤から取れる真珠だ。


「後、アイツが着ている服はハイドエレファントの毛皮製だな。気配と姿を透明にできる象さんのモンスターなんだが………」

「なんだが?」

「アイツ、んだよな。だから、隠れた所で直ぐに見つけられる。」

「………浦島さん、私の曾祖母ちゃんと同じ事を言うんですね。」


へぇ、その曾祖母ちゃんとやらは強いな、多分。


まぁ、深層に潜るなら出来て当たり前の技術だけどさ。


「ハイドエレファントの隠密はな、ありとあらゆる情報を過剰なまでに隠し切る。そのせいで、周囲の気配に混じる事がなく、まるで虚空な穴が空いてるみたいな感じになる。だから、深層の第1階層だと他のモンスターにすら直ぐに見つかってボコられてる可哀想な奴なんだよね………」


おそらく、下衆野郎であるあの男がイキるには充分な装備なんだろうけど………


「まっ、相手が悪かったな。ほら、めっちゃボコボコにされてる。」

「うわぁ、凄い光景………」

「コレ、配信に映して良いの?」

「基本的に命懸けの撮影なので、コレ位なら大丈夫ですよ。もっとグロいシーンが撮れちゃう事もありますし………」


ボコボコに顔や身体が変形する程に殴られて血塗れなんだが、それでも大丈夫なのか。ちょっと基準が知りたくなってきたわ………


「凄いラッシュでしたね、一撃一撃にちゃんと殺意が籠もってました。」

「ジ◯ジョみたいだよな、アレ。」

「ジョ◯ョ?古い漫画知ってるんですね。」

「グフッ!?」

「大丈夫ですか、浦島さん!?もしかして、まだ瘴気に侵されて!?」

「いや、ちょっと致命傷を受けただけだ。」

「またですか!!??」


まさか、連日でジェネレーションギャップ攻撃を喰らうとはな………


☆☆☆☆☆


人間side


『うわぁ、可哀想。ジェネレーションギャップはキツイよね、うん。』


僕もちょっとだけ心に響いたよ、悪い意味でね………


「ウッ………」

『おや、まだ生きてるのかい?』


地味にしぶといね、コイツ。


まぁ、下層でも割と行けそうな位っぽいし、妥当な感じなのかな?


────よし、良い事を思い付いた。


『コレを使いなよ、下衆野郎。』


僕は懐から取り出したポーションをコイツにかけてあげる。


すると、あら不思議♪


怪我がみるみる内に治っていくではないか!


後ろの方から「おい、人間ジンカン!?それは俺の奴じゃねぇか!!」とか空耳が聞こえるが無視しよう。


僕の家にコレを落とした彼が悪いんだよ。


『治った?治ったなら、早く逃げるといい。

ブルブルと負け犬の様な背中を晒しながら、僕に一生怯えてね♪』


そう耳元で囁いてあげると、彼は怒りで拳をプルプル震わせながら、一目散に逃げ出していく。


私はその姿を見届けながら、土蜘蛛を消していく。


もう彼等は必要ないからね………


「あの………」

『おや、何だい月ちゃん?』

「逃がして良かったんですか?」

『ふふ、大丈夫だよ。』


それにね、勘違いをしてるよ。


私は絶対に彼を逃がすつもりはないんだよ?


「自業自得とはいえ、お前も大概趣味が悪いな。」

「え?」

『褒めてくれてありがとう♪それに、罪から逃げるのが悪いんだ、僕は悪くないよ。』

「そういう風に誘導した癖に。」

「どういう事なんですか、浦島さん?」

「奴はこのダンジョンから悪認定された。コイツが現れる前から、このダンジョン内から出れる手段が無くなってるんだよ。」

『ふふ、滑稽だよね。どうして、そう都合好く考えられるんだろうね?』


────本当に可哀想。


まぁ、せいぜい罪を償うんだね。


『さぁ、後は頼んだよ浦島君。異常発生スタンピードを止める君の姿を、月ちゃんと二人で見守っててあげるよ。』


続く

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